ArayZ No.143 2023年11月発行タイでイノベーションを巻き起こす日本発スタートアップ
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
公開日 2023.11.09
2023年10月9日に国家最低賃金決定委員会が最低賃金決定に関する通知 (国家最低賃金決定委員会2023年第2号通知。以下、「2号通知」という。)を発布した。これにより、当該通知日より1日8時間で5,800MMKという最低賃金が直ちに有効となった。従来は、2018年5月14日に国家委員会より日給4,800MMKとされていたため、約2割上昇した。 そこで本稿では、新最低賃金の決定過程、適用対象、最低賃金法上の罰則等について説明する。
古い最低賃金法(The Minimum Wages Act, 1949)を改正する形で、新たな最低賃金法が2013年3月22日に成立し、同年6月4日に施行された。同法の施行細則は2013年7月12日に成立した。本法は具体的な最低賃金額は定めておらず、最低賃金額の決定方法のみ規定している。具体的な最低賃金額については、2015年8月28日に日給3,600MMKとする旨の発表がなされていた。その後、2018年5月14日に日給4,800MMKに改定されて以降、5年以上改定されていなかった。なお、最低賃金法上は、最低賃金について2年に1回見直しを行う旨規定されている。
今回の最低賃金の増額について、最初に公務員の最低賃金を増額する旨の計画・財務省2023年70号通知が2023年9月30日に発布された。その後、2023年10月5日に最低賃金法上の最低賃金を5,800MMKに増額する国家最低賃金決定委員会2023年第1号通知が発布された。しかし、その4日後の同月9日に、国家最低賃金決定委員会2023年第1号通知(以下「1号通知」という)を破棄し、新たに同様の内容を規定する2号通知が発布された。1号通知と2号通知の違いは、従業員10名未満の中小企業及び家族企業を適用対象外とする旨を明記しているか否かのみである。
(1) 2013年最低賃金法第10条(d)に基づき、「ミャンマーの労働者は、場所や業種に関係なく、全国一律で1日(1日8時間)あたり時給600MMKの率で4,800MMKを支払わなければならない」という最低賃金の率について、連邦政府の承認を得て、2018年5月14日付2018年通知第2号により審議・決定された。
(2) 計画・財務省は、2023年9月30日付通知第70/2023号により、政府機関の日雇い労働者の賃金は、1日8時間労働の場合、現行の規定最低賃金4,800MMKに1,000MMKの追加手当を支払うことにより、5,800MMKとすることを通知した。
(3) したがって、2013年最低賃金法第10条(d)に基づき、「ミャンマーの労働者は、場所や業種に関係なく、全国で1日(1日8時間)当たり時給600MMKの率で4,800MMKを支払わなければならない」という最低賃金規制については、2023年10月1日より、追加手当1,000MMKを含め、最低賃金は5,800MMKとなる。
(4) 本規制は、従業員10名未満の中小企業および家族企業には適用されない。
2023年10月5日付1号通知は、本通知により廃止される。
最低賃金法に基づき定められた最低賃金を下回る賃金を使用者は支払ってはならない。当該最低賃金を支払わない使用者は、罰則として、1年以下の懲役又は50万チャット以下の罰金、若しくはその両方が科せられる。そのため、「賃金」の定義が非常に重要となる。この点、基本給与に加え、時間外労働手当及び賞与が含まれる旨規定されている。他方、交通手当、住居手当、食事手当、医療手当、チップ等は含まれない。2023年10月1日以降は新たな最低賃金以下の金額を支払うことは違法になるため、すべての企業にとって留意が必要となる。
なお、2023年10月15日付の国営紙Global New Light of Myanmarは、時間外労働に関して「日給4,800MMKに変更なし。労働者の最低賃金は8時間労働で1日4,800MMKに据え置かれ、1,000Kの手当が追加される。残業代は、労働省の定めに従い、引き続き4,800MMKで計算される。」との記事を掲載している。この根拠について労働省の職員に問い合わせたところ、2号通知(3)において「追加手当1,000MMKを含め、最低賃金は5,800MMKとなる」と規定していることが根拠となるとの回答を得た。
したがって、基本給は4,800MMKのままであり、1,000MMKは手当として追加される形と解される。
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