ArayZ No.94 2019年10月発行タイ人の変わる食生活
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カテゴリー: 特集, 食品・小売・サービス
公開日 2019.10.05
目次
所得格差の拡大により、特に地方の低所得層による「内食」の頻度が増えている。主な頻度(ほぼ毎日)の割合をみると、所得が減少するにつれて一貫して高まり、GBと地方とでは傾向に差がある。これはGBでは一人暮らしが多く、内食より外食するほうが安上がりで、高級コンドミニアム・アパート以外にはあまり調理施設(台所)が設置されていないことが一因として挙げられる。
内食頻度のほぼ毎日~週1回利用までの合計をみると、タイ全体で8割を超える。頻度の差はあるが、GBの高所得層も自炊している。中間所得(高)層以上の内食頻度が増えた要因の1つとして、健康・安全志向の高まりから自炊するようになったという声もある(図表9)。
コーンケーン在住の50代男性(中間所得)は、「野菜をとる量を増やして肉や脂肪の多いものを控えるようにしている。選べれば有機食品にしている」と語る。バンコク首都圏では料理教室に通う女性が増えており、ブルーエレファントや日本のABCクッキングスクールなどが人気を博している。
コンビニエンスストアがトラディショナルトレード(TT)を上回り最も利用されている。食品に限らず、購買チャネルの種類別に買い物に行く頻度をみると、コンビニエンスストアが最も高い。タイの主要購買チャネルである「露天商」などTTは、タイ生活者全体の約3割がほぼ毎日買い物をしており、依然として日常的に利用する購買チャネルではあるが、コンビニエンスストアには及ばなかった。
各購買チャネルで買い物をする理由の上位3位をみると、ほぼ全てのチャネルで「利便性」が最も高い。コンビニエンスストアは、タイの小売業態内で圧倒的な店舗数を誇る「場所の利便性」と、営業時間の長さの「時間の利便性」を兼ね備えており、欲しい時にすぐ買えることが生活者を惹きつけているようだ(図表10)。
露天商、生鮮市場、パパママショップといったTTとハイパーマーケット、オンラインストアで買い物をする理由の上位に価格の手頃さがある。
低価格を売りとしているハイパーマーケットは、TTと比べほぼ毎日購入する割合が低いことから、主に休日・週末に利用者が多いと考えられる。
一方、スーパーマーケットやデパートは、高品質で様々な商品をまとめて買える汎用性の高さから利用されている。中・高所得層や海外駐在員を主要ターゲットにしているスーパーマーケットは、取り揃えた幅広い高級商品や輸入製品に広く売場スペースを充てているのが特徴だ。
所得階層ごとに買い物の頻度に差はあるが、生活者は様々な購買チャネルを使い分けている。
中間所得層のほぼ毎日~週1回まで含めた割合をみると、6つの購買チャネルで最も低いスーパーマーケットにおいても約半数を占めていることから、購買チャネルの選択肢が多く、使い分けながら利用していると考えられる。パパママショップは低・高所得間で最も差があるが、高所得層の約45%が週1回以上利用しており、様々な購買チャネルを利用していることが伺える。
今回調査した5つの商材において、買う頻度が最も多いチャネルをTT、モダントレード(MT)に分けると、全ての商材でMTが半数を超えている。「生鮮食品」「調理済み惣菜」はTTの利用も多く、商材によって購買チャネルは様々である。
5つの商材の購入重視点(複数回答)で5割以上の項目をみると、全ての商材において「価格」は入らず「安全性」「味の良さ」「新鮮さ」など食品の味や品質に関する要望が多かった。
ただし、購買チャネルの選択理由で、価格面で強いTTやハイパーマーケットなども多く利用していることから、メーカー・業者はタイの現地価格に合わせることが必要となる(図表11)。
購買傾向の特徴を5商材別に見てみよう。
①生鮮食品
低所得層を中心に生鮮市場が支持される一方、ハイパーマーケットが主に利用されている。
エリア・所得階層でみると、低所得層を中心に生鮮市場が好まれており、グレーターバンコク(GB)の高所得層も利用している。ただ、所得が増加するにつれてハイパーマーケットを中心にMT比率が高まる。
②調理済み惣菜
エリア・所得階層問わず露天商が高い。中間所得(低)層以下は地方において、TT比率が高まる傾向にある。コンビニエンスストアやハイパーマーケットなどMTも高く、地方の低所得層においても一定利用されており、TT・MTが共生している市場と言える。
③冷凍食品
ハイパーマーケットとコンビニエンスストアが同程度で支持されている。同じ中食の調理済み惣菜と購入時に重視する点は同じだが、購買チャネルは異なる。
④菓子
地域・所得階層関わらず一貫してコンビニエンスストアが最も利用されている。GBの中間所得層以上はコンビニエンスストア以外のMTも好む。
⑤調味料
中間所得層以上はハイパーマーケットを最も利用している。内食が多い地方はややTTのシェアが高く、特に低所得層は生鮮市場・パパママショップが3割を占める。
商材を購入する際に重視する点の上位3位を所得階層別にみると、階層に関係なく、調理済み惣菜や菓子は、「安全性の高さ」よりも「味の良さ」が求められる。
味覚は日本人と異なることを十分理解し、現地の需要に合わせて商品開発をすることが必要である。
同じ中食に含まれる調理済みの惣菜とは異なり、冷凍食品は「味」より「安全性の高さ」「新鮮さ」が重視される傾向にある。その背景として、屋台などでの作り立て食品ではなく、使われている食材の鮮度や安全性に対する不安から、味よりも品質が重視されていると考えられる。
各商材で「国内ブランド」と「海外ブランド」の嗜好を比べると、いずれも国内ブランドが好まれる傾向にあり、タイ生活者の嗜好に合わせ、味・見た目・価格などの現地化が必要である。
菓子は所得が上がるにつれて海外ブランドの嗜好が高まる傾向にある。他商材より海外ブランド嗜好が高く、高所得層では逆転していることから、すでにタイでは海外ブランドが一般的に流通されている。
ArayZ No.94 2019年10月発行タイ人の変わる食生活
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THAIBIZ編集部
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