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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ASIAビジネス法務 最新アップデート - ONE ASIA LAWYERS
公開日 2026.10.01
カンボジアでは2026年5月から8月にかけて、日系企業の実務に直接影響する法令が相次いで公布された。本稿では、労務、会計、物流、金融の各分野から、企業実務上留意すべき法令について要点を整理し概説する。
2026年5月23日、フン・セン暫定国家元首の署名による王令により新たな兵役法が公布され、本法が緊急法とされていることから憲法第93条に基づき翌24日に施行された。2026年5月12日に国民議会で全会一致により可決され、同月20日に上院で承認されたものであり、2006年に公布されながら一度も施行されなかった旧法を置き換える。全8章20条から成り、改正憲法第49条に基づき起草された。
対象は18歳から25歳までのカンボジア人男性であり、兵役期間は24ヶ月とされた(旧法は18歳から30歳、18ヶ月)。女性の兵役は任意である。王国政府の判断により最大6ヶ月の延長が可能とされ、兵役完了後は45歳まで予備役となる。
カンボジアに居住する二重国籍者にも適用される点に留意を要する。
免除対象は、公認された仏教僧侶その他の宗教者、身体的に不適格と認められた者、科学・技術・イノベーション分野の認定専門家等である。また、兵役義務の履行に選抜された者は1年ごとに延期を申請することができるが(本法第7条)、延期を申請できる者は就学中の学生、移住労働者、国外で任務に従事する公務員に限られ、延期は累計4回(4年)を限度とする(2026年8月12日付政令第176号「兵役法の実施に関する政令」第11条)。
召集令状の受領後30日以内に正当な理由なく出頭しない場合は徴兵忌避とされ、平時は6ヶ月から2年の禁錮および100万リエルから400万リエル(約250米ドルから1,000米ドル)の罰金、戦時等は2年から5年の禁錮および400万リエルから1,000万リエル(約1,000米ドルから2,500米ドル)の罰金が科される(第13条)。
日系企業においては、18歳から25歳のカンボジア人男性従業員の雇用継続性、エントリーレベルの採用計画への影響を検討する必要がある。
カンボジア労働法上、兵役召集は雇用契約の停止事由とされており、契約は終了せず停止するにとどまる。したがって就業規則に規定がない場合でも契約は法律上当然に停止するが、停止中の取扱い(賃金不支給、証憑提出、復職手続等)を明確化するため、就業規則への規定整備が望ましい。旧就業規則に兵役休暇の規定を置いていた企業は、期間を法令参照型の記載に改めることで、今後の延長・改正にも対応可能となる。
なお、延期申請の資格は前記のとおり限定的であり、民間企業の従業員であることのみを理由とする延期は認められていない点に留意を要する。召集手続の詳細については今後の運用を注視されたい。
2026年5月25日、王国政府は会計監査法違反に対する罰則に関する政令第102号を公布した。2020年の暫定的罰則制度(政令第79号)を置き換えるものであり、罰則の執行は会計監査規制機関(ACAR)が管轄する。
適用対象は、商業省および/または税務総局に登録され、大規模納税者または中規模納税者に該当する企業、および登録された非営利組織である。
監査対象企業については12種の違反類型が定められており、主なものとして、年次財務諸表のACARへの未提出が6,000万リエル(約15,000米ドル)、所定条件に従わない提出が2,000万リエル、会計記録の不保持が1,000万リエル、適用会計基準に準拠しない財務諸表の作成が1,000万リエル、年次財務情報の故意の虚偽報告が1,000万リエルである。監査対象外企業についても、未提出は5,000万リエルとされている。
罰則は監査を通じて段階的に賦課される。年次財務諸表を提出している事業体については、第1回監査で違反が検出された場合、ACARは罰則を留保して是正勧告を発出するか、適用罰金の20%を科すにとどめることができ、第2回で40%、第3回で80%、第4回で100%と引き上げられる。未提出の事業体については、第1回30%、第2回50%、第3回100%となる。
罰金を30日以内に支払わない場合は2倍、60日を超える場合は3倍となり、90日を超えると企業所有者の召喚、他省庁への措置要請、検察官への告訴等がなされうる。
罰則は原則として公布から6ヶ月後に発効し、一部の違反類型については1年後に発効する。
段階的賦課の構造上、第1回監査の時点で是正勧告にとどまる可能性があるため、監査を受ける前に自主的に不備を是正しておくことの実務的意義が大きい。年次財務諸表の提出、会計記録の適正な保持、リエル建て・クメール語での作成といった基本的な要件について、発効までに社内体制を点検されたい。
2026年7月10日、王令第0726/010号により改正道路法が公布され、緊急法として翌11日に施行された。2014年道路法の15箇条を改正するものであり、車両重量制限と罰則制度の再編を主眼とする。
改正第26条は、貨物車両等の最大許容重量を法律本体に規定した。軸重は操舵軸(ステアリング側)にある2輪の単軸6トン、操舵軸にある4輪の2軸11トン、4輪の単軸10トン、8輪の2軸19トン、12輪の3軸24トン等とされ、車両総重量は2軸16トン、3軸21トンまたは25トン、4軸30トン、5軸35トンとされている。連結車両は4軸36トン、5軸45トン、6軸50トンとされ、セミトレーラーは4軸35トン、2軸の車両と3軸のトレーラーである5軸40トン、3軸の車両と2軸のトレーラーである5軸44トン、6軸49トンとされ、6軸を超える連結車両およびセミトレーラーは所管当局の特別許可を要する。
