タイ進出日系企業を支えて70年!ビジネス支援とネットワーキングで日タイ経済をつなぐ

THAIBIZ No.160 2025年4月発行

THAIBIZ No.160 2025年4月発行駐在員必読! タイ式経営の流儀

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    タイ進出日系企業を支えて70年!ビジネス支援とネットワーキングで日タイ経済をつなぐ

    公開日 2025.04.10

    タイに進出する日系企業にとってビジネスを軌道に乗せるための後押しをしてくれる支援制度は非常に重要である。一方で、支援機関の数も多く、全貌を把握しきれずに制度活用の機会を逃している企業は少なくない。本連載では、日系企業向けの支援活動を展開する機関をピックアップし、タイでのビジネス発展を目指す企業の道標となる情報を届けていく。第一回は、盤谷日本人商工会議所(以下、「JCC」)にフォーカスし、その役割や具体的な支援内容について、専務理事の石井信行氏に話を聞いた。

    第1回】盤谷日本人商工会議所


    盤谷日本人商工会議所 代表取締役 専務理事 石井 信行 氏

    盤谷日本人商工会議所 
    1954年設立。設立以降、在タイ日系企業の企業経営に役立つ様々なサポートを行うとともに、日系企業のプレゼンス増大に伴いタイ社会との融和をはかるための各種事業の取り組みに注力。会員数は、1,684社(2025年2月末時点)。日本・タイ両国間の経済発展に寄与するとともに、各種社会貢献活動を継続的に展開している。

    お問い合わせ Website: www.jcc.or.th TEL: 02-250-0700


    木下 JCCは70年にわたり在タイ日系企業を支えてきましたが、その歩みと活動について教えていただけますか。

    石井 JCCは終戦後にタイに残った商社や銀行、一部のメーカーが中心となり正式な経済団体とすべく1954年に立ち上がったのが始まりです。設立当初の会員数はわずか30社でしたが、現在では1,684社(2025年2月時点)にまで拡大。世界最大級の在外日本人商工会議所へと成長しました。在タイ日系企業の経営に役立つ様々なサポートを提供するとともに、企業単体では対応が難しいタイ政府との交渉など、タイ社会との融和をはかるための活動に注力しています。

    会員企業の構成は製造業が約4割、非製造業が約6割ですが、タイ国内の雇用や投資額では、製造業が大きな比重を占めています。JCCの強みは長年培ってきたネットワークとタイ政府との信頼関係です。これらを活かし、政策提言を行うことで、日系企業のビジネス環境改善に貢献しています。

    木下 在タイ日系企業に向けて、具体的にどのようなサービスを提供されていますか。

    石井 JCCは、日本国内の商工会議所のような国や地方公共団体からの要請を受けて会員・非会員問わず広く支援を提供する組織とは異なり、会費のみで運営される独立型の商工会議所です。そのため、基本的には会員企業向けの支援が中心となりますが、将来会員になりうる企業への情報提供や、非会員でも参加可能な中小企業支援委員会の開催も行っています。

    JCCの主な支援は、最新のビジネス情報の提供に加え、「企業間交流の促進」と「会員企業への直接支援」の2つを展開しています。前者については、自動車や化学品などの業界ごとに16の「部会」を運営し、企業同士の情報交換を促進しています。

    電気部会総会

    さらに、2024年度には新たな試みとして3回の「異業種部会交流会」を実施しました。産業構造の変化に伴い、日系企業も従来のビジネスモデル+αで新しい道を模索する動きが見られる中、「異業種との協業が新たなビジネスチャンスを生むのではないか」という仮説のもと開催。業界の垣根を超え新たなビジネスの可能性を探る場となりました。

    後者については、企業経営に欠かせない法律や会計に関する悩みに対し、専門家がセカンド・サードオピニオンを提供する無料相談を受け付けています。問題を抱えてお困りの企業には可能な範囲で協力させていただきたいと考えています。

    同様の課題が多くの企業から寄せられた場合は、「日系企業全体の問題」としてタイ政府に提言し、より大きな影響力を持たせています。タイ政府関係者とは年間20回以上の面談を実施し、日系企業のビジネス環境をより良いものにするために、継続的な働きかけを行っています。

    木下 おすすめのJCC活用方法があれば教えてください。

    石井 JCCの会員は、ビジネスに直結する最新情報の入手や知識を習得する機会が得られます。例えば、税務や労務などのビジネス基礎セミナーを定期的に開催しており、新しく駐在された方々にもおすすめです。ビジネス実務を部下やタイ人社員に一任している企業もありますが、経営層が一定の知識を持つことで、より安定したマネジメントが実現できます。セミナーを通じて新たな気づきを得ることで、経営の視野が広がる可能性もあります。

    また、過去のセミナーのアーカイブ動画や、日タイ経済の歴史をまとめた資料も会員限定のウェブサイトで閲覧可能です。ぜひ積極的に活用してください。

    木下 JCCはタイ社会とのつながりを大切にし、社会貢献活動にも注力していると伺いました。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。

    石井 洪水の被災地復興支援や、バンコク都と連携した環境改善の取り組みなど、様々な活動を行っています。特に人材育成に注力しており、チュラーロンコーン大学などで会員企業を講師に招いた寄付講座を10年以上実施してきました。

    2024年度からはラチャマンカラ工科大学等の工学部を対象にした奨学金制度を開始。JCCの奨学生と日系企業が交流できる機会を設け、より実社会の状況を知ってもらう取り組みも進めています。今後も会員企業の皆様と協力し、社会に価値を還元する活動を推進していきます。

    洪水の被災地復興支援金贈呈式

    木下 タイのビジネス環境が変化する中で、在タイ日系企業が直面している課題についてのご意見をお聞かせください。その課題を乗り越えるためのヒントや、企業へのメッセージをお願いします。

    石井 近年、「日本のプレゼンス低下」が指摘されることもありますが、投資額などのデータを見る限り、まだそのように言い切れる状況にはなっていないと思います。しかし、タイ国内の市場低迷や産業構造の変化に直面しているのは事実であり、これからの時代、企業が成長を続けるには柔軟な対応力と企業同士の連携や協力が不可欠です。

    従来のやり方が通用しなくなる場面が増える中、重要なのは、ネガティブな情報や雰囲気に流されず、各企業が持つ強みを活かし、前向きに挑戦を続けることです。

    JCCは、今後もネットワークの強化やタイ政府への政策提言を通じ、日系企業を支援していきます。また、JICAなど日本の公的機関との連携を強化し、「オールジャパン」で日タイ経済の活性化を目指します。ご要望やご相談があれば、ぜひJCCをご活用ください。共にこの変革期を乗り越え、新たな可能性を切り開いていきましょう。

    JICAタイ事務所
    Representative

    木下 真人 氏

    タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。開発学修士、MBA保有。
    Email:[email protected]

    JICAタイ事務所

    31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey
    Bangkok 10110, THAILAND
    TEL:02-261-5250

    Website : https://www.jica.go.jp/overseas/thailand/office/index.html

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