デジタルプラットフォームサービス事業に関する勅令

ArayZ No.142 2023年10月発行

ArayZ No.142 2023年10月発行なぜタイ人は日系企業を辞めるのか?

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デジタルプラットフォームサービス事業に関する勅令

公開日 2023.10.09

各国でプラットフォームサービスに関する規制が強まる中、タイにおいてもデジタルプラットフォーム規制として、2023年8月20日からRoyal Decree on Digital Platform Services B.E. 2565 (2022)(以下、「本勅令」)が施行された。本勅令は、タイの電子取引法に基づいて制定され、Electronic Transactions Development Agency(以下、「ETDA」)が所轄している。

1. デジタルプラットフォームの定義

同勅令において、デジタルプラットフォームサービス(以下、「DPS」)とは、「サービスの有償・無償にかかわらず、コンピュータネットワークを通じて、電子取引を生じさせる目的で、事業者ユーザー、消費者又はユーザー間のつながりを創出する電子仲介サービス」として定義されている(第3条)。

この定義は、特定のニーズを有する者同士を結びつけるオンライン上の「場」を提供するDPSを想定していると考えられ、典型的にはいわゆるマーケットプレイス型のDPSがこれに該当する。加えて、マーケットプレイスのみならず、情報を提供する側と受領する側を結びつける検索エンジンや、ソーシャルメディアなども本勅令上のDPSに含まれると考えられ、その射程は広いようである。しかし他方で、自社サイト等で製品やサービスを直販する場合は、本勅令の適用対象外とされている。

そして、以下の①または②の特徴を有するDPSを提供することは、「デジタルプラットフォーム事業」に該当し、DPS事業を営む者は、ETDAへの事前届出義務などの一定の義務を負う。

① タイにおけるDPSの提供による収益が、年間5,000万バーツを超えること(事業者が自然人の場合には年間180万バーツを超えること)

② ETDAが公表する基準に従って算出される利用者数が5,000人を超えること

2. 規制の概要

上記①または②に該当するDPSを営む事業者は、本勅令に基づき以下のような義務を負う。

・ ETDAへの事前届出義務(第8条、第12条)

事業者は、サービス提供前に、ETDAに対して所定の情報を届け出なければならない。届け出るべき情報の詳細は12条に規定されるが、事業者情報やサービスを特定する情報、ユーザーの情報、利用者の苦情(上位5つ)に関する情報などが列挙されている。

・ ETDAへの年次報告義務(第15条)

事業者は、一年に一度、所定のフォームに基づいた事項をETDAに対して報告しなければならない。また同条2項では、事業者情報の変更があった場合に30日以内の報告が必要とされているので注意を要する。

・ サービス利用規約の告知義務(第16条、第17条)

有償オンラインマーケットプレイスや検索エンジンを営む事業者には、サービス利用規約を利用者に対して告知する義務が課せられた。ただし、単に利用規約を告知すれば足りるわけではなく、商品・サービスのランク付や、レビュー、広告に関する基準及びその主要パラメータを示す必要がある。

・ 損害を受けた利用者に対する救済措置提供義務(第25条)

事業者は、サービス利用により損害を被った者を救済するための一定の措置を講じなければならない。この救済措置には、苦情処理体制の構築や、カスタマーサポート窓口の設置などが含まれる。

・ コーディネーターの任命義務(第11条)

本勅令はタイ国外の事業者も適用対象としている。タイ国外の事業者がタイ国内の利用者にサービスを提供する場合、ETDAへの事前届出義務やタイに居住するコーディネーターの任命等の義務を負う。

本勅令は、原則として上記①または②の基準に該当する事業者を対象とするが、上記に該当しない小規模DPSを運営する者についても言及している点には注意を要する。小規模事業者は、本勅令第12条に定めるルールの一部を遵守することが求められており、より具体的には、事業者情報、運営DPSの名称、種別、URL等に関する事前通知義務、及びETDAに対する年次報告義務が課せられている。

3. 罰則

事業者がETDAへの事前届出義務や本勅令に定める義務に違反した場合、ETDAは、違反状態が是正されるまで、タイにおけるサービスの提供の停止命令を出すことができるとされている(第33条)。在タイ事業者としては、サービス停止になるリスクがある点に留意しつつ、丁寧に対応することが求められる。

寄稿者プロフィール
  • 藤江 大輔 プロフィール写真
  • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
    代表弁護士藤江 大輔

    2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

    URL : https://gvalaw.jp/global/3361
    CONTACT : [email protected]

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THAIBIZ編集部

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