「日本好き14万人」が集まる場所で、ビジネスを仕掛けるー日本博ビジネスエリア開催報告

THAIBIZ No.178 2026年10月発行

THAIBIZ No.178 2026年10月発行自動車激変時代に光る、マツダの「信頼経営」

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「日本好き14万人」が集まる場所で、ビジネスを仕掛けるー日本博ビジネスエリア開催報告

公開日 2026.10.09

「日本を好きなタイ人」に、日系企業の魅力をもっと伝える場をつくれないか―。そんな発想から、今年の「バンコク日本博」に初めて設けられた「ビジネスエリア」。3日間の取り組みを通じて、どんな場が生まれたのか。その一部を紹介する。

文化交流から、ビジネス交流へ

株式会社ジェイエデュケーションの長谷川卓生氏が実行委員会代表を務めるバンコク日本博は2015年の開始以来、日本文化や日本の魅力をタイの人々に届けるイベントとして成長を続けてきた。2017年の来場者数9万7,000人に対し、今年は約14万人が来場。出展団体数は319、出展ブース数は473に達した※。

会場には毎年、日本に関心を持つタイ人が数多く訪れる。こうした層と日系企業をつなぐ新たな接点として、THAIBIZを運営するMediatorが今年初めて企画・設置したのが「ビジネスエリア」だ。

「日本が好き」という興味を、「日本の商品・サービスを知る」「日系企業との協業機会を考える」「日本企業で働く」という次のアクションにつなげる。それが今回のビジネスエリアが目指した役割だった。

※参考:バンコク日本博Facebook

日タイのビジネスリーダーが集結した「トークステージ」

ビジネスエリアの中心となったのが、経営者や専門家らが登壇する「トークステージ」だ。自動車、人材マネジメント、マーケティングなど、タイで事業を展開する企業に関連するテーマを幅広く取り上げ、活発な議論が交わされた。

BJCのCEOが登壇した日本博トークセッション

1日目には、「トヨタはタイに残るのか」をテーマに、日本経済新聞社の赤間建哉氏が登壇。今年8月、インドネシアの財務相がトヨタに対し、東南アジアの主要生産拠点をタイからインドネシアへ移すよう呼びかけたことを受けた議論だ。

赤間氏は、タイの政府関係者から「トヨタはタイから撤退するのか」と尋ねられたことを明かす一方、「(撤退は)当面ないと思う」との見方を示した。その上で、「タイが自動車産業を残す気があるのなら、これまで日本メーカーが訴えてきた政策上の要望に耳を傾けるべきだ」と指摘した。

2日目のハイライトは、タイ大林、タイ・ヤマハモーター、博報堂インターナショナル(タイランド)のタイ人最高経営責任者(CEO)が登壇したセッションだ。各CEOのキャリアにおける転換点やキャリア構築、日本人の緻密さとタイ人の柔軟性をつなぐ「ブリッジング・テクニック」の秘訣などについて、それぞれの経験をもとに議論が交わされた。

博報堂インターナショナル(タイランド)のグループCEOであるジラパット氏は、「日本とタイに関心を持つ消費者が集まるこの場所は、生きた情報やインサイトを得られる貴重な情報交換の場となっている」とビジネスエリアを評価した。

新たな生活者との接点も創出

続く3日目には、ケンサク、新道らぁ麺、ゆずグループのトップが登壇。本格的な食材や日本の食文化、地域性など、日本ならではの価値をどのようにタイ市場に伝えていくのか、それぞれの現場から語った。

議論では、タイの日本食市場が成熟する中、今後の成功には品質だけでなく、独自の「センス」や「信頼」が重要であるとの認識が共有された。登壇者による熱のこもった議論に、会場も大いに盛り上がった。

また、「日本流マーケティングの深層」と題したセッションでは、タイ市場で長年親しまれている日本ブランド、カルビータナワットとハウスオソサパフーズのタイ人マーケティング責任者が登壇。単に日本の製品をタイへ輸出するのではなく、現地の文脈に合わせて柔軟に「調整」する力こそが、ブランドを長く存続させる鍵になると強調した。

