連載: 日系スタートアップ
公開日 2023.02.07
昨年11月16日に開催されたスタートアップイベント「ロック・タイランド#4」で、ピッチイベントに登壇した日本のスタートアップ企業紹介の第8回は、都市の交通渋滞に対応し、柔軟な移動を提供する自走型ロープウェイを開発する「Zip Infrastructure(ジップ・インフラストラクチャー)」だ。同社で海外営業・調達を担当するレボンキン・マリオイアンカロスフェリド氏のプレゼンテーションを紹介する。
私たちZipはとある深刻な社会課題の解決に挑戦する日本のベンチャー企業です。その課題とは交通渋滞です。世界では交通渋滞によって、毎年7兆バーツもの経済損失が発生しており、この問題は特に東南アジアで深刻に表れています。皆さんは渋滞を考慮した時間で動くことを強いられています。もう一時間寝たいと思ったことや家族と一緒に過ごしたかったと思ったことはたくさんあると思います。経済的な面だけなく、生活の質という意味でも交通は私たちに大きな影響を与えます。
渋滞にはたくさんの原因がありますが、その原因を解決するための一つの施策として私たちが着目したのはロープウェイです。
ロープウェイは建設コストが低く、導入までの期間が短い乗り物です。また、定時性が高く、CO2も排出をしない、高架軌道のため交通渋滞を発生させない特徴を持った優れた交通機器です。
ただ既存のロープウェイには一つ大きな欠点があります。システム上、カーブを設ける際に大きな施設が必要となり、基本的には直線でしかルートを設計できないため、入り組んだ都市部での導入には適していません。
そのため私たちZipはロープウェイの交通機器としての利点を生かしつつ、柔軟な移動を提供する次世代の交通システムとして「Zippar」を開発しました。
「Zippar」は抵コストで都市部の柔軟な移動を提供する新たな交通機器です。既存のロープウェイはロープとゴンドラが一体化して、ロープ自体が動かすのに対し、Zipparの場合ロープは固定されたまま、車両がモータとバッテリにより自走する点が大きな違いです。「Zippar」は直線部ではロープを、カーブ部では軽量のレールを使うことで、都市部でのズムーズな移動を提供できます。
駅では通常、車両が低速走行し、人は「Zippar」にこのように乗降します。ベビーカーや車いす向けに停車して乗れる、エリアを設けることもできます。
「Zippar」の強みはコストと建設期間です。通常のモノレールや鉄道が1キロメートルあたり25億バーツ、建設期間10年かかるのに対し、「Zippar」のコストは20%以下の1キロあたり3億5000万バーツ、建設期間1年で完成できます。
道路上に建設可能なため、土地買収が最低限に抑えられることと、軌道は主に柱とロープを使っているため、建設期間短縮とともにコスト削減を実現しています。
私たちのターゲットはラストワンマイルの交通手段です。「Zippar」は主要駅間を繋いだり、主要駅と住宅地、病院、大学などの最終目的地を繋ぐ「フィーダー交通」としての役割を果たします。
LRT(軽量鉄道)やバスでは交通ニーズに応えきれないエリアに「Zippar」を入れていくことで、移動の選択肢を増やし、よりスムーズな都市交通を築いていきます。
現在、私たちは日本の地方政府と連携協定を結び、日本で実寸大車両と試験線でのPoC(Proof of Concept:概念実証)を開始し、2025年に日本での第1路線の開業に向けて取り組んでいます。
タイの交通課題を解決するため、本国で「Zippar」を導入するための地方政府、不動産会社、鉄道会社のパートナーを探しています。
私たちのミッションは世界の交通渋滞をなくし、すべての人にスムーズな移動を提供することです。交通渋滞のない世界を実現するための一歩を、タイで始められるための応援とサポートをいただけると幸いです。
TJRI編集部
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