ArayZ No.115 2021年7月発行企業価値を高めるタイ事業再編
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カテゴリー: 会計・法務
連載: New*GVA / TNY法律事務所 – タイビジネス法務
公開日 2021.07.09
3月号で「タイにおける電子契約」について寄稿した。だが、それ以前にタイの契約実務では、どの言語で契約書を作成すれば良いのか混乱してしまったり、witness(立会人)という耳慣れない用語に出くわすこともある。そこで今回は、タイの契約や契約書について解説する。
そもそも、契約書は何のために作成され、どのような効力を持つものなのだろうか。これについては端的に、「当事者が合意した内容を客観的に示すため」と言い表すことができるだろう。
契約書は、合意の内容を対外的に示すために存在するもので、契約書がなくとも合意は有効に成立する。つまり、「契約書の有無=合意の有無」というわけではなく、契約書は合意を証明するための1つの(ただし重要な)証拠に過ぎないと言える。
誤解されがちであるが、タイにおいて就業規則などの一部の文書を除いては、「契約書をタイ語で作成しなければならない」というルールはない。そのため、英語でも日本語でも契約書を作成することは可能である。
もっとも、先に述べた通り契約書が「当事者が合意した内容を客観的に示すため」のものなのだとすれば、「誰に対して示すのか」を予め考えておく方が良い。 わざわざ合意した内容を外部に示さなければならない場面、すなわち、合意内容の認識に食い違いが生じている場面を想定すれば良いだろう。
この場面では、契約当事者同士の認識に食い違いが生じているのだから、「契約書にこう書いてある」ということを、まず契約の相手方に対して示すことが多いだろう。
そうすると、契約当事者に理解できる言語(英語、場合により日本語)で作成されるのが自然である。
契約後に登記をしたり、何らかの許認可申請が予定されていることもある。その場合は、契約書をタイの官公庁に対して示すことが想定される。
また、話し合いで解決できない場合に、タイの裁判所に契約書を示す可能性もあるだろう。 そういう場面を想定して、最初からタイ語で契約書を作成する(又はタイ語の翻訳を添えておく)ということも、十分検討に値する。
これらは、場面によって最適解が異なるが、少なくとも署名者が理解できない言語を選択することは避けた方が良い。また、複数の言語で契約書を作成する場合は、かならず「食い違いが生じる場合にどの言語を優先するか」を明記しておくべきである。
タイの契約書には、witness(立会人)という欄が設けられていることがある。立会人とは第三者的な立場で契約に立ち会い、契約の締結を見届ける人のことである。
一般的な契約では立会人による署名は必須ではないが、株式譲渡契約などの一部の契約では、立会人の署名がなければ有効に契約が成立しないことがあるので注意を要する。
立会人には資格が必要なわけではないので、自社の従業員も立会人になることができる。しかし、後日その契約について争いになった場合には、契約時の状況についての証人になる可能性もあるため、重要な契約を締結する場面では公平な第三者を立会人として選択することが望ましい。
紙面の関係で上記に留めるが、引き続きタイの契約について解説を寄稿予定である。
GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士藤江 大輔
2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。
URL : https://gvalaw.jp/global/3361
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THAIBIZ編集部
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