タイ健康食品市場の成長可能性

THAIBIZ No.151 2024年7月発行

THAIBIZ No.151 2024年7月発行スマートシティ構想で日タイ協創なるか

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タイ健康食品市場の成長可能性

公開日 2024.07.10

高齢化社会を迎えつつあるタイは、足元でも既に65歳以上の人口割合が全体の13%超となっており、2030年には20%まで拡大する見通しだ。長い老後を如何に健康的に過ごすかという観点から、中間層および高所得層を中心に健康意識は年々高まっており、フィットネスや健康食品など関連市場が拡大を続けている。

ヘルスケアに関する政府支出の拡大も予想されており、これが財政を圧迫する要因ともなりうるため、タイ政府としても健康に関する各種施策に本格的に取り組み始めている。

健康食品市場

タイにおける健康食品及び飲料の市場規模は2018年(870億バーツ)から2020年(1,000億バーツ)にかけ年率7.4%で成長している(図表1)。

 図表 1  健康食品及び飲料の市場規模推移
出所:Statista

こうした成長の背景には、高齢化および経済発展に伴う健康意識の高まりが挙げられる。特にサプリメントを日常的に摂取する習慣がある消費者は50%を超えるといったデータもあることから、手軽に始められるサプリ関係の市場シェアが特に大きいと推察されるが、近年はより具体的な病気の予防といった観点の商品開発が進んできている。

予防のための食品として、例えば「HydroZitLa」が挙げられる。これは、チュラーロンコーン大学の教授を中心に立ち上げられたサービスであり、尿路結石を予防するプロダクトとされている。なお、タイでは、尿路結石が社会問題となっており、人口の16~17%が尿路結石を患っているというデータもある。HydroZitLaは、バナナの茎やチョウマメ (Blue Pea Flower)由来の成分を用いていることが特徴である。摂取方法は、粉末を飲料水に混ぜて飲むだけという手軽なものだ。第48回ジュネーブ国際発明展で銅メダルを受賞した実績も持つ。

代替肉市場の動向

2022年の全世界における代替肉の市場規模は足元で150億USドル程度と推計されているが、そのうちタイは8%(8.5億USドル)程度と大きな市場を形成している。また、2024年予測値としてはタイのみで15億USドルと2022年から12%拡大する見込みである。

高齢化や新型コロナウイルス禍における健康意識の醸成のみならず、近年のSDGsの潮流を受け、家畜の飼育過程で発生する温室効果ガスの削減という観点からも代替肉への注目が集まった。

代替肉市場の主なプレイヤーとしては、例えばCPグループなどが挙げられる。同グループはタイでも有数の大手財閥であるが、その中核企業であるCPフーズが自社開発の植物肉ブランド「ミート・ゼロ」を発売。植物肉を使ったソーセージやハンバーガー、ガパオ、チキンナゲットなどの商品をそろえている。なお、ミート・ゼロの価格は本物の肉に近い価格まで抑えることに成功していることも注目すべきポイントである。

また、百貨店等経営のセントラルグループでは、傘下で行うフランチャイズ事業のペッパーランチ (バンコク内に約45店舗)において、植物由来の代替肉を使ったメニューを採用。健康志向の高まりをとらえるために、新たなメニューを開発している。また、香港の代替肉メーカーであるグリーン・マンデーと組み、2021年5月から植物肉の「オムニ・ミート」を取り扱っており、セントラルグループ傘下のスーパーマーケットなどで販売を行っている。

健康食品市場における成功要因

図表2では、食品市場の一般的なバリューチェーンを図示する。この中で注力すべき領域としては、①有力な食品素材の見極めと、②強力な販売チャネルの確保の2つである。

 図表 2  食品バリューチェーン
出所:Deloitte作成

① 有力な食品素材の見極め

スタートアップを見ると、特に健康食品の分野ではチュラーロンコーン大学を中心としたタイの名門大学が技術のシードを持つようなケースが多い。タイはスタートアップが育たない環境とは言われていたが、中にはインキュベーションを行う組織もあり、特にフードテックの領域は関心が高いため、如何にスタートアップや大学の行う研究の中で事業化の種を探せるかが重要である。

② 強力な販売チャネルの確保

いわゆるモダンチャネルにおいて、タイではCPやセントラルグループといった大手企業の存在感が大きい。健康食品や代替たんぱく質といった分野は単価が高く、モダンチャネルでの販売がメインとなると想定されるが、如何にそういった大手企業と提携に持ち込むことができるかが、一定の売上確保にとって重要となる。

なお、健康に関する意識は、ある程度経済的余裕のある人ほど強く持っており、地域格差もあるため、まずはバンコクを始めとした都市の高所得層に狙いを定める等、販売拡大のためのマーケティングも併せて検討が必要であろう。

(※注)本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをご了承ください。

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Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Associate Director

谷口 純平 氏

商社を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2020年からバンコク及びシンガポール事務所に出向。戦略策定からPMIまで、シームレスに事業成長をサポートできることが強み。

【谷口 純平】
+65 (0) 8-763-6373
jumtaniguchi@deloitte.com

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Financial Advisory Manager

柴 洋平 氏

大手電機メーカー等を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2022年8月からDeloitteバンコク事務所に出向し、M&A関連業務や市場調査業務などに従事している。

Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.

デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。

Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html

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