改正第60条は、過積載に対する罰金を、超過率に応じて超過1トン当たりの額を段階的に定める方式に再編した。超過率5%超10%以下で1トン当たり10万リエルおよび免許停止10日以内、10%超20%以下で1トン当たり20万リエルおよび6ヶ月、20%超30%以下で1トン当たり30万リエルおよび6ヶ月、30%超40%以下で1トン当たり50万リエルおよび9ヶ月、40%超50%以下で1トン当たり80万リエルおよび12ヶ月、50%超で1トン当たり100万リエルおよび12ヶ月とされ、いずれも超過分の荷卸しが併せて命じられる。指定計量ステーションでの停車を怠った場合は1件につき定額100万リエルであり、12ヶ月以内に繰り返した場合は2倍となる。計量義務違反と過積載は併科されうる。
改正第61条により、法人には刑法第42条に基づく刑事罰が科されるとともに、行政罰として第60条に定める罰金額の2倍が科される。
また改正第66条は、公道に隣接する住宅、建物、工場、企業等への進入路を設けるための工事を、道路予定地において所管当局の許可なく行った場合に5万リエルの罰金を科すものとしている。
自社便を運用する製造業においては、車両構成および積載実務が改正第26条の数値に適合しているかを確認する必要がある。罰金が超過率に応じて1トン当たりの単価を引き上げる方式であることから、超過トン数と超過率の双方が罰金額を左右する。法定限度に対する余裕の確保が実務上の意味を持つ。
法人が個人の2倍の罰金を科される点、および荷卸し費用と貨物・車両に生じた損害が車両所有者の負担とされる点は、第三者物流業者を利用する場合の責任分担にも影響するため、運送契約の見直しを検討されたい。
工場等の新設・増設に際して公道への進入路工事を行う場合には、改正第66条により所管の道路管理当局の事前許可が必要となる。建設許可および使用許可証の取得と併せ、プロジェクトスケジュールに織り込む必要がある。
2026年8月6日、カンボジア国立銀行(NBC)は、単一ネットワーク内における商品またはサービスの支払いのために電子マネー(Eウォレット口座)を発行した事業者の届出義務に関する通知を発出した。
対象は、銀行金融機関およびライセンスを有する決済サービス機関のいずれにも該当しない事業者が、モバイルアプリケーションまたは会員カードを通じてEウォレット口座を発行し、自社の商品・サービスの支払いにのみ使用させている場合である。NBCはこれを「単一目的電子マネー」と呼ぶ。通知はカフェ、給油所、運送会社、娯楽施設等を例示している。
2017年決済サービス機関の管理に関する省令第20条第2項により、以下の全ての要件を満たす場合には事前の認可申請は不要であるが、NBCへの事前の書面による届出を要する。すなわち、1口座あたりの残高が20万リエル(約50米ドル)を超えないこと、全口座の残高合計が8億リエル(約20万米ドル)を超えないこと、単一の者が提供する商品・サービスの支払いにのみ使用されること、その他NBCが定める要件を満たすことである。
対象事業者は、本通知の受領日から90日以内に、関連書類の写しを添えた公式書簡をNBCに提出しなければならない。通知の日付から起算した場合、当該期間は2026年11月4日に満了する。
NBCはあわせて、当該口座が貯蓄口座ではなく残高が預金に当たらないこと、発行事業者が残高に利息を付すことを禁じられることを明示している。
本通知の射程は例示された業種にとどまらない。工場の社員食堂・売店で使用するプリペイドカード、社用車向けの給油カード、小売・飲食事業のアプリ内チャージ残高等も、単一目的電子マネーに該当しうる。自社が決済サービスを提供しているとの認識がない場合であっても対象となりうる点に留意を要する。
該当性の検討にあたっては、まず残高上限および合計額の要件を満たすか、残高が自社の商品・サービスにのみ使用可能かを確認されたい。要件を超える場合や第三者加盟店でも利用可能な場合には省令第20条第2項の適用外となり、決済サービス機関ライセンス等が必要となる可能性がある。あわせて、残高に対する利息またはこれに準じる利益を付していないか、顧客向け資料において預貯金を想起させる表現を用いていないかについても確認が必要である。

パートナー弁護士(日本法)
日本・カンボジア
One Asia法律事務所/MAR & Associates出向中
村上 暢昭 氏
日本国内の法律事務所で3年半勤務後、カンボジアの法務コンサルティング会社JBL Mekong、その後カンボジアの法律事務所MAR & Associates Law Firmに出向。
日本での国際企業法務対応経験・不動産取引業顧問先対応経験を基に、カンボジア進出、戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応等および、カンボジアを含むASEANにおける不動産取引に関するスキームの策定、リーガルフォロー等を担当。また海外在住邦人相続協会を立ち上げ、同協会の共同代表として、海外での相続案件に関する対応も行う。
One Asia Lawyers
One Asia Lawyers Groupは、東南アジア・インドの法律に関するアドバイスを、アジア各国のネットワークを基礎として、シームレスに、ワン・ストップで提供するために設立された法律事務所です。
Website : https://oneasia.legal

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