カテゴリー: 自動車・製造業, 食品・小売・サービス, イベント
公開日 2023.11.07
TJRIは9月29日、タイと日本の企業間の協業・新規事業のチャンス創出を目指す「TJRIビジネスミッション」で、電気機器製造のフォース・コーポレーション(Forth Corporation)傘下で、EMS(電子機器受託製造サービス)事業を行うフォースEMS(Forth EMS)のナコンパトム県にある本社および工場を訪問した。同社は現在バンコク市内で急増している飲料自動販売機「タオビン(Tao Bin)」の開発・製造で注目されている。同社幹部が事業概要を紹介した後、16人(15社)の参加者はタオビンの製造工場を見学、ネットワーキングも行われた。
ミッションの第一部では企業紹介、事業内容の説明会があった。まずフォースEMSのピチャイ・ドゥアンタウィーサップ最高経営責任者(CEO)があいさつに立ち、「日本の働く文化は世界で唯一だと思っている。われわれも企業体制の構築の際に『カイゼン』や日本の考え方、文化などを取り込んでいる。今後も日本企業と協業できる機会を期待している」とアピールした。
続いて事業開発戦略担当のミントラー・プーンサップ氏が事業内容について報告。「親会社のフォース・コーポレーションは、タイの川上から川下までをカバーするテクノロジー複合企業だ」と紹介した上で、グループの子会社について「電子部品調達事業はElectronic Source(エレクトロニック・ソース)で、回路基板や電子機器の組み立てサービスを提供する製造事業はフォースEMSを通じて手掛けている。このほか、生産・流通事業では飲料自動販売機のタオビンを提供しているForth Vending(フォース・ベンディング)、トップアップ・支払いなどのさまざまな銀行取引が行える端末『Boonterm Kiosk』を提供しているForth Smart(フォース・スマート)がある。後者は今後、電気自動車(EV)充電器を提供する計画もある。この他、交通信号などを提供しているForth Traffic(フォース・トラフィック)、プライベートジェットのトレーディング事業のAero Forth(エアロ・フォース)などの傘下企業もある」と説明した。
そして現在、フォース・コーポレーションとフォース・スマートがタイ証券取引所(SET)に上場しているが、今後フォースEMSとフォース・ベンディングの2社も上場予定だとしている。
ミントラー氏によると、フォースEMSは、国内外の顧客向けに回路基板の製造と組み立てを行っている。1989年に設立されたフォース・コーポレーションは自社製造会社としてスタートした後、2019年に同社からフォースEMSが分社化され、現在は海外顧客に合わせた組織再編を行っている。主な顧客はエネルギーや通信、電子機器などの分野の企業だ。
フォースEMSは電子部品の製造と組み立てを一気通貫で行うワンストップサービスを提供している。電子回路基板組み立て(プリント基板組立:PCBA)、「ボックスビルド(Box Build)」、関連サービスなどだ。具体例としては、ハードウェア・ソフトウェア設計、ユーザーインターフェイス(UI)・ユーザーエクスペリエンス(UX)設計などのエンジニアリングサービス。そしてタイでの市場展開を希望する国内外の顧客向けのビジネス開発、生産拠点移転サービスなども手掛けている。
工場はナコンパトム県に、①第1工場(本社): 表面実装技術(SMT)とスルーホール技術による回路基板組立(PCBA)の製造、小型ボックスビルドなどの組み立て②第2工場:大型ボックスビルドの組み立て③飲料自動販売機タオビンの製造工場−の3つの工場がある。現在、タオビン製造工場の生産能力は1日当たり約40台だが、100台まで増強可能だ。
次に取締役兼最高事業開発責任者のニサー・アマターノン氏が「日本企業とのコラボレーションの機会」についてプレゼンテーションを行い、過去の協業の経験から、下記の3つの分野で可能性があると説明した。
⑴ 部品サプライヤー
電子回路基板(PCBA)などの製品や部品を工場に供給
⑵ 受託製造業者
生産拠点となり、エンジニアリングサービスや設計サービスなども提供
⑶ 合弁事業
タイでの生産拠点拡大に関心を持っている企業との共同出資により生産ラインを構築
ニサー氏はさらに、過去の協業の事例として、フォースEMSは中国からタイへの工場移転のケースをサポートしたと報告。移転前の工場の生産ラインを再現するだけでなく、プロセスやツールを改善した結果、新しい生産ラインは生産時間を少なくとも20%短縮し、3カ月で歩留まりを80%未満から99%以上に向上させることができたという。
また、フォース・コーポレーションとフォースEMSは日本の大手ガソリン計量機メーカーと提携し、EVトレンドに対応するEV充電器の共同設計・製造を行った。この事業ではフォースEMSが充電器と一緒に使用するアプリケーションの開発を含むハードウェアとソフトウェアの開発を担当している。
説明会終了後、参加者はタオビンの製造工場に移動し、製造と組立作業を見学した。タオビン自動販売機は、設置スペースが1平方メートルで200以上の飲料メニューを自動で作ることができる機械だ。内部には8000以上の部品が組み込まれている。例えばソーダや氷を作る装置、コーヒー豆を挽き、計量し、抽出するコーヒーメーカーなどだ。特に重要なのは、1杯のドリンクを作る際に、氷や粉末ドリンク、水などの材料についてすべての工程の計量をすることで、同じメニューなら何回注文しても同じ味になるように作られている。さらに、メニューをオーダーするタッチスクリーンは、インターネットにつながり、タブレットのように機能するため、コントロールセンターが材料の残量などをリアルタイムで確認できる。
タオビン自動販売機は、冷たい飲み物が大好きなタイ人の飲料文化に合わせて設計された非常に複雑な機械だ。フォース・コーポレーションがソフトの設計、ハード機器の製造を担当し、完成までに1年以上かかり、2021年に設置を開始した。マーケティング戦略としては、短期間に大量の機械を普及させ、最初の2カ月で一気に1000台以上を導入。現在、全国に約7000台があり、毎年2000~3000台増やす目標を掲げている。2024年には海外に輸出する計画もある。また、タイ人顧客の消費行動のデータを収集する調査チームを持っており、顧客行動の把握が容易になっている。例えば、タイ人に最も人気のある飲み物はソーダ類だ。また、将来的には関心があるブランドと協力し、タオビン自動販売機にマーケティング・キャンペーンや広告を出すなどのコラボレーションも可能だという。
TJRI編集部
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