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カテゴリー: ニュース
公開日 2026.09.25
タイでピアノや鍵盤楽器に強みを持つヤマハが、若者のバンド活動を通じて楽器需要を育てようとしている。タイのサイアム・モーターズ・グループとヤマハの合弁会社、サイアム・ミュージック・ヤマハは7月から、日本発の高校生バンド大会「We are SNEAKER AGES(スニーカーエイジ)」をタイで初めて開催している。
音楽を楽しむ若者のコミュニティーを形成し、将来の顧客と市場をつくる長期投資と位置付ける。【Sirawit Kerdsinchai】

スニーカーエイジは1979年に関西で始まった、高校生を中心にした軽音楽部の大会。三木楽器(大阪市)などが主催し、ヤマハも協力する。2021年には全国大会に発展し、23年からは台湾も参加している。
タイ大会はスニーカーエイジの海外展開の一環となる。対象は、日本の中学校・高校に当たる中等教育課程に在学中の生徒で、各校1組が参加できる。
7~9月にかけてタイの北部・東北部・中部・南部・首都バンコクの各地域からバンドを選抜し、10月10日に国内決勝を実施する。優勝組は大阪で12月27日に開催される日本の全国大会でエキシビション演奏に参加できる。
賞金総額は150万バーツ(約725万円)超で、バンドへの賞金や賞品だけでなく、所属校に対してもヤマハの楽器を購入できる商品券を贈り、校内の音楽活動を支える。
サイアム・ミュージック・ヤマハでマネジングディレクターを務めるピーラワット・チューキアット氏はNNAの取材に対し、「この大会を通じて、市場の需要をできる限り生み出したい」と説明する。同社は、投資を短期的な費用と、同社製品やサービスの認知向上、顧客基盤や音楽コミュニティーの形成につながる長期的な施策に分けて考える。今回の大会は後者に当たる。
若者が音楽を始め、仲間とバンドを組み、学校や地域にコミュニティーが育てば、楽器や周辺機器への需要も持続するとの見方だ。タイ大会への参加は約500組を見込んでいる。
三木楽器グループでイベント企画運営を手がけるミキ・ミュージック・ミライは日本で培った大会運営のノウハウを提供する。大会に協力するタイ教育省傘下の基礎教育委員会(OBEC)は、管轄する公立学校への周知を担う。タイの流通大手セントラル・グループの商業施設開発・運営会社セントラル・パタナー(CPN)は、バンコク中心部の商業施設「セントラル・ワールド」を会場として提供する。
タイ大会は才能発掘の場としても期待されている。昨年タイ拠点を開設した芸能事務所大手のアミューズも大会に協力し、参加者の中から将来性のある人材を見いだしたい考えだ。

鍵盤以外の市場狙う
大会の背景には、ヤマハの製品分野ごとのブランド力の差がある。サイアム・ミュージック・ヤマハの伊藤暢英副社長によると、同社はタイのピアノや鍵盤楽器市場で高いシェアを持つ。一方、ギターやドラムには多くの競合ブランドがあり、シェアを伸ばす余地が大きいという。
「ピアノといえばヤマハを最初に思い浮かべてもらえるが、ギターというとそうではない」。伊藤氏は、バンド活動人口を増やす中で、若者に自然な形でヤマハ製品を知ってもらい、将来の購入へつなげたいと説明する。
大会ではエレキギターやドラムセットなどヤマハの楽器を使うことを基本とし、楽器を持たない参加者には同社が貸し出す。参加者に実際に製品を使ってもらい、若年層との接点を増やす。
若者とデジタルが市場けん引
インドのグローバル市場調査会社6WリサーチはNNAに対し、「タイの楽器市場は25年に6,780万米ドル(約110億円)規模だったと推計している」と説明した。ピアノやキーボード、ギター、打楽器、管楽器、弦楽器などの完成品を対象とした推計値で、26~32年は年平均4.3%で成長すると予測する。
25年のタイ市場で最大手のブランドはヤマハで、ローランド、フェンダー、カシオ、ギブソンが続く。主な需要層は若年(15~26歳)と成人(27~42歳)。若年層では入門用のエレキギターやベース、ポータブルキーボード、電子ドラム、録音機器などの需要が大きい。
6Wリサーチはタイの楽器市場の特徴として、タイ生まれのポピュラー音楽「T―POP」など活発な国内音楽文化と、充実した音楽教室網が需要を支えている点を挙げる。需要はバンコクなどの都市部に集中し、デジタル志向も強い。
電子ピアノや電子ドラムなど、コンドミニアム(分譲マンション)暮らしに適した省スペースでヘッドホンを使える製品が支持されている。動画配信や個人による音楽制作の広がりも、USBやMIDI(電子楽器の共通規格)対応楽器や自宅録音機器の需要を支えている。
一方、高水準の家計債務や所得成長の停滞から、プロ向けギターやシンセサイザーなどの高額製品の購入は先送りされやすい。輸入依存度が高く、為替変動や低価格輸入品との競争も成長の制約となる。
こうした環境下では、音楽コンテストが音楽教育への参加を促し、楽器の新規購入や上位機種への買い替えを後押しするとみられる。製品実演の場として販促効果があるほか、若年層のブランド認知向上にもつながるという。
少子化下でも若者に照準
タイでは少子化が進み、若年層の市場は縮小する。ただ、ピーラワット氏は「大会は全ての子どもを対象にする必要はない。音楽への情熱を持つ若者に届けばよい」と強調する。現代の若者は上の世代と異なり、音楽関連の情報を得やすく、独学もしやすい。こうした環境も、潜在的な音楽人口の掘り起こしを後押しするとみている。今後は大会を若者の音楽人口拡大につなげ、鍵盤楽器以外でもブランド力を高められるかが焦点となる。

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