カテゴリー: 自動車・製造業, カーボンニュートラル, バイオ・BCG・農業
公開日 2021.10.15
1913年に創業した業界最大手のセメント製造企業「The Siam Cement Group Public Company Limited.(以下SCG)」は、ASEAN最大のコングロマリットの一つ。セメント建材販売事業、石油化学事業、製紙事業を基盤にビジネスを展開する同社が今、あらゆる場面でイノベーションに取り組んでいます。産業界最多である二酸化炭素排出量の大幅削減(脱炭素技術の確立)という喫緊の課題に加えて、製造工程の自動化・IoT化や環境に優しい建築資材の開発など大きく5つに分けられるのだそう。ASEAN のセメント産業を牽引する同社が日本企業に求めるものを、Mr. Jirapat Janjerdsak(以下ジラパット氏)とMr. Anurak Bannasak(以下アヌラック氏)にお伺いしました。
ガンタトーン:
まずはSCGの事業概要について、グループ全体のオープンイノベーションと戦略的プログラムの推進を担うアヌラック氏にお答えいただきます。
アヌラック氏:
弊社は1913年にセメント製造企業として創業し、1938年に建設資材事業を始めました。そして1975年に株式上場を果たし、1976年に製紙業、1983年に石油化学事業、1998年に物流事業とビジネスを拡大させてきました。事業が増えたことで既存の企業体制を見直そうと2013年に組織を再編成し、弊社の3本柱に据えたのがセメント建材メーカー(CEMENT-BUILDING MATERIALS)、石油化学事業(CHEMICALS)、製紙事業(PACKAGING)です。グループ企業は300以上、従業員数が全体で約5万人(そのうち1万5000人が外国人)とASEANトップクラスの規模を誇っています。
また、国外拠点としてはベトナムとインドネシアに展開しています。ベトナムにはセメント工場があり、あと数年で石油化学事業(ケミカル・コンプレックス)に関わる工場も完成予定です。インドネシアではセメント・物流・製紙事業と複数展開しており、その規模は年々拡大しています。
ガンタトーン:
現在「Open Innovation」に注力していると伺いました。
アヌラック氏:
グループ全体としてイノベーション研究・開発に投資する金額は年々増えており、2020年は売上の約1.5%にあたる60億Bを投資しました。今後も引き続き研究開発を行い、3つの事業それぞれの成長・発展に繋げることはもちろん、サステナビリティの面でもリーディングカンパニーになれるよう努めていきたいと考えています。
ガンタトーン:
ここからは、SCG-Cement and Building Materials (CBM)部門のイノベーション管理事業部を統轄するジラパット氏にお話を伺っていきます。
ジラパット氏:
まず、CBM事業が「Open Innovation」の実現に向けて力を注いでいきたい5つの分野を説明していきたいと思います。1つ目はSmart Manufacturing で、より高度な技術を用いて省力化・省人化の実現を目的としています。つまり、IoT化やインダストリー4.0に関わる分野です。2つ目はFuture Materials で、より軽く・より丈夫に・より簡単に(組み立て・移動がしやすい)、また高い抗菌力や耐熱性などを備えた新資材の開発を目指しています。
そして、アンケートでも協業に興味を示す日本企業が多かったのが 3つ目のDecarbonization(脱炭素・低炭素の実現)。生産過程で発生する二酸化炭素をどのように減らしていくかは大きな課題であり、使用する化石燃料をバイオマスなどの生物資源に転換したり、太陽光発電で賄っていくことを考えています。4つ目はSmart Living & Mobility で、今後さらに力を入れていきたい分野になっています。現在は基本的に建設資材を販売するだけですが、将来的には電気自動車(EV)を導入したり、家の中で使うエネルギーをよりクリーンなものに替えたりするなど“生活空間自体を提供する” ことで、より付加価値を高めていきたいと考えています。
最後がHealth & Well-being/New Retail で、コロナ禍において弊社では空気を制御・清浄化するプレハブを医療現場に提供してきましたが、この技術は住空間にも活用可能だと考えています。こういった健康に貢献できる住まいを提供していくのが、Health & Well-being 分野です。そしてすべての分野をお客さまと繋げるのがNew Retail 。お客さまとの接点となるショールームを設けたり、オンラインサイトなどを通してフィードバックをもらう機会をつくるなど今後より強化していきたいと考えています。
ガンタトーン:
それでは前述した構想を踏まえ、日本企業に求める具体的な内容を教えていただけますか?
ジラパット氏:
事前の告知で求めているパートナー像を挙げさせていただきましたが、それぞれについて補足させていただきます。
①インダストリー4.0 分野の技術
さらに細かく分けるとFA(自動)化、データの活用(IoT化)、より安全な生産現場の実現(ワークプレイス・セーフティー)、業務の最適化です。この4つのキーワードに関わる技術をお持ちで、弊社の事業と連動できる企業がありましたらぜひご検討いただければと思います。
②BEV(Battery Electric Vehicle)事業の技術
電気自動車関連の技術をもとにエコシステムを作りたいと考えています。ハードとソフトどちらも求めており、なかでも「蓄電された車の電気をいかに家や建物に移行させるか(V2H:Vehicle to Home)」に焦点を当てています。家と車の関係性は切っても切れないものですし、ゆくゆくは “自動車と家が会話できる”ようなシステム の構築を目指しています。
③ホームIoT関連の技術
家の中の空気循環や自然エネルギーの活用、安全性といったものを含めて、より高度な生活空間を提供できる技術の開発です。家を造る人が住む人のことを想像・理解するのは当然のことですがそれだけでなく、家自体が住んでいる人のことを理解し、対応できるシステムを創りたいと考えています。
④ 脱炭素化または気候変動関連のイノベーション技術
Net Ze-ro(脱炭素・低炭素の実現)に向けた、セメント製品の二酸化炭素排出の新たな削減技術です。また、排出された二酸化炭素をいかに吸収するかにも重きを置いており、時間がかかり過ぎる植林などの方法以外で、より効率的かつ有効な技術を導き出したいと考えています。
⑤建物用資材の技術
材料科学を基盤とした新たな製品開発・製造工程を実現できる企業を求めています。軽量性や耐久性、抗菌性の他、耐熱や防音といった高度な技術による製品開発と同時に、業務の効率化や最適化など多岐に渡るご提案をお待ちしています。
TJRI編集部
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