ノンアルコール飲料市場参入の可能性

THAIBIZ No.149 2024年5月発行

THAIBIZ No.149 2024年5月発行総合商社の成長戦略

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ノンアルコール飲料市場参入の可能性

公開日 2024.05.10

市場の拡大と成長ドライバー

タイのノンアルコール飲料市場は飲料水(砂糖なしの炭酸水を含む)、炭酸水、ジュース、お茶などの商品で構成されている。東南アジア主要国の中でもインドネシアに次いで市場規模が大きい。また、ポストコロナにおける外食需要の回復、外国人の観光客の回帰と共に成長が期待されている市場である。観光客数に関しては、図表1の通り2022年には1,100万人程度まで落ち込んだが、2023年に2,800万人まで回復。今年はさらなる増加が見込まれる。

外国からタイへの観光客の流入数(万人)
出所:Statista

Euromonitor Internationalによれば、タイのノンアルコール飲料市場全体は2023年に市場規模が90億ドルであったものが、120億ドル程度に伸びると推計されている。タイは人口の成長率が他東南アジア諸国に比べるとやや劣るが、市場全体は他国にも引けを取らない成長が期待されている。ただ、セグメント毎にそれぞれ異なる成長ドライバーを持っていることは理解しておきたい。

例えば、高齢化が進む中で、健康志向の消費者が増えており、特に飲料水市場やジュース市場が注目を集め、高い伸び率が期待されている。お茶の市場も、日々の習慣としている消費者が増えつつあり、多様なフレーバーと健康効果が注目されている。一方、コーラ等の(砂糖を含む)炭酸水市場はそのような健康志向から敬遠される傾向にあり、また砂糖に対する新たな物品税制度が導入されたため、伸び率が限定的になる見込みである。スポーツドリンクやエナジードリンクについても同様の傾向がみられる。

市場の競争環境

ノンアルコール飲料市場の競争環境
出所:Euromonitor international、デロイト分析

ノンアルコール飲料市場は上位の会社による寡占状態にあるケースが多い。図表2は縦軸に市場成長率、横軸に各セグメントにおけるトップ3企業のシェアを表した図であり、右側に行くほど少数の参入企業による寡占市場であることを示している。特に炭酸水、お茶、コーヒー、スポーツドリンクおよびエナジードリンクの市場は、寡占の傾向が顕著であり、どのカテゴリーもシェア1位の会社が50%前後を占めている状況である。

一方で飲料水やジュース市場については寡占の傾向がやや弱まり、参入企業が分散していることがわかる。実態についてはさらに細かいセグメントを見ていく必要があるが、一般論としては飲料水やジュース市場の方が今後の成長が期待され、また参入企業が分散していることから新規参入がしやすい可能性があると言える。

新規参入の機会

新規参入については、工場を一から立ち上げて販路を拡大していくということも手ではあるが、タイ企業への出資についてもオプションの一つになりえる。特に近年はジュースの領域でいくつかM&Aが見られた。

タイにおいては、スタートアップ育成を目的に設立されたNational Innovation Agencyが重点領域の一つに食品を挙げていることもあり、飲料を含む食品関連のスタートアップが近年続々と立ち上がってきている。食品領域に特化したアクセラレーションプログラムも存在し、大手企業や大学も参画して食品関連のスタートアップ育成に取り組んでいる。

そのようなスタートアップへの投資をきっかけに事業を広げていくということが考えられる。下記に、該当するスタートアップを数社ご紹介する。

スタートアップ企業A(コーヒー)
飲食店向けに独自技術で高品質なニトロコーヒー(専用の機械でコーヒーに窒素を加えたもの)のサーバーを提供する企業。オーダー後最速で24時間以内に商品を納入するといった体制を整えており、既に5つ星ホテルにも導入実績がある。

スタートアップ企業B(お茶)
オーガニック認証を受けたタイ(チェンマイ)産のお茶を生産・販売しており、ラインナップには緑茶やハーブティー、ウーロン茶などがある。既に海外企業からも出資を受けており、海外での事業展開も視野に入れている。

スタートアップ企業C(ジュース)
大学での研究成果を元に設立された企業であり、天然成分から腎臓の結石を防ぐ物質を抽出し、飲料として提供。健康意識の高いユーザーをターゲットに商品開発を行っている。

*弊社ポリシーの制約上、実名を挙げることができないため、ご興味をお持ちの方は直接弊社までお問合せください。また、あくまでスタートアップ事例のご紹介を意図しており、必ずしもこれらの企業に出資受入れの意思があるわけではない点をご了承ください。

企業Bのように、中には小規模ながら既に海外展開に積極的な企業も存在する。タイでは小売企業が積極的にベトナム等の海外に進出していることもあり、タイ企業に出資することでタイをハブにして東南アジアの小売チャネルに展開していく方法も一つのオプションとしてあり得るのではないかと思う。

日系企業の出資を受ける際に海外展開におけるサポートを期待されているケースもあり、そのような切り口から協業を探ることも可能性として考えられる。

(※注)本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをご了承ください。
出所: 各企業ウェブサイト Statista、Euromonitor International、Bangkok Post – 25 Jul 23 “New National Innovation Agency chief sets out plan for 4-year expansion in Thailand”

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Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Associate Director

谷口 純平 氏

商社を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2020年からバンコク及びシンガポール事務所に出向。戦略策定からPMIまで、シームレスに事業成長をサポートできることが強み。

【谷口 純平】
+65 (0) 8-763-6373
[email protected]

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Financial Advisory Manager

柴 洋平 氏

大手電機メーカー等を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2022年8月からDeloitteバンコク事務所に出向し、M&A関連業務や市場調査業務などに従事している。

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デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。

Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html

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