行動と実績を示し、営業改革を推進 警備概念が異なるタイで「目標は売上の倍増」

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行動と実績を示し、営業改革を推進 警備概念が異なるタイで「目標は売上の倍増」

公開日 2025.11.10

日本で豊富な実績を積んできた営業人材でも、海外という舞台ではさまざまな壁に直面する。そうした状況下で成果を出すためには、何が必要なのだろうか。

タイセコムセキュリティ(以下、「タイセコム」)の西村英明氏は、日本とは大きく異なる警備の概念を持つタイで、売上拡大に大きく貢献してきた。2024年11月からはバンコク本社の営業責任者として、タイ人営業チームの改革にも取り組んでいる。タイでの挑戦について、西村氏に話を聞いた。

セコムの認知度も警備概念も日本と大きく異なるタイ

Q. タイセコムの事業概要と西村さんについて教えてください

当社は1987年、タイの大手財閥サハ・グループとの合弁により設立されました。社員数は約2,000名、そのうち約半数が警備員です。タイ国内には50拠点を展開しており、 タイ全体のセキュリティを確保できる体制を整えています。

主力サービスは、不審者や火災事案があった際にはセンサーが感知して警備員が駆け付ける「オンライン・セキュリティ」です。その他、常駐警備、AIカメラ含むCCTV(防犯・監視用のクローズドなテレビシステム)、AED(自動体外式除細動器)など、セキュリティに関連する幅広いサービスを提供しています。

近年は、高齢者向けサービス「スマート・セキュリティ・ケア」や、AI機能を備えた「クラウド・カメラ」など、新たなサービスの展開も進めています。

私は2008年にセコム株式会社へ入社以来、一貫して営業職として経験を積んできました。2021年には、新制度である「特別地域人材育成プログラム」に応募し、海外拠点をリードする立ち位置であるタイ拠点を希望して社内試験に臨みました。無事に合格し、半年間タイ語を学んだ後、2023年4月に来タイ。シラチャ支店での勤務を経て、同年11月よりバンコク本社の営業責任者に就任しました。

Q. タイでのビジネスについて、どのような印象をお持ちですか

日本では「セコム=オンライン・セキュリティ」というイメージを広く認知いただいており、高い人件費やオンライン・セキュリティへの信頼性の高さから、警備員の常駐は一般的ではありません。

 一方、タイではセコムのオンライン・セキュリティの認知度はまだ低く、警備員の配置や防犯カメラの設置が一般的で、オンライン・セキュリティは普及途上にあります。営業の場でご提案し、日本人の経営者にはご理解いただけても、タイの方々からは「人のいない警備など想像できない」という反応が大多数です。

このように、日本とは警備に対する概念が大きく異なるタイですが、私はむしろ「ビジネスの可能性に溢れている」と感じています。

実際、ここ数年で警備員の不正や怠慢の問題、最低賃金の上昇、2026年4月26日からの警備員残業代の引き上げなどを背景に、顧客の警備レベル向上やコスト削減の観点から、オンライン・セキュリティの導入が注目されるようになってきています。

「オンライン・セキュリティを取り入れたいが、何から始めればよいかわからない」といったニーズに、警備員を削減しつつシステムを取り入れる「ハイブリッド警備」を筆頭とした当社のサービスが応えられると考えています。

営業チームの強化を推進し、「ハイブリッド警備」の提案に注力

Q. 現在、どのようなミッションに向けて挑戦されていますか

私がタイに赴任して以来、「ハイブリッド警備」を積極的に提案し、売上面でも成果を上げてきました。こうした実績を踏まえ、現在はタイセコム全体としてハイブリッド型の提案に注力する方針を決定し、今年1年間で250件、4,860万バーツの契約を目標に掲げています。

ハイブリッド警備では、人物の特徴や特定の行動を記憶できるAIカメラとオンライン・セキュリティを活用しています。AIカメラはその高い精度により、警備員の一部を代替できるだけでなく、小売業界では顧客行動に基づくマーケット分析ツールとしての活用も広がっており、幅広いお客様から高い関心を集めています。

目標達成には、タイ人営業チームの強化が不可欠だと考えています。来タイ前に学んだタイ語も活かしながら、なるべく通訳を介さずに社内コミュニケーションを図り、自分の持つノウハウや経験を直接彼らに伝えることを意識しています。これは赴任直後から取り組んできた課題ですが、現在はさらに力を注いでいます。

イベントでハイブリッド警備について講演を行う西村氏(提供:タイセコム)

Q. 具体的にどのようにチームの強化に取り組まれているのでしょうか

タイ人営業チームの課題として、「商品の説明はできても、それによって生まれるお客様のメリットを十分に訴求できない」という点が挙げられます。これまで研修や説明資料の整備など、さまざまな取り組みを行ってきましたが、最も効果的だと感じたのは、私の営業に同行してもらうことです。

私がお客様とどのように会話し、相手がどう感じてご契約の決断につながったのか。そのプロセスを実際に目の前で体験してもらうことで、納得感を持って自らの行動に反映させることが可能になります。

また、セコムのウェブサイトに「ハイブリッド警備」の情報を追加するとともに、今後はアマタシティ・チョンブリー工業団地においてもハイブリッド警備の広告掲示を予定しています。

タイ国内で本格的にハイブリッド警備の普及を目指して積極的な取り組みを進めており、タイの方々がより安心して暮らせるよう、今後も地道に取り組んでまいります。

売上貢献だけでなく、組織全体を底上げできる力をつけたい

Q. 帰任までの目標や、今後の展望をお聞かせください

営業責任者として、タイでの売上を倍増させることを個人目標としています。具体的には、メインサービスである「オンライン・セキュリティ」の新規契約を、年間1,000件から倍の2,000件へと拡大することを目指しています。

ただ、さらに上を目指すためには、営業として売上に貢献するだけでなく、さまざまな側面から組織を底上げする力が求められます。

「自ら動いて成果を出す」という自分の強みを伸ばしつつ、コスト削減や人事戦略など、これまで触れる機会の少なかった分野についても学んでいきたいと考えています。それが、最終的には世界の人々に「変わらぬ安心」をお届けすることにつながると信じています。


西村 英明
General Manager Sales Division Sales Group
THAI SECOM SECURITY Co., Ltd.

2008年にセコム株式会社へ入社。営業職として経験を積んだ後、「特別地域人材育成プログラム」を通じて2023年4月に来タイ。シラチャ支店での勤務を経て、同年11月より現職。

THAIBIZ編集部

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