
カテゴリー: 会計・法務
連載: 知らなきゃ損する!タイビジネス法務 - GVA / TNY法律事務所
公開日 2026.10.09
今般、法令違反や公序良俗に反する行為を行った外国人の、国外追放手続きを整備する規則(以下、「新規則」という)が制定された。新規則は、2026年8月27日に公布され、翌28日から施行されている。

新規則の柱は、次の二つの条項である。
第一に、公共の秩序、善良な風俗または国民の平穏を害する行為に及んだ外国人、および、その外国人を教唆(きょうさ)または幇助(ほうじょ)した外国人に対し、内務大臣は、国外追放命令を発することができる(第4条)。
第二に、一定の行為に及んだ外国人が、確定判決に基づく刑の執行を終え、刑事施設から釈放された場合、内務大臣は、国外追放命令を発することができる。これに該当する行為は、①不法入国・不法在留(オーバーステイを含む)、②無許可就労、③外国人事業法違反の事業運営、④公文書偽造・不正使用、⑤禁錮5年以上の犯罪、⑥これら各行為の教唆または幇助、の6つである(第5条)。
追放された外国人の送還先は原則として本人が国籍を有する国、国籍不明の場合は入国前の最終居住国とされる(第7条)。また、国外追放される場合は、再入国の禁止が科される可能性もある(第5条)。
このなかで日系企業が特に注意すべきなのは、オーバーステイや無許可就労だ。これらは新規則によって初めて国外追放の対象とされたわけではない。オーバーステイについては、これまでも入管法上、摘発された場合には国外追放の対象とされており、無許可就労についても、外国人就労管理緊急勅令上、本人の国外退去と2年間の労働許可申請禁止が定められていた。
新規則は、この既存の制度を改廃するものではない。既存の制度は新規則と並存し、同一の事案についていずれも適用されうる。もっとも、オーバーステイや無許可就労が追放事由として明文で類型化され、内務大臣による追放命令という経路が整備されたことにより、実際に国外退去へ至る場面が従来よりも増える可能性は否定できない。
また、オーバーステイや無許可就労があった場合、刑事手続きが完了しなければ国外追放に至らないのか(第5条)、あるいは、刑事手続きが完了する前であっても国外追放される可能性があるのか(第4条)という点ははっきりせず、今後のガイドライン等の発布を待つ必要がある。
タイ国内の多くの日系企業では、日本人をはじめとする外国人が取締役やスタッフとして勤務しているはずである。新規則は施行されたばかりであり、どのような解釈・運用がされるのかはまだ明らかではない。しかし日系企業にとっては、自社の外国人取締役や外国人スタッフの在留許可やワークパーミットの取得・維持をこれまで以上に適切に管理していくことが求められる。

GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
弁護士
靏 拓剛 氏
2009年に福岡市内の法律事務所に入所し、様々な業種の企業に対し、企業間取引への指導助言、法務監査、紛争処理等の法務サービスを提供。2020年より自身の活動をアジアへ拡大すべく、GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.に移籍(日本国内ではGVA国際法律事務所に弁護士として所属)。現在は、GVAグループの一員として、タイにおける紛争対応を中心に、事業展開を法務面から支える。
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