ArayZ No.117 2021年9月発行中国企業のASEAN進出動向
この記事の掲載号をPDFでダウンロード
掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。
カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2021.09.09
前回は企業形態に関わらず、改正企業法(以下、改正法)において重要な改正点を紹介した。今回は、ベトナムにおける外資企業の最も一般的な企業形態である「有限責任会社」に関する重要な改正点を見ていく。
有限責任会社は社員(出資者)1名のみで出資する場合には、1名有限責任会社(以下、1名LLC)となり、複数の社員(出資者)によって出資される場合には2名以上有限責任会社(以下、2名以上LLC)となる。
有限責任会社を代表する法定代表者の人数や権限については定款で定める必要がある。改正法では2名以上LLCの場合、社員総会の会長、社長(又は総社長)の職名を持つ法定代表者を、1名LLCの場合、社員総会の会長、会社の会長、社長(又は総社長)の職名を持つ法定代表者を少なくとも一人有さなければならないとされている(2名以上LLCについて改正法54条3項、1名LLCについて改正法79条3項)。
旧法下でも、法定代表者が前記いずれかの役職である例が多かったとは思われるが、改正法施行に伴い法定代表者が前記いずれかの役職に就いているかを確認し、もしいずれの役職にも就いていなければ、新たにいずれかの役職に就任させる必要がある。
旧法では、組織が出資する1名LLCについて監査役の設置が、2名以上LLCについて社員(出資者)11名以上の場合に監査役会の設置が義務付けられていた。改正法においてはこれが削除され、それぞれの設置が任意となった。
他方、改正法では監査役会を設置する場合には、株式会社と同様の資格要件(経済・財務・会計・監査・法・経営管理または企業の経営活動に関連する専門分野で大学卒業証明書を付与された者)及び監査役の過半数がベトナムに常駐していなければならない、という条件が課されている点に注意が必要である。
また旧法では、2名以上LLCにおいては任期、構成員数、権限や業務内容等については法定されておらず、定款において定める必要があるとのみ規定されていたところ、改正法では構成員数について1名から5名、任期最長5年(再任可)とされ、権限や業務内容について法定されている(改正法65条、79条2項、168条2項b)。
したがって、特に1名LLCについて監査役を廃止するかどうか、廃止した場合の業務フローの検討を行わなければならない。また、実際に監査役を廃止する場合、定款に定められていたそれぞれの権限内容について削除するなど、定款の修正も必要となる。
2名以上LLCには、社員の委任代表者によって構成される社員総会が設置される。社員総会は、年1回以上の開催が義務となっており、社員総会実施時には、議事録を作成し、議事録作成者及び社員総会議長が議事録の承認のために署名をする必要がある。
旧法では前記署名が拒絶された場合の取り扱いが不明確であったが、改正法では議事録作成者又は社員総会議長が署名を拒否した場合であっても、①社員総会に出席する他のすべての社員(の委任代表者)が当該議事録に署名し、かつ②当該議事録が法定記載事項を含む場合は、議事録は有効と認められることが明確にされた。なお、この場合、議長または議事録作成者が署名を拒否したことを議事録に明記する必要がある点に注意が必要である(改正法60条3項)。
旧法では、社員総会議長が議事録への署名を拒絶した際の対応方法が不明であったため混乱が生じる可能性もあったが、対応方法が明確化されたことにより、社員総会議事録の承認について署名が拒絶され、決議内容が無効として争われるリスクが軽減された。
松谷 亮
One Asia Lawyers 日系大手のIT企業および化学・電子部品メーカーにて社内弁護士として合計5年間勤務後、2019年よりOne Asia Lawyersベトナム事務所へ入所。クロスボーダーの新規事業開発案件、取引相手との紛争処理案件、知的財産に関する契約交渉、紛争処理案件を数多く経験しており、IT・製造業の法務案件を専門とする。
山本 史
One Asia Lawyersベトナム事務所に駐在。ベトナム国内で10年以上の実務経験を有する。ネイティブレベルのベトナム語を駆使し、現地弁護士と協働して各種法律調査や進出日系企業に対して各種法的なサポートを行う。
ArayZ No.117 2021年9月発行中国企業のASEAN進出動向
掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。
THAIBIZ編集部
タイのオーガニック農業の現場から ~ハーモニーライフ大賀昌社長インタビュー(上)~
バイオ・BCG・農業 ー 2024.11.18
タイ農業はなぜ生産性が低いのか ~「イサーン」がタイ社会の基底を象徴~
バイオ・BCG・農業 ー 2024.11.18
「レッドブル」を製造するタイ飲料大手TCPグループのミュージアムを視察 〜TJRIミッションレポート〜
食品・小売・サービス ー 2024.11.18
第16回FITフェア、アスエネ、ウエスタン・デジタル
ニュース ー 2024.11.18
法制度改正と理系人材の育成で産業構造改革を ~タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)のウィワット氏インタビュー~
対談・インタビュー ー 2024.11.11
海洋プラごみはバンコクの運河から ~ タイはごみの分別回収をできるのか ~
ビジネス・経済 ー 2024.11.11
SHARE