カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.06.28
タイのスパタナポン副首相兼エネルギー相は17日開催された「EVフォーラム2022~Move Forward to New Opportunity~」で基調講演し、電気自動車(EV)は今後5~10年間でタイの自動車産業を変革し、その年間生産台数は2030年に72万5000台となり、国内自動車生産台数に占めるシェアを30%にするとの政府目標も達成できるだろうとの見通しを示した。
同副首相は「EVは今後5~10年でタイの製造業分野を完全に変革するとともに、タイが二酸化炭素排出を削減する野心的な計画達成を支援する」と強調。「原油価格の上昇に伴いEV産業は急速に発展している。自動車ユーザーのEV購入の決断が迅速化しており、バンコク国際モーターショーがあった4月の2週間での販売予約台数は1万2000台になった。これは日本の年間販売台数とほぼ同水準だ」と述べ、タイ国内でのEV需要の高まりをアピールした。
さらに、「タイのEV産業では、蓄電技術、充電装置、スマート電子機器、各種の接続ソフトウエアなど新規ビジネスチャンスは無限だ。EV生産の促進で関連産業が生まれ、多くの雇用を創出することができる」と力説。EV産業支援はタイが化石燃料から再生可能エネルギーへシフトし、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを達成するとの政府目標の実現につながると訴えた。
スパタナポン副首相はまた、5月23日にはタイランド・エネルギー・アカデミー(TEA)が主催した「TEAフォーラム2022 Mission Possible~Energy Transition to the Next 2050~」ではタイのエネルギー政策の方向性をテーマに講演した。
世界各国で気候変動に伴う自然災害が深刻化する中で、タイのプラユット首相が昨年末に英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、カーボンニュートラルの達成期限を2050年に前倒しすると表明したことに言及。この目標に向け、現在の年間3億5000万トンというタイの二酸化炭素(CO2)排出量を削減する計画として以下の4つのガイドラインを策定したと説明した。
① エネルギー消費における化石燃料の比率を50%以下にするために、クリーンエネルギーの発電量を増やし、ラオスからの水力発電の購入契約を拡大する。
② 2030年に国内自動車生産の30%をEVとする「30/30政策」に従ってEVとバッテリー産業を支援し、運輸部門からの二酸化炭素排出量を年間1億トン削減する。
③ 二酸化炭素排出量やエネルギー消費するためのセンサー技術・電子機器の使用によりオフィスや住宅などでのエネルギー消費を40%削減する。
④ 製造業など産業界から発生するCO2を吸収するための植林の推進、企業の社会的責任(CSR)に基づくカーボンクレジットの利用促進、工業部門が排出するCO2をタイの天然ガス田に戻す技術の研究推進。これらにより27憶トン以上のCO2貯蔵に期待。
TJRI編集部
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