公開日 2023.01.10
11月16日に開催されたスタートアップイベント「ロック・タイランド#4」で、ピッチイベントに登壇した日本のスタートアップ企業紹介の第4回は電気自動車(EV)向けの超急速充電ステーションを開発・販売するNaturanix(ナチュラニクス)だ。同社の代表を務める金澤康樹CEOのプレゼンテーションを紹介する。
「自然と遊び、地球と遊ぼう!」
皆さんは、最近自然と触れ合っていますか。私は山大好き人間で、週末はたいてい山にいます。皆さん、自然の中に行く時はクルマで向かいますよね。
電気自動車の時代なので、自然にやさしい電気自動車を買おうかなと思うのですが、山の中では、たくさんの頻度で使うわけでもないので、充電ステーションの採算性が合わず、どうしても都心に比べて充電設備の導入が進まない現状があります。
そこでナチュラニクスは、世界中の最先端技術を結集し、採算性が合うよう、安価で長寿命な蓄電池を用いて、地球上でどこでも充電できるインフラの構築の実現を目指します。
安価で長寿命な充電インフラの実現ができれば、電気自動車は、国境すら超えるモビリティになると確信しています。われわれは、自然を通じて人類がさまざまな経験や体験ができるようにするために、自然と電気エネルギーが調和する社会を実現します。
電動化の時代では、「CASE」という技術が注目を集めています。その中で、われわれは電気の研究を10年以上行ってきました。本格的な電動化の時代を迎え、バッテリーの市場は、2030年から2050年に向け大きく成長すると予測されております。
しかし、バッテリーにはさまざまな問題があります。コストの問題、発煙・発火の問題、エネルギー密度の不足、資源の不足、サイクル寿命、充電時間の長さ。そのうち充電システムにて解決できる問題はサイクル寿命と長い充電時間です。
われわれは、サイクル寿命を延ばす手段として、バッテリーの発熱を抑制する冷却システムの研究開発を進めて参りました。さらに、バッテリーの充電時間を短縮するために、大電流に特化した研究開発を進めてきました。
バッテリーパックを冷却する技術を2つ紹介します。1つ目は、バッテリー筐体の素材を工夫することで、バッテリーで発生する熱を効率よく冷却する研究開発を進めています。
さらに大電流を流すバッテリーパックでは、バッテリーを安全に管理・遮断するバッテリーマネジメントシステム(BMS)でも発熱が大きく発生します。そこで、発熱量を低減する半導体を使用したBMSの開発を進めています。
次に、バッテリーパックに大電流を流す技術です。大電流を流すコネクターは、どうしても「挿抜」を行うと擦れなどにより、インピーダンス(交流回路における電気抵抗の値)が上昇してしまいます。安価なコネクターで、約6000回挿抜するとインピーダンスが上昇して、電流が流れなくなります。
そこで、ナチュラニクスでは、100万回挿抜を行っても、インピーダンスが変化しないコネクターの開発を進めています。インピーダンスを変動させないことで、メンテナンスコストを低減させることが可能です。
次に、大電流を流して充電を行うと、充電器の損失が大きくなります。そこで、GaN(窒化ガリウム)半導体を充電器に使用することで、充電器の電力損失を低減させて、冷却体積の低減及び低コスト化を実現しています。
ナチュラニクスでは、これら4つの研究開発技術を使用することで、数分の急速充電を行っても、バッテリーを劣化させず、バッテリーの廃棄量を低減させます。4つの技術を使用してできたサンプルのバッテリーの充電時間は3分です。
バッテリーのサイクル寿命は10万回です。バッテリーの使用温度環境は-30℃から60℃です。しかし、このバッテリーは、まだまだ研究開発の段階のため、価格が高いのが問題となっております。
そこで、先ほどのバッテリーパックほど充電時間や寿命に特性を持ったバッテリーではないですが、安価に提供できるバッテリーパックをご紹介します。それは、マンガン酸リチウムのバッテリーパックです。その充電時間は15分。バッテリーパックのサイクル寿命は、1万回を超えます。使用温度環境は、-10℃から45℃です。
現在、安価に提供できるためナチュラニクスでは、まずこちらのバッテリーパックの販売を開始しています。
そして、タイ・バンコクで、われわれの技術を使用したバッテリーパックと充電ステーションを使用した電動バイクシェアサービスを開始します。また近い将来、タイにバッテリーの組み立て工場を建設し、世界中への出荷を進めて参ります。
われわれのバッテリーパックの供給先としては、ドローン、ロボット、電動自転車、自動走行ロボット、電気自動車、電動バイクなどを想定しています。
さあ、一緒に世界中に充電インフラを拡張させて参りましょう!
TJRI編集部
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