カテゴリー: 対談・インタビュー, 自動車・製造業, DX・AI
公開日 2024.12.26 Sponsered
競争が激化するタイ製造業において、過剰在庫によるキャッシュフローの悪化に頭を悩ませている経営者も少なくないだろう。この課題解決に挑むべく、野村総合研究所(NRI)は、ゴールドラットジャパンとタッグを組み、実需要に基づく革新的な在庫最適化ソリューションの提供を開始した。今回は、タイ製造業が直面するサプライチェーンの課題と、その解決策について、NRIタイの橋本秀勝氏とスパワディ・イェンスパパーノン(サン)氏に話を聞いた。
目次
NRI Consulting & Solutions (Thailand) Co., Ltd.
◎橋本 秀勝 氏
Group Manager, Industrials Strategy & Transformation Consulting Group
早稲田大学卒業後、日系大手通信会社にて商品企画や欧州の子会社管理等に従事。タイ駐在時にマヒドン大学大学院にてMBA修了。その後、外資系のコンサルティング会社にて通信系アカウントを担当した後、NRIタイに入社。製造業の戦略立案から、現場改善・DX推進まで幅広く実行支援をするIndustrial Strategy and Transformation Groupのグループマネージャーを務める。
◎スパワディ・イェンスパパーノン(サン)氏
Consultant, Industrials Strategy & Transformation Consulting Group
チュラロンコン大学工学部を卒業後、日系製造業にて生産管理に従事。その後、早稲田大学院への進学・MBA修了を経てNRIタイに入社。事業会社での経験を活かし、現場に密着したコンサルティングを実施。NRIグローバル拠点の中で最も「制約理論を使った在庫適正化」について知見・経験を有し、タイでのプロジェクト経験をグローバルに発信している。
タイ製造業が直面するサプライチェーンの課題について、橋本氏は「コロナ禍にサプライチェーンの分断で部品調達や製品供給の不安定化が顕著となり、多くの企業が安全在庫の確保を余儀なくされた」とした上で、現在は「その過剰在庫の解消が新たな課題として浮上している」と指摘した。
その原因の一つに、「昨今の中国経済の停滞による中国国内の需要低下により、価格競争力のある中国製品がASEAN市場へ大量に流入していることが挙げられる」と説明。また、米中対立の影響で、中国企業のASEAN進出も加速しており、製造拠点をASEANに移転し、そこから米国に輸出するという新たな貿易の流れも生まれている。中国企業による多額の投資は現地での雇用創出にもつながり、ASEANにおける中国企業のプレゼンスと競争力は着実に向上している一方で、既存のサプライチェーンは苦戦を強いられている。
このような環境下で、在タイ日系企業が利益を維持しつつ競争力を高めるためには、「在庫の適正化でキャッシュフローを改善し、限られた資金をより戦略的に活用し、儲けを生む構造に転換していくことが必要だ」と橋本氏は強調する。なぜなら在庫は売ることができなければ、現金化できない資産だからだ。
こうした課題に対し、NRIは制約条件の理論(Theory of Constraints、以下「TOC」)に基づき在庫最適化を実現するソフトウエア「Onebeat」の提供を新たに開始した。TOCは、1984年に出版された「ザ・ゴール」の著者であり、物理学者のエリヤフ・ゴールドラット博士が開発した全体最適のマネジメント理論である。具体的には、一部の工程だけに最新技術を導入するような部分最適の改善ではなく、会社全体のスループット(真の利益)に着目し、ボトルネックを特定・改善することで全体最適を実現する考え方だ。
橋本氏は、従来の生産計画における需要予測について、「コロナ禍前後でのデータの非連続性や気候変動による予測困難性、消費者動向や競合他社の動きなど、需要に影響を与える要因の複雑化により、予測精度の向上には限界がある」と指摘する。
これに対し、TOCに基づきAIアルゴリズムを活用したOnebeatでは、実需要に基づくアプローチを採用している。まず過去データから適正在庫を設定し、その後は実需要に合わせて適正在庫数を保つように生産を行う。さらに、この適正在庫数は実需要の変動に応じて単品ごとにリアルタイムで最適化し続ける仕組みである(図表1)。
製造業では、設備稼働率の最大化によるコスト効率の追求が重視されてきたが、この理論では往々にして過剰生産を招き、倉庫の圧迫やキャッシュフローの滞留を生んできた。同ソリューションは、この「コスト効率と在庫最適化のジレンマ」に一石を投じる。「予測は必ず外れる」という前提に立ち、精度の低い未来予測へ依存するのではなく、実需要に基づく生産により、欠品による販売の機会損失を防ぎながら、全体最適の観点から在庫を適正化する。これによりキャッシュフローの滞留を防ぎ、戦略的な投資などに資金を確保することで、経営改善を図るのだ。
NRIタイでは今年からサービスを提供しており、すでに日系製造業への導入プロジェクトが始まっているという。同プロジェクトを担当するサン氏は、「導入企業では、システム計算上では61%の在庫削減が可能との試算が出ており、在庫の最適化が進めば、金額にして7億8,400万バーツ(約35億円)相当のキャッシュフロー改善につながる」と明かした。同ソリューションは、特に品目数が多く、生産数にバラつきがある場合に効果が出やすく、早ければ3週間程度で改善効果が出はじめるという。
NRIはグローバルに拠点を持ち、現地に精通したコンサルタントがクライアント企業を支援できる体制が整っている。タイにおいては、TOCを製造現場に落とし込んだ支援ができる唯一のコンサルティングファームである。さらに、単なるシステム導入に留まらず、新しい在庫管理システムの考え方の整理から、既存システムとの連携方法の検討、オペレーションの確立まで、顧客の不安要素を一つ一つ取り除いて、効果が実証されるまでの包括的なサポートを提供し、成果にコミットしている。
同ソリューションは短期間での導入が可能で、導入前に無料シミュレーションを行えるのが特徴だ。シミュレーションを行うことで、在庫削減や財務効果の確認が可能なため、自社に必要なソリューションかどうかを事前に判断できる。在庫管理やオペレーション効率化に少しでも課題を感じているなら、まずは無料シミュレーションでどれくらいのインパクトがあるか試してみる価値があるといえる。
NRIタイは2024年12月6日、Hotel Nikko Amata City Chonburiにて、日系製造企業を対象にサプライチェーンマネジメント(SCM)を、企業の稼ぐ力につなげるための知見と実例を伝えるセミナーを開催した。
同セミナーでは、製造業が激しい競争環境下において直面するSCMの課題や在り方についての解説の後、「儲けのクリエイター」の異名を持つサイエンティスト、ゴールドラットジャパンのパートナーの飛田基氏をゲストに招き、企業が抱える在庫適正化の実現における課題に対し、「『The Goal』流:複雑化する事業環境を競争力の源泉に変える、在庫管理の魔術」をテーマに、TOCの考え方や実践・効果が紹介された。
またセミナー後半では、事例をもとにどのように在庫適正化を実現していくのか、「Onebeat」の仕組みや導入効果を解説し、製造業にとって喫緊の重要課題である在庫適正化について考える機会となった。
●セミナー風景
野村総合研究所タイ
担当者:橋本 秀勝(Hidekatsu Hashimoto)
E-mail:[email protected]
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