カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2022.10.10
インドでは、個人情報を保護する包括的な法律が現時点では存在していません。2019年12月に「2019年個人情報保護法案」(以下「同法案」)が国会に提出され、その厳格な規制内容が議論となってきましたが、インド政府は22年8月3日、会期中の雨季国会において、同法案を取り下げたことを発表しました。
今後、合同委員会による提言を踏まえた上で、オンライン空間を規制する包括的な法的枠組みを検討し、23年初頭までの新法案承認を目指しているとされます。
同法案は18年に最初の草案が作成され、19年12月に国会に提出。その後、審査のための合同委員会に付託されたものの、複数回にわたる審議の延期等により約2年を経て、21年冬季国会にようやく報告書が提出されました。542ページもの「2019年個人情報保護法案に関する報告書」では、81の修正案の提案と12の提言が記載され、中には法律自体の抜本的な見直しも含まれていました。
合同委員会による主な提言(一部)は下記です。
法案の取り下げ理由について国会資料によると、合同委員会の報告書において多数の修正案及びデジタル・エコシステムに関する「包括的な法的枠組み(comprehensive legal framework)」を含めた提言が提出されたとし、これらを考慮した上で、同法案は取り下げたものとされています。
この報告書では、データ保護やデータ・プライバシーを含むデジタル・エコシステムに関する多くの問題や課題が特定されています。政府は審議と検証の結果、合同委員会による提言の一部を踏まえ、また現在の課題と将来の機会を考慮し、法律と規則を包括的に再作成する必要があると説明しています。
具体的には2000年IT法の改正、データ保護、国家によるデータガバナンスの枠組み、サイバーセキュリティ、イノベーション促進といったオンライン空間を規制する包括的な法的枠組みが検討されることが予想されます。政府は、通常1~2月に行われる来年の予算審議国会までに新法案を承認し、法制化することを目指していると報道されています。どのような形で新たな法案が発表されるのか、より一層注視する必要があるでしょう。
志村 公義
日系一部上場企業のアジア太平洋General Counsel、医療機器メーカーのグローバル本部(シンガポール)での企業内法務に従事。19年4月からインドに駐在し、インドをはじめとしたバングラデシュ、ネパール、スリランカ等の南西アジアの法務案件の対応を行う。21年9月には、南アジア全8ヵ国の最新法務をまとめた日本初の書籍となる『南アジアの法律実務』(中央経済社)を出版。
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