ArayZ No.130 2022年10月発行始める前に確認したい M&Aタイ最前線
この記事の掲載号をPDFでダウンロード
掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。
カテゴリー: 自動車・製造業, ASEAN・中国・インド
公開日 2022.10.10
タイをはじめとするアジア各国で絶大な影響力を持つ財閥系コングロマリット。東南アジアを代表する企業の勢力図や経営方針の変化、RCEPを見据えた域内の競争力向上に向けての戦略などを解説していく。
今回は、タイの自動車ビジネスを牽引してきたSMG(サイアム・モーターズ・グループ)を紹介する。
業種: 自動車・レジャー 他
設立: 1952年
グループ会社: 64社(世界6ヵ国)
従業員数: 約2.3万人
総売上: 920億バーツ
SMG(Siam Motors Group)は、グループ全体で売り上げ920億バーツ(2022年見込み)、傘下に64社23,000人を抱える有力グループである。1952年の創業当初から自動車事業に携わってきたが、グループ拡大の契機は日産ビジネスの展開である。
62年に従来の販売代理事業だけでなく製造分野に参入。72年には王室御用達企業として前国王ラーマ9世よりガルーダエンブレムを賜与(しよ)され、その知名度は全国区に。
現在は観光・レジャーや不動産開発など事業の多角化を図り、日系企業では日産自動車や小松製作所、ダイキン工業、ヤマハ音楽、日立エレベーター、GSユアサなどと様々な協業を実施。また各社とのアライアンス関係はタイ、ミャンマー、ベトナムなどASEAN全域にわたり、製造業を軸に事業を拡大させている。
これまで自動車ビジネスを主とした製造業をバックボーンに成長してきたSMGであるが、創業70周年を迎えた今年、足元で大きな転換点に立っている。
その1つは電動化の推進である。現在のSMG傘下で21年に設立されたSiam Smart Solution(SSS)では、タイの主要産業である製造業の発展に向けた自働化ソリューションを提供。同社は自働化に関わる各種設備といったハード面と、設備や生産ラインにおけるITソリューションといったソフト面を両立させている。加えて、タイ人の若いエンジニアが中心となり、企画設計から立ち上げまでを通貫してすべて内製で行っている点も特徴である。
また、自働化に注力するグループ会社としてSiam Yamaha Motors Robotics(SYMR)が挙げられ、ヤマハ発動機との協業で農業サービスを提供している。こちらはタイの農業に対する自働化であり、ヤマハ発動機の無人ヘリコプターによる除草剤や殺菌剤、ホルモンや肥料などの空中散布を行うサービスプロバイダである。SMGではこれら2つの自働化を柱に、さらなる事業拡大を志向していく。
もう一つは、製造業偏重からの脱却である。なかでも不動産開発やレジャー分野などには積極的に投資を図り、多角化に努めている。なお多角化の歴史は意外にも古く、1966年にヤマハ音楽教室に感銘を受けた先代Thaworn氏が同事業を展開したことがルーツとなっている。タイ国内でSMGを知らない人は少ないが、そのイメージは日産車ビジネスか、Tata YangやBird Thongchai McIntyreといった名立たる歌手を世に輩出したヤマハ音楽教室かの2つに分かれるとも言われている。
一方で、タイ初のLPGAコースにも抜擢され、日本人を含めてアジアでも有数の人気を誇るゴルフ場Siam Country Club Pattayaを経営。現在はパタヤに4コース(Old Course、Plantation、Waterside、Rolling Hills)と、バンコク近郊に1コース(Bangkok)の計5コースを展開する他、デザインホテルやオフィスビルなども手掛けている。
SMGは今日2代目トップDr. Phornthep Phornprapha(73歳)を主とする経営体制を敷いているが、近年は次世代の経営陣育成を重点的に進めている。現在の主要人物としては、現会長の息子であるPrakasit氏であり、父からビジネスの継承について教わると共に、新規事業の多角化を推進。外部の人材も積極的に起用し、様々な事業における風通しを良くしている。自らで社会貢献活動も行っており、僻地の学校への製品提供やSiam Hitachiブランドのコワーキングスペースの建設といったESG活動にも積極的だ。
SMGとしても、信頼できる外部の人間を招聘(しょうへい)し、企業経営の質的な向上を図る動きも見える。
直近ではインフラ系Dextra社の最高財務責任者(CFO)だったSebastien氏をサイアムモーター社の副社長として抜擢。同氏は就任時、「エキスパートとネットワークが集約された企業としての成長を確信している。不確定要素が多く、物事が急速に変化する時代でも我々は共に力強く発展するだろう」とコメント。さらに、事業間の連携を強化するべく営業や製造など事業間の横串を通す組織構築にも取り組んでいる。
近年は、人事交流にも積極的である。SMG Manufacturing Clubの会長にはNBMT(NSKベアリング)の社長であるPoopol氏を、同じくSMG Sales Clubの会長にはSiam Music Yamaha社長のPerawat氏を抜擢している。Dr. Phornthepによると、これらの人事はグループ間の風通しを良くするという意図があり、連携に柔軟性を持たせてグループとしての一体感を増すことを狙いとしている。
ArayZ No.130 2022年10月発行始める前に確認したい M&Aタイ最前線
掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。
MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
Managing Director
池上 一希 氏
日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に入社、2018年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等に取り組む。
MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
ASEAN域内拠点を各地からサポート
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、 民間企業向けの各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援など幅広い事業を展開しています。
Tel:092-247-2436
E-mail:[email protected](池上)
No. 63 Athenee Tower, 23rd Floor, Room 5, Wireless Road, Lumpini, Pathumwan, Bangkok 10330 Thailand
タイのオーガニック農業の現場から ~ハーモニーライフ大賀昌社長インタビュー(上)~
バイオ・BCG・農業 ー 2024.11.18
タイ農業はなぜ生産性が低いのか ~「イサーン」がタイ社会の基底を象徴~
バイオ・BCG・農業 ー 2024.11.18
「レッドブル」を製造するタイ飲料大手TCPグループのミュージアムを視察 〜TJRIミッションレポート〜
食品・小売・サービス ー 2024.11.18
第16回FITフェア、アスエネ、ウエスタン・デジタル
ニュース ー 2024.11.18
法制度改正と理系人材の育成で産業構造改革を ~タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)のウィワット氏インタビュー~
対談・インタビュー ー 2024.11.11
海洋プラごみはバンコクの運河から ~ タイはごみの分別回収をできるのか ~
ビジネス・経済 ー 2024.11.11
SHARE