ArayZ No.116 2021年8月発行タイ農業 振興への道筋
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カテゴリー: 会計・法務
連載: New*GVA / TNY法律事務所 – タイビジネス法務
公開日 2021.08.09
当職担当の回では、タイにおける相続の概要について説明している。
4月号では適用される法律について説明したが、今回はタイに財産を持つ日本人に対し、タイ法の適用がある場合を前提として、タイの相続制度について解説する。
前回解説した点と重複するが、タイにおいて外国人が相続手続きを行う場合、対象となる相続財産により適用される法が異なる旨、タイ法上規定されている。
原則としてタイに存在する不動産については、タイ法に基づくこととなる(ACT ON CONFLICT OF LAWS B.E.2481、37条)。動産については被相続人の死亡時の居住地における法が適用される(同法38条)。
このため、死亡した外国人(被相続人)が死亡時にタイに居住していた場合には、相続対象となる動産についてタイ法に従い相続されることとなる。
以下、今回も被相続人による遺言がない場合を前提として記述する。
日本でいう民法に該当する規定であるタイ民商法典(Civil and Commercial Code、以下「民商法典」)において、相続についての定めがなされている。相続に関する制度の大枠自体はタイも日本と同様となっている。
ただ、後に述べるように法定相続人の定め方やその配分、僧侶の相続に関する規定がある点などは日本と異なる。
相続財産は、法律または遺言により相続人に相続される(民商法典法1603条)とされており、遺言がある場合には遺言の定めに基づき相続が行われ、遺言がない場合には法律の定めに基づき相続が行われる。
遺言があっても、その相続財産全部に対しての遺言がされていない場合や遺言が無効になる場合には、遺言の及ばない部分については民商法典の定めに基づく相続が行われることになる(民商法典1620条)。
民商法典の定めに基づき相続が行われる場合、法定されている相続人となる者(法定相続人)及びその相続順位は、以下の通り定められている(タイ民商法典1629条、1635条)。
第1位 直系卑属(子)
第2位 (死亡した本人−以下「被相続人」の)父母
第3位 (被相続人と)父母を同じくする兄弟姉妹
第4位 (被相続人と)父母の一方を同じくする兄弟姉妹
第5位 父母
第6位 叔父(伯父)、叔母(伯母)
この第1位を優先し第6位までの順番で、各法定相続人が相続をする権利を有することとなる。基本的には、後順位の者は前順位の者が相続する場合には、相続できなくなる。
もっとも、被相続人の父母に関してはこの例外として、他の法定相続人が相続する場合でも、常に子と同じ順位で相続するものとされている(民商法典1630条)。
また配偶者がいる場合には、配偶者も相続人となる。配偶者の法定相続分は、同時に相続する他の法定相続人の種類により異なる形となっている(民商法典1635条)。
例えば、子が相続人となる場合には、子と同順位として同じ割合で相続し、他の相続人が第5順位の祖父母となる場合には、配偶者が3分の2の割合で相続することになる。
タイでも法定相続人について、被相続人となる者が生前に、法定相続人となる者を廃除することにより、相続させないとする制度は存在する(同法第1608条)。また、遺産の相続を放棄する相続人による相続放棄は、タイでも規定されている(民商法典1612条)。
日本人がタイに居住し、タイに財産を有したまま遺言なく死亡した場合、この者の相続手続きをタイで進めるためには、上述の法定相続人の順位や分割の定めに従い、相続手続きを行うこととなる。
また相続手続きを行うために、遺産管理人として相続財産の管理や具体的な分割手続きを行う者の選任を、裁判所にて行う必要がある。
日本人のタイでの相続は、残された相続人がタイに居住していない場合、タイの国の慣習や言語に不慣れなことに加え、制度自体も把握できないことが想定されることから、あらかじめ遺言を作成しておくことや、必要な手続きについて親族間で確認しておくことは、将来の紛争や問題を生じさせないために有益である。
TNY国際法律事務所
日本国弁護士
藤原 杯花
17年1月よりタイのTNY国際法律事務所にて執務。TNY国際法律事務所は、日本人弁護士2名が共同代表を務める法律事務所であり、会社設立から規制調査、契約書のリーガルチェック、商標登録申請、相続手続きなどのサービスを提供している。
URL : http://www.tny-legal.com/
CONTACT : [email protected]
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THAIBIZ編集部
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