ArayZ No.104 2020年8月発行タイ現地化4.0 - コロナ禍とその後を生き残る、生産性高い組織の作り方
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2020.08.10
新型コロナウイルス感染拡大防止対策の一環として、タイ政府の緊急事態宣言下にリモートワークを開始した企業は数多くあるが、タイ国内感染者数を抑えられている昨今では徐々に従来の通勤するスタイルに戻りつつある。感染リスク軽減の取り組みを行いながら、かつ先行き不透明な経済状況をいかにコストを抑えて凌げるかが、今後の重要な経営テーマになる。
目次
新型コロナウイルスにまつわる各規制緩和により、タイ国内の経済活動が再開し、内需は底が何とか見え出した傾向にある。一方で、そもそも輸出依存度が高い外需を基軸にしたタイの経済構成上、さらなる世界経済の後退と入国制限措置が続くことによる観光業の低迷を鑑みると、依然としてタイ経済全体の見通しを明るいと判断する材料は乏しい。
この状況がいつまで続くのか、新型コロナウイルスの変異によりさらに状況は悪化するのか、どの状態をもって終息と言えるのか。現段階では確度の高い想定はし難い。ウイルスを恐れて経済活動を制限することは避ける必要があるため、社内外での感染リスクを抑えつつ、短中期で掛かる固定費をいかに削減できるかどうかが鍵となる。
社内での感染リスクを少しでも抑える上では、パーテーションをデスク周りに増設したり、デスクに座る向きや間隔の変更、通路動線を一方通行化するといった小手先の改善に留る傾向がある。だが果たしてそれらがどれほど感染リスク軽減に寄与するかは実際のところ定義が難しい。
仮に若干の効果があったとしても、オフィス内で不特定多数の従業員が頻繁に触れるドアノブ、複合機のボタンを数時間おきに消毒する等、接触感染リスクを抑える取り組みも加えて行わない限り、増設したパーテーションによる飛沫感染リスク削減効果は無意味になる。
加えて、ソーシャルディスタンス維持や動線を一方通行化するレイアウトは、スタッフ一人あたりのオフィス面積比を上げてしまうことになり、現状のオフィススペースと従業員数を維持して実現することは難しい。
決してこれらの取り組みが全く効果のないわけではないが、中途半端に継続性なく行うのであれば、その場しのぎの対策となってしまう。
幸いにもコロナウイルスを機に、タイでは今まで普及してこなかったリモートワークを約半数以上の企業が経験をすることになり、その良し悪しが各業界、企業ごとに明確になった。
通勤時間の減少、会議や客先訪問といった今まで定例化されてきたことの必要性の再確認や淘汰するための好材料である反面、高度な連携が必要なチームワークには不向きであったり、従業員の教育やモチベーション維持、イノベーションが起きにくい等の課題も浮き彫りになった。
オフィス不動産の観点でみると、2020年3月末時点でのバンコク市内オフィス面積は886万㎡になり、賃貸率は95・3%と依然、高水準を維持している。賃料相場も引き続き上昇傾向には変わりがないが、25年までにさらに145万㎡増床するため、この5年間で徐々に需要と供給バランスが正常化する見通しである。その結果、各ビルの付加価値によって明暗は分かれてくる。
BTSやMRTの駅直結または徒歩3分圏内で、竣工から年数が経っていない物件の賃料は今後も緩やかな上昇を続けることが想定できるのに反し、徒歩5~10分以上の賃貸スペースや共有スペースの設備に経年劣化が目立つ物件の賃料は、据え置き、または緩やかな下落も想定できる。
これらの見込みはコロナ以前のものではあるが、今後リモートワークを継続する企業や、業績不振による倒産・事業縮小をする企業が増加したとしても、この従来のオフィス賃料トレンドが大きく崩れ、現状の賃料から下がるといった「恩恵」は短期的には期待できないだろう。
ここまでお話してきた各要素を鑑みると、業種によるリモートワークの向き不向きを解決していて、また既存オフィスの契約更新時期が1年以内に控えている企業は、一部従業員のリモートワーク促進と、それに伴うオフィススペースのスリム化、つまりは縮小移転を検討する傾向になる。
リモートワークによるデメリットや、人と対面でのコミュニケーションを好むタイ人の傾向をみる限り、既存オフィスを完全になくす企業が増加することは考えにくい。
一方でウイルス感染第二波による感染リスクを抑える取り組みを継続し、かつ先行き不透明な経済状況に対しコストを抑えて凌げるオフィスの在り方として、既存オフィススペースをそのまま維持し、全従業員を従来の通勤スタイルで勤務させることは相応しくないと判断する経営者は少なくないだろう。
結果、総務や会計スタッフの常駐メンバー用のデスクスペース、最低限の会議室、リモートワークの従業員が打ち合わせ等で出社時に使用できるフリーアドレスデスクスペースのみのシンプルなオフィスに縮小することで賃料コスト削減。併せて、常駐メンバー以外へリモートワークを適用し、感染リスク軽減へ取り組む企業姿勢を維持することがバランスの良い選択と言える。
オフィスのスリム化を検討するにあたって重要なことは、移転先のオフィス賃料の不動産的観点と、既存オフィスの原状回復費や新設オフィスの内装費、必要な広さ等の内装的観点を併せたコストシュミレーションである。
コストを抑えるために、既存オフィスの契約残存期間は少ないに越したことはない。しかし、オフィススペースの縮小具合が大きい場合は契約残存期間分が若干長く、その賃料を違約金として支払った場合でも短中期的にコストを削減可能と判断できる場合もある。
図表は、既存300㎡のオフィスを100㎡に縮小した場合のシュミレーション概要になる。既存オフィスの契約完了と同じ時期に移転できた場合は、移転1・5年経過時点で追加投資額は賃料削減額と相殺でき、以降は年間264万バーツの削減となる。既存オフィスの契約残存期間が若干残っており、例えば残存3ヵ月分を違約金として支払ったとしても移転1・8年時点で追加投資額は相殺される。
上記数値はあくまで例であり、賃料、広さ、契約条件、内装内容により異なる。私までお問い合わせいただければ、概要をヒアリングの上具体的なシュミレーションと条件に沿った移転先物件のご紹介も併行してサポート可能である。
一次的に追加投資をすることになるので躊躇をしがちではあるが、ウィズコロナ、アフターコロナに合ったオフィスの在り方が今後求められることは必至で、早期に手を打つ攻めの判断が今後重要になってくる。
[ オフィス内装/オフィス家具 取引企業様一例]
GDM (Thailand) Co., Ltd.
山本 征史
慶應義塾大学 法学部法律学科卒業。2015年来タイ。オフィス内装や工場設備内装等の職場空間デザインに強みを持つ。タイ国内において多数の案件実績を持ち、日系企業を働く環境造りからサポート。
電話 : 088-572-4998(山本)
Eメール : [email protected]
57, Park Ventures Ecoplex, 12th Fl. Unit 1211 Wireless Road, Lumpini, Patumwan, Bangkok 10330
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THAIBIZ編集部
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