カテゴリー: バイオ・BCG・農業, スタートアップ
連載: 日系スタートアップ
公開日 2022.12.20
11月16日に開催されたスタートアップイベント「ロック・タイランド#4」で、ピッチイベントに登壇した日本のスタートアップ企業紹介の第3回は温室効果ガス(GHG)排出量を算定・可視化するクラウドサービスを提供するゼロボードだ。同社を創業した渡慶次道隆(とけいじ・みちたか)最高経営責任者(CEO)のプレゼンテーションを紹介する。
「脱炭素経営のための温室効果ガス排出量の可視化とアジア戦略におけるタイ企業との共創」というタイトルで発表をさせていただきます。弊社は2021年8⽉に設⽴したzeroboard(ゼロボード)というGHG排出量を算定・可視化するクラウドサービスを提供する会社です。
私の経歴ですが、⼤学卒業後、2006年にJPモルガン証券に⼊社、2009年に三井物産に転職しました。さらに2018年にA.L.I. Technologiesという会社に転職し、そこでゼロボード事業を統括しておりました。脱炭素のニーズの⾼まりをとらえ、2021年8⽉に同事業をALIからMBO(マネジメント・バイアウト)し、現在に⾄っています。
現在、こちらのスライドで示した3つのドライバーにより各社が脱炭素化へのシフトを迫られています。1つは、⾦融市場からの圧⼒です。二酸化炭素(CO2)排出量を含む気候関連財務情報の開⽰がスタンダードになりつつあります。2つ⽬は、世界各国がパリ協定に従いカーボンニュートラルを宣⾔していることです。3つ⽬はミレニアル世代、Z世代と呼ばれる将来の中⼼となる消費者の環境意識が⾼まっていることです。これらを考えると、もはや企業にとって脱炭素経営に取り組まない事がリスクとなっています。
こちらのスライドで⽰した通り、アジアでもタイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、台湾、ベトナムを始めとした各国で気候変動対策への取り組み強化を発表しています。タイは2050年までにカーボンニュートラル、2065年までにネット・ゼロ・エミッションを掲げています。
新たな戦略として東南アジア、その中でも特にタイにおける脱炭素⽀援を⾏いたいと考えています。東南アジアには多くの製造業が集積しており、各国とも野⼼的な脱炭素の⽬標を掲げているため、⽀援のニーズが⾼いと思われます。とりわけタイは、先進国並の削減⽬標を掲げおり、さらにわれわれがターゲットにしている⾃動⾞産業のようなサプライチェーンの⻑い産業の製造拠点が多く、最初の進出ターゲット国に定めています。また、タイ企業は周辺国に多くの拠点・⼯場を保有しており、タイ企業と⼀緒により多くのサプライチェーンを取り込めるという効果も期待できます。
温室効果ガス(GHG)算定の根幹であるGHGプロトコルで定められたサプライチェーン排出量の考え⽅を説明します。算定対象は3つのスコープに分かれており、スコープ1と2は⾃社での燃料・電気使⽤による排出で、簡単に算定できます。⼀⽅、スコープ3は⾃社以外の上流・下流での排出量のため複雑で、他社とのデータ連携が⾮常に重要になってきます。また、GHG排出量は「活動量x排出原単位」で算出されますが、ここで重要なのは排出原単位を各サプライヤーからの⼀次データを使うことです。これによって各サプライヤーの削減努⼒を適切に反映する事ができます。この意味でも、サプライチェーンでのデータ連携が⾮常に重要といえます。
サプライチェーンでのデータ連携を簡潔に表したのがこのスライドです。たとえば製造業の皆さんは、サプライヤーからデータを集め、それを使ってスコープ3の算定や、プロダクトカーボンフットプリントの算定をすることが求められています。
弊社のプロダクトであるゼロボードですが、次の3点の特徴があります。1つ⽬は信頼性で、「ISO14064-3」を取得しており、GHGプロトコルに則った妥当な算定が可能です。2つ⽬は優れた操作性です。ユーザーフレンドリーな操作性で既に2000社以上から⾼い評価を得ています。3つ⽬はネットワーク効果です。データ連携機能を有し、ネットワーク効果の⾼いシステムを構築しています。
弊社の提供するサービスの概要としては、次の3点が挙げられます。1つ⽬は、複雑なデータ処理を必要とするサプライチェーン排出量や商品ごとのCO2排出量の算出・可視化です。可視化では次の2つ目が重要で、視認性の⾼いダッシュボードによるCO2排出量の削減管理やパートナー企業からのソリューションによるコスト対効果のシミュレーション機能の提供です。最後が国内外の開⽰形式に対応したアウトプット機能です。
脱炭素社会実現に向けて、先に⽰した可視化と削減の⽀援のみでは不⼗分で、国をはじめとするさまざまな専⾨機関と協業、連携し、社会システムを構築していく事が重要だと考えています。弊社ではさまざまなコンソーシアムに参画しており、特に経済産業省主管のカーボンフットプリントの算定・検証に関する有識者会議では、私も有識者会議の委員に就任しており、このようなルールメイキングも弊社としてリードしていきたいと考えております。
現在、2000社以上の企業様へゼロボードの導⼊実績があり、国内で最⼤のシェアを取っております。弊社はお客様の脱炭素経営パートナーでありたいと考えています。脱炭素は1つの企業のみで達成することは出来ず、パートナー企業様との協業が重要だと考えております。パートナー企業との協業は単なるプロダクトの販路拡⼤だけでなく、削減ソリューション提供も含まれます。排出量の可視化を実行したお客様に、削減ソリューションをゼロボードを通じて提供します。さらに、排出量を削減したお客様は金融機関から優遇レートで借り⼊れられ、⾃治体の補助⾦を活⽤できるなどのメリットを享受できる仕組みを構築したいと考えています。このようなゼロボードユーザーを中⼼とした削減管理までをサポートできるエコシステムをパートナー企業と構築していく戦略こそが弊社の唯⼀無⼆の強みと考えています。さまざまな分野の約70社ものパートナー企業様と現在協業をしております。
最後に本⽇のメッセージとして2点お伝えしたい事があります。1点⽬は、脱炭素は決して1企業だけで達成できるものではないということです。われわれゼロボードは、パートナーとともに構築するエコシステムが脱炭素を可能にすると考えています。2点⽬は、そのエコシステムをタイでも構築したいと考えており、それを⼀緒に作り上げるパートナー企業を探しています。
TJRI編集部
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