カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.05.31
自動車をはじめ、日本製品の高品質で安全なイメージは、ありがたいことにタイをはじめとする多くのASEAN諸国で受け入れられている。現地消費者にとって最も身近にある日本製品といえば、飲料を含む「食品」ではないだろうか。特にタイ人の健康や美容に対する意識は所得層を問わず高く、高品質で安全に加えてヘルシーで体に良い日系ブランドの食品は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの売り場でも徐々に存在感を増している。
その一方で、高品質で、日本で売れているからといって、現地市場でも売れるとは限らないのも海外ビジネスの常識。日本では名の知れたブランドでも、現地では無名の新参者からスタートしなければならない。売り場でタイ人の嗜好を熟知したローカルブランドに勝 ち抜いて消費者に選ばれるには、 商品の「顔」であるパッケージを販促ツールとして活用しない手はないのだ。
パッケージのコストは商品価格に影響することから、タイ国内で生産する商品のパッケージは、タイ国内で手配するのが一般的だ。パッケージが出来上がるまでの主な工程は、ざっくりと以下の流れになる。
1.構造の設計・素材の選択
2.デザイン
3.試し刷り・色校正
4.本印刷・表面加工
5.打抜き(トムソン)加工
6.製箱加工
タイで食品を製造、輸入、販売するには、いずれの際もタイ保健省食品医薬品局(Food and Drug Administration:以下、FDA)への申請と認可が必要になる。日本とは食品区分が異なり、パッケージに表示が義務付けられている内容や、パッケージの大きさに対する記載サイズに関しても、「特定管理食品」や「品質規格管理食品」などFDAが定める食品区分によってそれぞれ異なる。
例えば「品質規格管理食品」に当てはまる食品サプリメントの表示については、「病気を防いだり、治癒したりすることには効果がない」ことなどを背景の色とは異なる色の文字で表記しなければならない。また、「特定用途食品」では食品名、食品のシリアルナンバー、生産者あるいは販売のための再梱包者の名前と所在地など、定められた内容をタイ語で記述する義務があり、併せて英悟表記もあることが望ましいとされている。
しかも、区分によっては基準や定義が存在せず、FDAに個別に判断を仰ぐ必要があり、その判断は係員の裁量次第になる。パッケージのデザインができた時点でFDAに提出しても、係員によって修正の指摘が入る可能性が高く、記載内容や文字サイズの修正が複数回求められる場合が多いという。
日系醤油メーカー、ヤマモリ社のタイ製造・販売商品には内容量、生産者情報や材料などをタイ語と英語で併記。調理方法のメインを日本語にすることで、日系ブランドの印象を押し出している
パッケージデザインの嗜好に関しても、タイ人と日本人では感覚が大きく異なる。各ブランドの戦略やターゲットにもよるが、シンプルにまとめてインパクトを重視させる日本デザインと、色鮮やかで文字やイラストを多く入れるタイのデザイン、どちらに傾けるか で、日本人デザイナーとタイ人デザイナー、どちらの制作を選択するかも変わってくるだろう。トレンドの変化に伴い、消費者の嗜好が少しずつ変化している可能性もある。ビザ緩和によるタイ人訪日観光客の増加や、日系ブランドはじめ日系コンビニエンスストアの進出増加をきっかけに、日本の商品に触れるタイ人が以前に比べて増えているのも事実だ。この風潮を利用し、日本らしいイメー ジを活用することで、付加価値を創出することもできるかもしれない。
また、印刷技術に関しても、タイで日本と同様の質感、色味を持つパッケージ素材が入手できるとは限らず、仕上がりの発色確認に対する意識も日本とは異なることは留意しておきたい。日本人営業が常駐している日系印刷会社も多く進出しているため、日本のものと 比較したい時は相談してみよう。タイの市場や勝手を熟知している現地業者を味方に付けることが、タイで売れるパッケージをつくる秘訣と言えそうだ。
タイ国内で製造・販売されている日系ブランドの食品パッケージ (Spade design Co., Ltd.制作)
アジア最大規模の飲食料品・医薬品生産加工設備機械や技術の国際展示会が、6月にバンコクで開催される。今年で24回目を迎える、この「PROPAK ASIA 2016」。
パッケージ素材にフォーカスした「PACKAGING MATERIALS ASIA」や、印刷やラベルに関連する技術を集めた「PRINT TECH ASIA」など、食品・医薬品生産に役立つソリューションが得られる場になるはず。
会期:2016年6月15日(水)~ 18日(土)
会場:BITEC(バンコク国際貿易展示場)
www.propakasia.com
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THAIBIZ編集部
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