
カテゴリー: ビジネス・経済, ASEAN・中国・インド
連載: タイ経済概況 - SBCS
公開日 2026.04.10
タイ・ラオスの国境の大部分は全長1,000kmを超えるメコン川となっている。この川に架かる橋を渡れば、島国の日本では体験できない「陸路での国境越え」を体験できる。
しかし、その長さに対して橋の数は限られており、2026年3月時点で5本にとどまる。その5本目となる「タイ・ラオス第5友好橋」が、2025年12月25日、タイ東北部ブンカーン県とラオス中部ボリカムサイ県を結ぶ形で開通した。

日本人にとって、タイ側のブンカーン県はあまり耳にする機会のない県かもしれない。この県は2011年3月23日にノーンカーイ県の東側の一部が分離して誕生した、タイで最も新しい77番目の県である。人口は42万人、主な産業は農業で、ゴムやキャッサバ、パームヤシ等の栽培が盛んだ。観光地としては奇岩のヒン・サーム・ワン(クジラ岩)や滝の自然を生かした観光スポットが多い。
第5友好橋は、2020年のタイ・ラオス政府間の合意のもと、翌年から本格的な工事が開始された。当初は2024年の完成が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響により工事が遅延。最終的に、2025年12月25日に開通式典が行われ、27日から正式に利用が開始された。
橋の全長は1,350m、建設費は39億3,000万バーツで、タイ側が26億3,000万バーツ、ラオス側が13億バーツとなっている。なお、ラオス側負担分はタイの周辺諸国経済開発協力機構(NEDA)がラオスに融資している。
農業と観光以外に大きな産業はない地域だが、タイ側が多くを負担してでもこの場所に新たな橋を架ける理由は、ベトナム(特にハノイやハイフォン港方面)への物流ルート改善にある。
タイにとって新たな物流ルートが整備されることによって得られる経済的利益が負担を上回ると見込んだためだと考えられる。具体的には、第5友好橋を渡ってラオスに入国した後、ラオス側のナムパオ/ベトナム側のカウチェオという国境に向かう。

この間の距離は約230kmだが、片側1車線で山道を通るうえ、筆者が大型バスで走行すると、路面状態が悪く(アスファルトが剥がれて凸凹になっている場所が多い)、走行時間は6時間以上を要した(2026年1月末時点)。
国境を越えてベトナム側に入ると路面状態は改善し、基本的に片側1車線ながら道幅に余裕があり、ラオス側に比べて走りやすい。ベトナムの南北縦断高速道路(CT01号線)に至ると片側2車線でさらに走行は安定する。カウチェオ国境からハイフォン港までの総走行時間は8時間半程度だった。
2回の国境での通関にかかる時間にもよるが、基本的にタイから2日あればハノイやハイフォン港に至ることができるルートとなる。ラオス・ベトナムの国境では日系物流会社のトラックも見ることができた。これから先駆者により有用性が認められていけば、新たな物流ルートとして定着してくるだろう。
タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の2月16日の発表によると、2025年通年の経済成長率は前年比+2.4%となり、2024年通年の同+2.9%(改定値)から減速した。タイでは2022年以降、成長率が2%台の状況が続いている。1人当たり名目国内総生産(GDP)は8,201米ドルとなり、前年の7,539米ドルから増加した。
成長率の内訳は、物品輸出が同+11.9%、農業は同+3.6%(2024年同+1.9%)、製造業+0.4%(2024年同▲0.3%)が好調だった。

タイ商務省の1月23日発表によると、2025年の輸出額は前年比+12.9%の3,396億3,000万米ドル、輸入額は同+12.9%の3,449億4,000米ドルとなった。
輸出額は過去最高を記録したものの、貿易収支は53億米ドルの赤字となり、4年連続の貿易赤字となった。品目別の輸出額は、農産物・加工品が同▲0.4%(520億7,000万米ドル)で、このうち米は同▲30.0%(45億2,000万米ドル)、天然ゴムは同+0.4%(50億1,000万米ドル)だった。
電子製品・同部品は同+38.3%(732億1,000万米ドル)、自動車・同部品は同+2.5%(404億3,000万米ドル)となった。国・地域別の輸出額は、首位が米国で前年比+32.0%の725億1,000万米ドル、次いで中国が同+12.6%の397億2,000万米ドル、日本が同+1.1%の235億5,000万米ドルだった。
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タイ投資委員会(BOI)は2月23日、新産業分野として、中国の大手5社による世界的な企業向けヒューマノイドロボット用部品生産プロジェクトを承認した。対象となるのは、杭州新剣機電伝動(Hangzhou Seenpin)、貝特科技(Beite Technology)、三花智控駆動技術(Sanhua Intelligent Drives)、拓普集団(Tuopu Technology)、旭昇集団(Xusheng Group)。
これらの企業は、ヒューマノイドロボットの骨格、関節、腕、指の制御ユニットを生産する工場を建設する予定である。主な顧客はテスラの「テスラ・ボット」だが、アップル、サムスン、ファーウェイ等の他メーカーへの供給も予定している。
これら5社にとって、中国国外での生産は今回が初めてとなる。第1フェーズでは計1,000人以上の高度技能を有するタイ人雇用の創出、年間450億バーツ以上の国内原材料および部品の使用が見込まれている。
ヒューマノイドロボット市場は飛躍的な成長が予想されており、2030年までに世界市場価値は2,000億バーツを超えると予測されている。特にテスラの「オプティマス」のような二足歩行ロボットの実用化が追い風となり、2027年が商用化本格普及の転換点になると見られている。
タイ政府の3月5日の発表によると、石油の在庫は約95日分(国内備蓄+産油国からタイに向かっている量+中東以外から新たに確保できた量)相当を確保しているという。翌6日には、ガソリンおよびディーゼル燃料の輸出を禁止する首相指示書(天然ガスや電力取引があるミャンマーおよびラオス向けを除く)が官報に公示された。
10日の閣議では、政府機関を中心としたノーネクタイ・ノージャケットの推奨、サービス提供職員以外の在宅勤務の徹底、海外視察の中止等、省エネルギー政策が承認された。
また、ディーゼル燃料や肥料、タクシー料金、バイクタクシー料金等、複数の製品・サービスについて値上げを禁止する措置が順次発表されている。

SBCS Co., Ltd.
Executive Vice President and Advisor
長谷場 純一郎 氏
奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、2010年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。2012年から2018年までジェトロ・バンコク勤務。2019年5月SBCS入社。2023年4月より現職。
SBCS Co., Ltd
Mail : jhaseba@sbcs.co.th
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SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。
Website : https://www.sbcs.co.th/


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