THAIBIZ No.157 2025年1月発行日タイ企業が「前例なし」に挑む! 新・サーキュラー エコノミー構想
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カテゴリー: ビジネス・経済, ASEAN・中国・インド
連載: Business Topics in Thailand
公開日 2025.01.10
2024年12月、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)がタイを訪問し、同3日にバンコクでペートンタン首相と会談、翌4日にはタイ初のNVIDIA Cloud Partner(NCP)となった新興企業SIAM.AI CLOUD主催のイベント「AI Vision for Thailand」に参加した。タイ国民の間では、「あの世界時価総額トップ企業のCEOがタイに来た」と話題を呼んだ。しかし、これがタイの知識層にとって後に悔しいニュースとなった。
タイ地元メディアの報道によると、同CEOは「タイのAI技術の発展に向け、タイのスタートアップ約50社と40の大学に支援や協力を提供している」と言及した上で、タイのAI分野の人材育成にも協力の姿勢を示した。今回のフアンCEOの訪タイでは、「ソブリンAI」が強調された。
ソブリンAIとは、自国政府や企業が海外大手企業に依存せず、データや人材など自国のリソースを用いて国家独自のAIを開発・運用することを意味する。同CEOは出席したイベントで「現在、ソブリンAIの整備が始まっている国は20ヶ国程度で、タイはその1ヶ国。AI立国にもなりうる」と評価し、タイのAI産業の未来を期待させる内容だった。
今回、フアンCEOの訪タイのきっかけを作ったイベントの主催者SIAM.AI CLOUDは、2024年1月に設立されたばかりの会社だ。同イベントには、タクシン・チナワット元首相をはじめ、CPグループのタニン・チャラワノン会長およびスパチャイ・チャラワノンCEO、電力会社ガルフ・エナジー・デベロップメント(GULF)のサラット・ラッタナワディCEOなど錚々たる顔ぶれが出席した。
ここで疑問が浮かぶ。なぜ設立間もない会社がエヌビディアと提携し、これほど多くの大物経営者が集まったのか。その答えは、SIAM.AI CLOUDの創業者ラッタナポン・ウォンナパーチャン氏(通称「サン」)だ。彼はタクシン元首相の甥である。つまり、チナワット家の影響力が及んでいたことは想像に難くないということだ。
同イベントでは、SIAM.AI CLOUDがCPグループ傘下のトゥルー・インターネット・データセンター(True IDC)と戦略的提携を結び、AIインフラとソリューション開発することを発表。また、GULF傘下のGSAデータセンターを通じて、子会社のガルフ・エッジとも戦略提携を進めている。これらのデータセンターには当然ながらエヌビディア製品が導入される。
イベント翌日、フアンCEOはベトナムを訪問し、「エヌビディアとベトナム政府はAI研究開発センターとAIデータセンターを共同で設立することで合意し、さらにベトナムの財閥ビングループ傘下の医療AIスタートアップ『ビンブレイン』を買収する」と発表。
ベトナムでは具体的な投資が示されたことにより、タイの知識層からは「タイはただの通り道で、エヌビディアの本命は競合のベトナムだったのか」と悔しさを滲ませる声が広がった。
今回のフアンCEOのベトナム訪問の様子が明らかになるにつれ、タイとの比較も注目された。タイでは、首相は台本を読み上げる「表面的な挨拶に終始」し、「裏の首相」が家族のためにコネクションを使い、イベントを実現させたと批判が噴出。一方ベトナムでは、「国を挙げた式典」や、「首相と酒を飲み交わし交流する様子」が報道され、その差を見せつけられた形だ。
いよいよ今月発足するトランプ政権。トランプ2.0で米国第一主義になった際、東南アジアに相次いで投資を発表しているGoogleやマイクロソフト、エヌビディアなど米国テック企業に影響を与える懸念はあるが、ある専門家筋によると、「米国テック企業が投資している国=米国の仲間として見なす可能性が高い。さらに今回のエヌビディアのフアンCEOのタイとベトナム訪問のニュースが世界的に発信されればされるほど、外交的な効果が高まる」という。
トランプ政権発足後にどのような波乱が起きるか未だ予想はつかないが、良くも悪くもタイの全方位外交の手腕が試される時が近づいていることだけは間違いない。
THAIBIZ No.157 2025年1月発行日タイ企業が「前例なし」に挑む! 新・サーキュラー エコノミー構想
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Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer
ガンタトーン・ワンナワス
在日経験通算10年。埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ帰国後の2009年にMediatorを設立。政府機関や日系企業などのプロジェクトを多数手掛けるほか、在タイ日系企業の日本人・タイ人向けに異文化をテーマとしたセミナーを実施(延べ12,000人以上)。2021年6月にタイ日プラットフォームTJRIを立ち上げた。
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