同セッションでは、ハウスオソサパフーズが展開するビタミンC飲料「C-vitt」の無料配布も行われた。来場者に商品を実際に手に取ってもらうことで、ブランドの認知拡大につなげる。トークステージが、企業同士の情報交換だけでなく、新たな生活者との接点となることを示す一例となった。

「見る」だけではない。来場者と対話ができる場も

ビジネスエリアのもう一つの特徴は、セッションを聞くだけで終わらないことだ。今回は、サイアム・ニッサン・セールス(日産)、トヨタ・モーター・タイランド(トヨタ)、東レ・タイランド(東レ)が同エリア内にブースを出展。多様な来場者と直接会話を交わしながら、製品や事業について知ってもらう機会となった。

なかでもひときわ来場者の目を引いたのが、トヨタのブースだ。展示されていた「EV CAMPER TRUCK」は、冷房やベッド、冷蔵庫などの家電に加え、シャワーやトイレまで備えたアウトドア用のトラック。スマートフォンで動画を撮影し、SNSなどで発信するタイ人来場者の姿も見られ、注目の高さがうかがえた。

出展担当者はTHAIBIZ編集部に対し、「トヨタの車を使って、さまざまなライフスタイルを実現できることを伝えたい。サステナブルな取り組みをPRすることもできたため、さらに進化させて来年も出展したい」とコメントした。

日本博トヨタブースのEV CAMPER TRUCK

日産では、「100%電気モーターで駆動し、ガソリンを電気に変えて走行する」という独自技術を用いた「e-POWER」を展示。担当者は、「加速感や静粛性などのフィーリングは電気自動車(EV)と同じでありながら、充電を待つ必要が一切ない。EVとガソリン車の長所を組み合わせた新しい選択肢だ」と紹介した。

「日頃からSNSを通じて発信はしているが、やはりこうしたイベントを通じて、実際に技術や車を見てもらうことが、顧客の信頼や関心を高める上で非常に有意義だと実感した」と語った。

BtoB企業である東レもブースを出展した。同グループは60年以上にわたりタイで事業を展開してきた歴史ある企業だ。担当者は、「今回、一般生活者に向けてもPRする機会を得られて非常に嬉しい。グループとしてタイ社会に貢献していることを、より多くの人に知ってもらいたい」とコメントした。

ビジネスエリアの様子は、タイで大きな影響力を持つ現地メディア「ザ・スタンダード」でも発信され、多くのタイ人に伝えられた。今回の試みを通じて見えてきたのは、タイ向けのPR機会を積極的に活用し、日本企業の魅力をより広くタイに伝えることが、日本企業のプレゼンスを高める上でも重要だということだ。「自社の事業やサービスは、タイで正しく認知されているだろうか」。まずは、そう自社に問いかけるところから始めてみてほしい。

ビジネスエリア登壇・出展団体(順不同)

日本経済新聞社 / 日経BP / 日経Gaming / 三菱電機FA / BJC / アユタヤ銀行 / カルビータナワット / ispace / JAXAバンコク駐在員事務所 / タイ大林 / タイ・ヤマハモーター / 博報堂インターナショナルタイランド / ジャパン・サラリーマン・グループ / アイリスオーヤマ(タイランド) / ワークベンチャー / サントリー・ペプシコ・ビバレッジ(タイランド) / サイアム・トッパン・パッケージング / ユニ・チャーム / タイ・グリコ / ワン・バンコク三越 / ティアウ・イープン / ドリーム・エクスプレス / カネボウ化粧品(タイランド) / ハドラス / ネイチャーニクス / INSTED / ケンサク / 新道らぁ麺 / ゆずグループ / クオリティ・エクスプレス / ニコン・セールス(タイランド) / ゴー!グラフ・ジャパン / デュシット・インターナショナル / ハウス・オソサパ・フーズ / チュラーロンコーン大学ビジネススクール / TOWING

バンコク日本博の様子をレポートしたTHAIBIZのYouTube動画は、28万回以上再生されています。会場の熱気やビジネスエリアの様子を、ぜひ動画でもご覧ください。

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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