東北タイ・コンケンの挑戦(下)	脱炭素化で産学連携が本格化

東北タイ・コンケンの挑戦(下) 脱炭素化で産学連携が本格化

公開日 2023.12.15

コンケン県がビジネスでも注目される理由の一つがコンケン大学という東北地方ではトップ、タイでも各種指標で上位にランクインする有力大学があることだ。例えば三菱商事は長年、コンケン大に語学研修生を派遣し、同大卒業生の採用実績もある。三菱商事はさらに2021年4月に同大学と環境に優しい地域自立型の社会構築に向けて協業する覚書(MOU)に調印、電動バイクと充電装置システムの開発などを行ってきた。

コンケン大学の脱炭素化に日本企業が協力

そして海外産業人材育成協会(AOTS)が日・アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)から委任を受けた令和3年度補正予算事業「アジアグリーン成長プロジェクト推進事業」における「タイ王国コンケン地域への日系企業進出の可能性検証事業」を、アビームコンサルティングが今年7月に受託し、コンケン大学のカーボンニュートラルキャンパス実現に向けたロードマップ策定支援プロジェクトも始まった。AOTSバンコク事務所の藤岡亮介所長は「カーボンニュートラルに寄与できそうな製品・技術をお持ちでこの取り組みに興味をお持ちの企業はアビームコンサルティングまでご一報ください」と呼び掛けている。

この事業では、コンケン大学のカーボンニュートラルに寄与できそうな日系企業の製品・技術を調査し、来年3月末をめどに対象の製品・技術及び優先順位を踏まえたカーボンニュートラルのロードマップを大学側に報告する予定だ。この事業のコンケン大学側の責任者で工学部長のラッチャポン准教授にインタビューした。

コンケン大学のラッチャポン工学部長
コンケン大学のラッチャポン工学部長

コンケン大学はカーボンニュートラルを目指す

Q. 脱炭素化の目標は

ラッチャポン准教授:コンケン大学は、2040年までにカーボンニュートラルを実現する目標がある。しかし、1年前に新たに策定した計画では目標の60%しか実現できない見通しのため、他の方法で残り40%を達成する必要が出てきた。このため、われわれは在タイ日本大使館に相談し、アビームと三菱商事に脱炭素化事業に協力してもらうことになった。

Q. これまでの取り組みと従来の計画は

ラッチャポン准教授:これまでにシャトルバスをすべて電動バスに変え、2メガワット(MW)のソーラーパネルの屋上設置を導入してきた。1年前に立てた新たな計画では、2MWのソーラーパネルの屋上設置を20MWまで増やし、大学内を走る2万台のバイクをすべて電動バイクに転換、建物を省エネ化、公共交通機関の利用を促進するための「カーフリーゾーン」を導入するなどで60%削減を実現するというものだ。そして今回、アビームらは残り40%の削減に向けたさまざまな技術を提案してくれた。

Q. コンケンの自治体との協力は

ラッチャポン准教授:コンケンはタイの「低炭素都市」になるというスマートシティー化を目指している。コンケン大学は県の中核的な大学であり、各自治体と電気自動車(EV)の研究や産業部門の二酸化炭素(CO2)排出量の計算などで継続的に協力し、コンケン大学の研究者は自治体のさまざまなプロジェクトに参加している。

Q. 民間企業との協力は

ラッチャポン准教授:チョー・タウィーとミトポングループはコンケン大学と、研修や奨学金の支援や共同研究などの協力に関する覚書(MOU)を締結している。ミトポングループとはコスト削減のための人工知能(AI)やスマートファクトリー化の共同研究も行っており、社員には卒業生もかなり多い。さらに、Khon Kaen Think Thank(KKTT)のプロジェクトでは、コンケン大学はライト・レール・トランジット(LRT=軽量鉄道)のプロトタイプ開発の研究を担当している。

コンケン大学は日本企業との協力を期待

Q. 日本企業との関係は。何かメッセージはあるか

ラッチャポン准教授:私自身は筑波大学で博士号を取得し、日本の文化を理解している。一方、コンケン大学工学部は日本のさまざまな大学とMOUを締結しているほか、三菱商事や豊田通商などの日本企業から研修生を受け入れており、共同研究も行っている。今後もさらに協力関係を強化していくことを期待しているが、まずはカーボンニュートラルの目標達成に向けた協力から始めたい。

(サラーウット・インタナサック、増田篤)

TJRI編集部

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