高級日本車からZEEKRへ―タイの富裕層が選ぶプレミアムEV、現場訪問レポート

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高級日本車からZEEKRへ―タイの富裕層が選ぶプレミアムEV、現場訪問レポート

公開日 2026.09.18

2021年のブランド発表以来、世界で急成長を遂げてきた中国発のプレミアムEVブランド「ZEEKR(ジーカー)」。2024年7月に正式参入したタイ市場でも存在感を高めている。実際にどのようなタイ人がZEEKRを選び、なぜこれまで乗っていた日本車や欧州車から乗り換えているのか。 

タイビズは9月10日、ZEEKRの販売・アフターサービスを担う「ZEEKR House Charoen Nakorn」を訪問。同拠点を運営するTPMグループのユタナ・ルタイワッタナ社長ナルドン・タナスティポーン最高執行責任者(COO)、ジーカー・インテリジェント・テクノロジー(タイランド)のアレックス・バオ社長が登壇し、顧客データや販売戦略、タイ人富裕層の購買行動について解説。参加者は経営陣からの話で理解を深めた後、販売・アフターサービスの現場を視察した 。

中国・欧州の技術を融合、購入の決め手は「安全性」

今回のオンサイトビジットでまず紹介されたのが、ZEEKRのブランド戦略だ。

アレックス社長によると、ZEEKRは中国自動車大手の浙江吉利控股集団(吉利、ジーリー)が2021年に立ち上げたプレミアムEVブランド。「中国・欧州ハイブリッド」をコンセプトに、プレミアムEV市場の開拓を進めている。

ジーリーは過去10年間で研究開発(R&D)に2,000億元以上を投じており、ボルボ・カーズの筆頭株主でもある。中国発の高速充電などの電動化技術と、欧州基準の安全性能を融合させている点がZEEKRの強みだという。 

その「安全性」は、タイの消費者がZEEKRを選ぶ理由にも表れている。昨年3月からZEEKRの正規代理店となったTPMグループの調査では、購入を決める要因として「安全性」が最も多く、次いで「性能」、「室内空間の広さ」と続いた。

アレックス社長(左)、ナルドン氏(中央)、ユタナ社長(右)

アルファードの販売減から見える市場の変化

現場で聞けるからこそ分かる市場の変化も、今回の見どころの一つだった。

TPMグループはZEEKRだけでなく、トヨタ「アルファード」の販売も手がけている。ナルドン氏によると、以前はアルファードを月平均60~70台販売していたが、現在は30台前後まで減少。一方、プレミアムEV「ZEEKR 009」への需要は右肩上がりで伸びているという。

同氏は、タイでEVが普及し始めた2023年当時には「EV比率は3%を超えないだろう」との見方もあったと振り返る。しかし現在は30%近くまで上昇しており、消費者のクルマに対する趣味や関心が明らかに変化していると指摘した。

では、ZEEKRを選んでいるのは、どのような顧客なのか。

購入者の半数以上が中小企業オーナー

TPMグループの顧客データによると、ZEEKR購入者の半数以上を中小企業オーナーが占めるほか、経営層・専門職も多い。 4割以上が現金で購入していることから、富裕層が主要な顧客層であることがわかる。 

乗り換え前の車を見ると、BMWやメルセデス・ベンツなどの欧州プレミアム車が最も多く、トヨタ、ホンダ、マツダなどの日系プレミアム車からの乗り換えも一定数ある。これまで欧州や日本のブランドを選んできた顧客が、ZEEKRに流れている実態がうかがえた。

値下げではなく「体験」で顧客をつかむ

なぜこうした顧客がZEEKRに乗り換えるのか。その背景として紹介されたのが、タイ市場に合わせた販売戦略だ。

例えば、「ZEEKR 009」をインターナショナルスクールの前に展示。子どもの送迎を待つ保護者に、エンジンをかける必要がなく、エアコンを効かせたまま車内で待てるEVの利便性を訴求するなど、タイの生活スタイルに合わせた販売施策を展開している。 

