「つなぐ力」で過去最高受注を達成!年間500人との出会いが開く新たな扉

THAIBIZ No.155 2024年11月発行

THAIBIZ No.155 2024年11月発行タイの明日を変える!イノベーター大特集

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「つなぐ力」で過去最高受注を達成!年間500人との出会いが開く新たな扉

公開日 2024.11.11

コロナ禍が明けて一定の時間がたった今でも、当時に途絶えた人脈をまだ取り戻せていない在タイ日系企業は少なくないだろう。「タイでのネットワーク拡大のため、年間500人と出会えた」と話すYokogawa(Thailand)Ltd.の澤本俊平氏は、同社における2023年度の過去最高受注達成に大きく貢献。今回は、出会いを大切にする澤本氏の「つなぐ力」に焦点を当てて話を聞いた。

「持続的なビジネスの拡大」をミッションに、新規顧客の獲得等に挑む

Q. 貴社の事業内容と、澤本さんについて教えてください

横河電機株式会社(以下、「横河電機」)は1915年に創業し、最先端の製品やソリューションを提供してきました。日系企業のタイへの積極進出を契機に、当社は1989年にタイで設立し、今年で35周年を迎えます。主に石油化学業種を中心とする様々な製造業のお客様向けにフィールド計器や制御・情報システム、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹システム)等のソリューションを提供しています。

バンコクに本社があり、工業団地のあるラヨーン、カンペーンペット、コーンケーン県などに支店があります。従業員数は250人、うち日本人は私を含め3人のみ。タイ人のManaging Directorを筆頭に、ローカル化がかなり進んでいる組織です。

私は2004年に横河電機に入社後、17年間営業一筋で日本中を飛び回っていました。その後、経営管理本部にて社長の業務秘書を2年間務め、初の海外駐在として2023年4月に来タイしました。経営管理本部在籍中は、これまで営業の側面しか見てこなかった私にとって、横河電機のグローバルビジネスについて理解を深められるなど、新しい視野と知見、社内人脈を養える貴重な機会でした。そうした基盤を糧に、タイでは「持続的なビジネスの拡大」をミッションとし、日々の業務にあたっています。

Q. ミッション実現のための戦略についてお聞かせください

当社の主力事業は、現場におけるデータ測定・収集から、企業経営レベルの最適化まで、製品、サービスを提供し、お客様の課題を解決するソリューションビジネスです。再生可能エネルギーや石油精製・基礎石油化学などの「エネルギー&サステナビリティ事業」、バイオケミカルや紙パルプ、高機能化学などの「マテリアル事業」、医療や食品などの「ライフ事業」の3つのサブセグメントに分けることができます。

主力事業の内容やサブセグメントを変えずに数字を伸ばすためには、グローバルで顧客の層を拡大させる必要があります。そのためタイでも、各サブセグメントにおいて顧客層を広げていくことが、ミッションの実現に欠かせない要素だと考えています。

「個の力」を繋げて、組織力の向上へ

Q. タイのビジネスや仕事環境に対する印象は

厳しいコロナ禍を経て、自動車業界の停滞や中国企業の台頭など危機感を抱く要素が多い中、来タイしてまず感銘を受けたことは、頼りになるタイ人社員の存在でした。赴任前は、ある程度日本人がタイでの事業を牽引しているだろうと思っていましたが、いざ来てみると、想像以上にローカル化が進んでおり、タイ人社員主体で物事が進んでいました。彼らの仕事に対する熱量や情熱にも、いつも驚かされます。

タイ全体を見ても、同じことが言えると思います。日本企業や日本人のプレゼンス低下が懸念される今、日本人としてどう振舞うべきかを考えた時、「利己」より「利他」の精神で、日本人ならではの献身的な心持ちで仕事を進めていく必要があると思います。ただ、このスタンスは、私が昔から意識してきたことと何ら変わりありません。「お客様の課題を解決するために何ができるのか」を第一に考え、タイでも自分らしいバリューを発揮できるよう尽力しています。

Q. 組織としての課題や、改善のために取り組んでいることは

来タイ直後はタイ人社員のパワーに圧倒されましたが、少し全体が見えてくると、課題も散見されました。私たちの展開するソリューションビジネスでは、既存のお客様への新しいソリューションの提案だけでなく、既存のソリューションを新規のお客様に提案することも重要です。

両軸で成果を上げるためには、お客様の課題を深く理解し、その解決に向けて本質的で価値のある提案を行う必要があります。タイ人社員は全体的に、新しい試みには積極的に挑戦する一方で、チームとしてお客様に寄り添えているかというと、改善できる点は幾多もあると感じました。

具体的には、タイ人社員の「個の力」を効果的に繋げて「組織の力」に広げていく必要があると考えています。チームの連携力を高め、個別アプローチで終わらせず「面でのアプローチ」ができる意識付けや体制づくりを、今は目指しています。

「つなぐ力」でタイの未来に貢献する

Q. タイ赴任後に成し遂げたこと、その成功要因について教えてください

当社が2023年度、過去最高の受注額を達成できたことです。既存のお客様との関係性を維持しながらも、新しいお客様の層を広げられたことが最大の成功要因だと思います。特にコロナ禍で途絶えてしまった人脈を復活させるために、年間500人と会うことでネットワークを拡大させ、出会った人と対話をしながら「困りごとの解決に役立てないか」と模索し続けてきました。

タイでの新しい取り組みとして、ERPの案件を獲得できたことも大きな成果だと捉えています。ERP事業においては、2022年9月にグループ会社になったYokogawa Votiva Solutionsとチームを組んで、製造業のお客様をターゲットにアプローチを続けていましたが、大手タイ企業と日系化学メーカーの合弁会社が当社ERPの採用を決断してくださいました。買収した企業とのシナジー効果が発揮できたことが成功要因だと思っています。個人的なネットワーク構築だけでなく、組織としてのネットワーク作りの重要性とその成果を強く実感しました。

Q. 帰任までの目標は

脱炭素の取り組みをタイでも展開したいと考えています。具体的には、財閥企業の経営層や日本の公的機関を巻き込み、工業団地全体での脱炭素に取り組むイニシアチブ設立を目標としています。横河電機として千葉の五井地区やオランダのロッテルダムで先行して取り組んでいますが、当然ながら我々だけの力では成し遂げられない、大がかりな取り組みとなります。

横河電機は「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす」をパーパスに掲げています。「測る力」は当社の事業を、「つなぐ力」はシステムやお客様同士を繋ぐことを意味しています。人的ネットワークを広げお客様同士も繋げることで、面での脱炭素の取り組みが実現できると信じており、それがタイの未来に責任を果たすことにも紐づいていくと考えています。35周年という節目でもある今、より一層タイ人社員と協力しながら目標に向かって邁進していきます。


澤本 俊平氏
Senior Vice President
Yokogawa (Thailand) Ltd.

2004年、横河電機株式会社に入社。17年間にわたり紙パルプ業種の営業を担当した後、経営管理本部を経て2023年4月にタイ赴任。

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THAIBIZ編集部

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