次代の中核産業人材育成を担う 泰日工業大学

次代の中核産業人材育成を担う 泰日工業大学

公開日 2014.09.27

日・タイ経済協力協会 初代理事長・穂積五一(左)と泰日経済技術振興協会 初代代表ソンマーイ・フントラクーン(右)の銅像

泰日工業大学(Thai-Nichi Institute of Technology、以下TNI)は、日本の産業技術移転を目的に2007年開学した比較的新しい大学だ。開学当初は大学・大学院合わせて433名だった在籍学生数は、2014年には約4400名となっている。TNIの魅力と同大学が目指す将来の展望について、バンディット・ローッアラヤノン副学長と吉原秀男学長顧問に話を伺った。

TNI開学の経緯

TNIは〝ソーソートー〞の略称でも呼ばれている泰日経済技術振興協会(TPA)が母体である。TPAはタイと日本の友好とタイ産業界の人材育成を目的に、日・タイ経済協力協会の初代理事長・穂積五一氏の支援の下、1973年に設立された非営利団体だ。初代代表は元大蔵大臣であるソンマーイ・フントラクーン氏。現在、事業として語学学校、技術書や語学教本などの出版事業、技術セミナー研修、工業計測機器の校正、JSME(日系企業の進出相談)、IT事業、工業省からの委託による診断事業などを行っている。
TPAは創立30周年を機に、産業界への多岐にわたる研修事業の経験と実績を踏まえ、優秀な産業人の育成とタイ産業界への人材供給のため、大学設立を決める。こうして、日本企業と連携することで〝日本型ものづくり実践教育〞を中核とした、今までにない大学〝TNI〞が誕生した。

ものづくり に根ざした教育

今日、テクノロジーの発達は目覚しく、その変化に応じた能力を有する人材育成が重要課題だ。TNIのすべての履修課程には〝ものづくり〞の現場ニーズに合わせた能力育成主義が採用されている。
その背景について吉原氏は「タイには175程度の公立・私立大学がありますが、必ずしも〝ビジネスに直結している〞という大学ばかりではないんです。当校では、学生に現場のニーズに対応した即戦力となってもらえるようなカリキュラムを設計しています」と話す。そして、その能力育成主義の柱となっているいるのが、①技術力②経営力③語学力④規律と対人関係能力―の4つだ。
技術力:TNIでは大学院を含め、すべてのコースで履修者が理論、原理、考え方、技術を実際に現場で活用できる人材になれるよう計画。ワークショップでの実習やプロジェクト実施、企業見学、実務研修、タイおよび日本の専門家による講義、日本への研修旅行など、さまざまなプログラムを用意している。
経営力:経営管理の知識と基本的な技術を身に付け、個人レベル、グループレベル、さらには組織レベルにも対応できるように履修者を育成。履修者は高い能力と職務に対する自己開発精神を有することを目的にしている。
語学力:今日の情報化社会において、境界のない知識とテクノロジーの交流に着目し、聞く、話す、読む、書くの語学4技能を重視。英語と日本語を必修課目および選択課目に設定し、卒業時には英語と日本語でのコミュニケーションが可能となるよう配慮。タイと日本のみならず、グローバルに活躍する人材を育成する。
規律と対人関係能力:学生に組織で働くという意識を理解してもらうため、すべての履修過程にチームワークと規律(倫理観)を重視することを取り入れている。物事を自分で判断し意思決定できる、判断力が付くことにも繋がっている。

即戦力を育てる3つの学部と大学院

arayz sep 2014 sub tokushu

TNIでは工学部、経営学部、情報学部の3学部と工学技術学、情報技術学、工業経営学、上級企業経営学の大学院4コースが設定されている。また、日本版MBAとも呼べる2014年度新設大学院の日本語・経営学コース(MBJ)では、特に日本語学習に重きを置き、会計、財務、人事、マーケティング、ロジスティックス、国際経営など、日本企業、日系合弁企業、日系企業のサプライヤーなどに必要な課目を多数取り入れ、これからの日系企業になくてはならない知識と技能を修得できる。
工学部では、日本をはじめ、世界有数の自動車組立・部品産業、電機・電子関連企業が生産拠点をタイに設けていることから、金型・各種部品の設計・製造、組立ラインシステム管理、品質管理など学生が工業製品と、これらを支える産業の〝ものづくり〞の現場で即戦力になるよう、専門的知識を持った技術者の育成に注力している。また、2013年度より新設された電気工学コースに加え、自動車工学、生産工学、コンピュータ工学、経営・ロジスティックス工学の5コースがある。
経営学部では、生産管理、品質管理、資本運用、人材開発・管理、流通管理、サプライチェーン管理、企業診断など、さまざまな分野の管理能力を身につけることを目標としている。TNIでは企業の幹部が各種システムの効果的・効率的な管理、自己変革と〝改善〞能力を内的に持つ組織と環境整備、商品・サービスの価値向上、さらには社員能力の向上に努める必要があると考えている。経営学部コースは今、日系企業への就職口が幅広く、注目されている日本語・経営学(BJ)のほか、工業経営学、ビジネス・工業経営学(社会人用)、国際経営学、会計学と2014年度新設の日本語・人事管理学の6つ。
情報学部では、コンピュータ・プロムラミング、データベースとコンピュータ・ネットワークの設計・管理、マルチメディア技術、コンピュータ・グラフィック、経営データ処理、ERP、業務統合ソフト、企業資源計画、顧客管理、ウェブサイト上のサービスなど、さまざまな方面に活用する能力を身につけることに重きを置く。情報通信技術(ICT)がなくてはならぬ今日の企業の即戦力となる人材を育成する。コースは情報技術学、マルチメディア技術学、ビジネス情報技術学の3つ。

arayz sep 2014 sub tokushu
安倍首相は「坂の上の雲」など、日本の書籍を寄贈

arayz sep 2014 sub tokushu安倍晋三首相はTNIを3度訪問している

次ページ:グローバル人材に必要な語学力の強化

THAIBIZ編集部

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP

SHARE