また、家族でラオスまでドライブするイベントなど、購入後の顧客を対象としたコミュニティー活動も積極的に実施。ユタナ社長によると、こうした取り組みを通じて、2台目、3台目としてのリピート購入や、既存顧客からの紹介も生まれているという。 

購入のきっかけとなったチャネルを尋ねた顧客アンケート(複数回答可)では、「ショールームへのウォークイン」が最多だった。

「ウォークインで訪れたお客様の心をどうつかむかが重要。値下げができない分、他ではできない『体験』の提供に重きを置いている」。ナルドン氏がそう語るように、ZEEKR House Charoen Nakornには、単に車を展示・販売するだけではない仕掛けが用意されていた。

なお、当日のオンサイトビジットでは、顧客属性や乗り換え動向、リピート購入率、顧客アンケート結果等について、参加者に具体的な割合を含む詳細なデータが共有された。

「車を買う場所」から「顧客が集まる場所」へ

施設内には、レストランやネイルサロン、マッサージ店、商談用のVIPルームを設置。さらに、定期点検・整備や板金塗装などのアフターサービス機能、充電設備も備え、販売後まで一貫して顧客をサポートする体制を整えている。

参加者は実際に施設内を見学し、アフターサービスの現場も確認した。ナルドン氏によると、同施設には月約200台の修理オーダーが入るが、わずか4人の整備士が中心となってアフターサービスを提供している。 施設の地下や近隣の試乗場には、修理を待つ車両がずらりと並んでいた。

販売からメンテナンス、充電までを一つの拠点に集約することで、顧客との接点を購入時だけで終わらせない。ショールームそのものを、顧客が継続的に訪れる場所として活用していることが明らかになった。

施設内見学の様子

中古EV市場に広がる日系企業との協業機会

当日は、新車販売だけでなく、中古EV市場についても具体的な課題とビジネス機会が紹介された。

ユタナ社長によると、中古EVは現在、ローン審査の面で課題を抱えている。リセールバリューやバッテリー劣化への懸念から金融機関の審査が厳格化しており、頭金として最大50%を求められるケースもあるという。

こうした課題に対し、TPMグループは現在、タイ国内でバッテリーの状態を検査・認証する「バッテリー再生センター」の設立に向け、日本企業と協議を進めている。

さらに、保険業界のパートナーとも連携し、「バッテリー保証延長」といったサービスの共同開発も模索している。

現場を歩いて見えてくる、次のビジネスチャンス

今回のオンサイトビジットでは、実車の試乗や登壇者との質疑応答、名刺交換も行われ、参加者同士でも活発な交流が行われた。

中国発EVがなぜタイの富裕層に売れているのか。そこには、車そのものの性能だけでなく、タイの生活スタイルに合わせた販売戦略や、購入後も続く顧客との関係づくりがあった。

実際の販売現場を見て、経営者の話を直接聞き、さらに参加者同士で意見を交わす。公開データやニュースだけでは捉えきれない市場の変化と、そこから生まれるビジネス機会を体感できることが、THAIBIZオンサイトビジットの大きな特徴だ。

試乗の様子

参加者の声 ・中国ブランドの動きを意識している当社にとっては、正に当事者から話を聞ける良い機会となりました。(中略)待ち時間に細かい質問をさせていただき、色々とベンチマークすることが出来ました。ー自動車メーカー ・当社も現在、(中略)安全性や信頼性という本質的価値を評価していただける富裕層・ミドルハイ層をターゲットとする戦略を検討しているため、今回の「顧客への価値体験の提供」や「富裕層の購買行動に沿った接触点の作り方」は、まさに今後の事業展開・マーケティング設計への大きな気づきと確信につながりました。ー産業機器メーカー

THAIBIZ Connectについて

THAIBIZでは、今回のオンサイトビジットのように日本企業・タイ企業への訪問イベントや勉強会を今後も開催予定です。THAIBIZ Connectにご加入いただくと、THAIBIZイベントに無料で何度でもご参加いただけます。本サービスにご関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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