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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ASIAビジネス法務 最新アップデート - ONE ASIA LAWYERS
公開日 2026.05.08
カンボジアでは2025年末から2026年4月にかけて、外国企業の事業活動に影響を与える重要な法令が相次いで公布された。本稿では、日系企業が特に留意すべき法令について、企業実務の観点から要点を整理し概説する。

目次
2025年12月9日、商業省は会社登録手続の全面的なデジタル化・標準化に関する省令第117号を公布した(2026年1月8日施行)。
本省令により、登録手続から手数料納付までを含む全プロセスがデジタルプラットフォームに統合され、デジタル署名が正式に認められる。
また、すべての有限責任会社に対して会社秘書役(Company Secretary)の任命が義務付けられ、年次商業企業申告(ADCE)は登録記念日から3ヶ月前までに提出する義務が課される。ADCEを3年連続で未提出の場合、会社は「非アクティブ会社」として商業省の警戒リストに掲載され、株主・取締役は新規登録や役員変更等の商業省のサービスにアクセスできなくなる。
2026年2月25日、商業省はプレスリリース第0657号により会社秘書役制度の運用を明確化したが、その導入義務化期限は2027年1月まで延長された。
有限責任会社が任命する会社秘書役は、当該会社専属である限り、商業省が定める資格要件(学歴・実務経験・供託金等)を満たす必要はなく、複数の会社にプロフェッショナルとしてサービスを提供する者のみが資格要件を満たす必要がある。
日系企業としては、対応の猶予が広がったものの、社内に常駐する管理担当者を秘書役に充てるか、外部のサービス提供者を起用するかの方針決定を進める必要がある。
2025年12月26日、経済財務省は省令第1123号を公布し、輸出向け縫製関連産業の月次法人税前払金(Monthly Income Tax Prepayment)の納付義務を一時的に免除する措置を導入した。
対象は適格投資プロジェクト(QIP)として登録された輸出向けの縫製・製靴・製鞄等の製造業者であり、免除期間は2025年12月26日から2028年12月31日までである。
本措置の継続適用を受けるためには、適切な会計記録の維持、各種税務申告の期限内提出、年次独立監査報告書の提出が必要となる。
2026年1月5日、王国政府は集合住宅地区における治安・公共秩序の強化を目的とする政令第03号を公布した。
適用対象は、ボレイ、コンドミニアム、アパート、共有所有建物、工場、企業、農場、経済特区(SEZ)、ホテル、ゲストハウス等、公私を問わず広範な集合住宅・施設におよぶ。
所有者・管理者には、居住者記録の正確な維持、外国人の一時滞在に関する24時間以内の所轄当局への報告、外国人の合法的な入国・滞在書類の事前確認、不法入国者の居住禁止、CCTVデータの最低90日間保存、出入記録の最低1年間保存等の義務が課される。
違反に対しては、安全管理義務の懈怠について40万リエル(約100米ドル)、不法滞在外国人を故意に居住させた場合は外国人1名あたり400万リエル(約1,000米ドル)の罰金が科される。
社員寮や工場敷地内宿舎を運営する日系製造業、SEZ入居企業、ホテル運営企業等は、入居者管理体制、CCTV運用、外国人従業員の滞在登録手続を本政令に整合させる必要がある。
2025年12月23日、関税消費税総局は2026年関税率調整に関する通達第6069号を発出した(2026年1月1日施行)。
主な変更点として、コンピュータおよび関連機器、アンテナ、実験機器、生鳥類の関税が15%または7%から0%に、衛生用品(生理用品、紙おむつ等)、ジューサー、電気炊飯器等が15%から7%に、リムジン乗用車および電気焼成オーブンが35%から15%に引き下げられた。特定商品・サービス税(Specific Tax)についても、電気自動車用モーター、掃除機、音響機器が10%から0%に、電気自動車用バッテリーが10%から5%に引き下げられた。
加えて、2026年3月26日、王国政府は政令第52号を公布し、電気自動車・クリーンエネルギー関連品目を中心とした関税・輸出税の追加調整を行った(2026年4月1日施行)。
EVバッテリー充電器および電線・ケーブルが7%から0%、電気バッテリー、パワートレイン部品、太陽光バッテリー等の部品類が15%から0%、HEV・PHEV・EV(乗用・貨物)、ソーラーシステム、リチウムバッテリー等が15%から0%、ファミリー向けEVが35%から0%、ファミリー向けPHEVが35%から7%、家庭用電気ストーブ・トースターが35%から0%に引き下げられた。アルミニウム鉱の輸出税は25%から0%とされた。
EV関連、家電製品、IT機器等を取り扱う日系企業にとっては仕入コスト削減の機会となるが、HSコード分類及び関税優遇適用要件の確認が必要となる。関税消費税総局からの追加ガイダンスの動向に留意されたい。

パートナー弁護士(日本法)
日本・カンボジア
One Asia法律事務所/MAR & Associates出向中
村上 暢昭 氏
日本国内の法律事務所で3年半勤務後、カンボジアの法務コンサルティング会社JBL Mekong、その後カンボジアの法律事務所MAR & Associates Law Firmに出向。
日本での国際企業法務対応経験・不動産取引業顧問先対応経験を基に、カンボジア進出、戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応等および、カンボジアを含むASEANにおける不動産取引に関するスキームの策定、リーガルフォロー等を担当。また海外在住邦人相続協会を立ち上げ、同協会の共同代表として、海外での相続案件に関する対応も行う。
One Asia Lawyers
One Asia Lawyers Groupは、東南アジア・インドの法律に関するアドバイスを、アジア各国のネットワークを基礎として、シームレスに、ワン・ストップで提供するために設立された法律事務所です。
Website : https://oneasia.legal

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