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公開日 2026.10.02
タイの自動車産業はいま、電気自動車(EV)普及の次の段階へ入りつつある。政策の軸が「EVを増やす」から「タイ国内に生産・部品調達・雇用を残す」方向へと舵を切るなか、日系・タイ・中国系の各プレイヤーは、次の一手をどう描くのか。THAIBIZは9月17日、タイ電気自動車協会(EVAT)と共催で「第7回 日タイ企業交流会」を開催。タイ投資委員会(BOI)や自動車業界の最前線に立つプレイヤーとともに、変わるタイ自動車産業の現在地を探った。

EVシフトや中国系メーカーのタイ進出によって、自動車産業の競争環境やサプライチェーンが大きく変わるなか、日系・タイ系企業にはどのような商機があるのか。新たなプレイヤーを競争相手として見るだけでなく、協業や新たな機会につなげられないか。こうした可能性を探ることを目的に開催したのが「第7回 日タイ企業交流会」だ。
タイでは自動車物品税制度改正の発表が待たれるなか、この日はタイ政府からBOI、EVAT、中国メーカーである長安汽車(CHANGAN)、Tier1を代表するデンソー、タイ部品企業のタイ・メタル・アルミニウム、日本発のスタートアップSpatial Pleasureが集結。それぞれの立場からタイ自動車産業の現在地と今後について議論した。
冒頭では、BOIの投資促進局第2部長、ヴォラワン・ノラスチャー氏が、タイ政府によるEV産業振興策や自動車部品産業への投資支援について解説した。
EVの普及促進だけでなく、国内のサプライチェーンをどのように強化していくのかも重要なテーマとなっている。BOIは現在、自動車部品分野でタイ企業と外国企業による合弁事業(JV)を促す措置も設け、一定の条件を満たした案件には追加の法人所得税免除を付与している。
続いてEVATの名誉顧問、クリサダー・ウッタモード氏が、東南アジア各国のバッテリー式電気自動車(BEV)市場を比較しながらタイ市場の現在地を紹介。EV市場が拡大する一方、メーカーの生産・販売計画にも大きく関わる政策動向について説明した。

今回、特に参加者の関心を集めたのが、長安汽車(CHANGAN)タイランドの政府業務部マネジャー、アッタウィット・テーチャウィブーンウォン博士による講演だ。
同博士は、「BEVへの移行によって減少する部品」「引き続き必要となる部品」「新たに需要が生まれる部品」を整理。タイ国内のサプライチェーンがどう変わり、既存のサプライヤーにどのような機会が残されているのかを説明した。

Q&Aでは、参加者から「長安汽車はタイ・日系サプライヤーにも門戸を開いているが、実際には中国サプライヤーとの価格競争で苦戦するケースも多い。なぜなのか」と踏み込んだ質問も寄せられた。
これに対し同博士は、単純な人件費の差ではなく、設備や金型の減価償却、生産性、受注時の業務効率などを挙げた。また、一部のサプライヤーは、初回ロットにおいて最安値を提示、原価と同等の価格で販売して入札を勝ち取り、将来的に生産量が拡大した段階で利益を回収するという戦略もあるという。こうしたタイ・日系企業と中国企業のビジネスモデルの違いについて、OEM側から率直な見方を示した。
続くパネルディスカッションには、デンソー・インターナショナル・アジアの上級副社長を務める末松正夫氏とタイ・メタル・アルミニウムのスパット・ラタナシリウィライ氏が登壇。既存のプレスやダイカストなどの製造技術をEV向け部品へどう生かすか、中国メーカーのスピードにどう対応するかなど、部品メーカーの今後について意見を交わした。

末松氏は、中国企業の強みとして「スピード」「市場を見る力」「ソフトウェアの活用」「競争への執念」を挙げる一方、日系企業にもそのスピードは学ぶことができると強調した。「品質とものづくりの基盤を持ちながら、考え方を中国に合わせていくことが必要だ」と、日系企業に変化を促した。
また、中国メーカーとの協業がどこまで広がるかは、タイ政府が今後どのような規制を設計するかにも左右されるとの見方を示した。日系Tier1がタイのTier2・3企業を束ね、中国系OEMとの「橋渡し役」を担う可能性も含め、会場ではタイ・日本・中国がどう共存していくのかについて率直な議論が交わされた。
後半では、視点をEV化に必要な人材と、新たな収益機会へと広げた。EVATの学術委員会委員であるチャナー・ヤーンカムーンシン助教授は、EVの普及には充電設備だけでなく、高電圧システムを扱える技術者や整備士といった「人的インフラ」の整備も欠かせないと指摘。今後、部品製造の現場を含めたEV人材の育成が重要になるとの見方を示した。

また、日本発スタートアップSpatial Pleasureの最高経営責任者(CEO)、鈴⽊綜真氏は、EV化によって削減された二酸化炭素(CO2)をカーボンクレジットとして収益化する取り組みを紹介。EVへの移行が、車両や部品だけでなく、人材、充電、環境価値など新たなビジネスにも広がっていることが示された。
講演終了後には、登壇者や参加者同士による国を越えた意見交換が行われただけでなく、日・タイ・中の参加企業による事前マッチング制の個別商談会も実施。より実効性の高いビジネス共創・パートナーシップの創出を目指す機会となった。
参加者の声 ・末松氏の話はまさにその通りで、今後のわれわれ日系企業の方向性について、改めて理解が深まりました。政府の関税に関する決定事項に引き続き注目したい。(製造・商社)・今後の生き残りを模索するなか、ひとつの示唆が得られました。(自動車部品メーカー)
THAIBIZでは、今回のオンサイトビジットのように日本企業・タイ企業への訪問イベントや勉強会を今後も開催予定です。THAIBIZ Connectにご加入いただくと、THAIBIZイベントに無料で何度でもご参加いただけます。本サービスにご関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / プレオプロイ・スワンマラ / 和島美緒

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