カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.09.16
全体的にタイの住宅不動産市場は堅調と言える。タイ人の平均収入は右肩上がりで、TNSO(タイ国家統計局)の調べによれば、月平均の家計所得が1万5000バーツを超える層が全体に占める割合は2009年時点の44%から13年には56%へと増加。富裕層に加え、より良い暮らしを求める中間層が厚みを増していることから、バンコク首都圏ではこの数年、中間層にも入居や購入が可能なコンドミニアムが増えつつある(図表参照)。
中間層の増加とアセアンのハブとして発展が見込まれるタイへは日系の大手不動産開発、住宅メーカーも参入している。三菱地所グループは2013年からタイ大手デベロッパーのAP社と共同で、バンコクの中心地に大規模なコンドミニアム開発を進めており、最近ではアソークエリアに総戸数1600戸を超えるコンドミニアムを手がけ、1ベッドルームを中心に分譲を始めた。
三井不動産グループも現地有力デベロッパーのアナンダ社と共同で分譲住宅事業を拡大しており、8月には推進中の4物件に加え、新たにバンコク中心地から10 ㎞圏内、ペッチャブリエリアやバンナーエリアにおいて5物件の事業推進に合意したことを発表。同グループにおけるバンコクでの分譲住宅事業戸数は8000を超えている。
日系はじめ、多くの外資系企業が自動車産業の集積するタイ東部チョンブリ県、ラヨン県の工業団地に製造拠点を構えており、バンコクから車で2〜3時間の距離にあるこのエリアで勤務する外国人は、チョンブリ県シラチャやパタヤに居住するのが一般的だ。
特にシラチャの街には日本食レストランなどが増えており、日本人にとって暮らしやすい環境ができている。タイ消費財大手のサハグループが運営する商業施設『J-PARK』には、スーパーマーケットのマックスバリュ、ツルハドラッグといった日系テナントが入居。日本人顧客を多く持つサミティヴェート病院はシラチャー院にも日本人相談窓口を設けている。
一方で同エリアにおける外国人駐在員向け賃貸住宅は需要に供給が追いついておらず、現在コンドミニアムの開発がラッシュを迎えている。日系でも今年5月にはジャルックスグループがシラチャエリアにおける不動産の開発と運営を発表。
サハグループと東急電鉄による合弁企業、サハ東急コーポレーションは日本人学校シラチャ校前に、日本人向け賃貸住宅を開発、8月より予約受付を開始した。日本人学校では2015年8月現在、保護者の勤務地によってバンコク校とシラチャ校で学区を指定しており、勤務地がバンコク都内であればバンコク校。チョンブリ県あるいはラヨン県の場合はシラチャ校と定められている。同社はシラチャで特にファミリー向けの賃貸住宅が不足していたことに注目、プロジェクトが発足された。ターゲット層が日本人ということもあり、住宅メーカーには積水化学工業とタイ素材大手のサイアム・セメントの合弁企業であるSCGセキスイの工業化住宅を採用。玄関やキッチン、防犯ガラスにはLIXILの製品を使用し、短い工期で遮音性・気密性などに優れた住宅を作り上げた。不動産と住宅開発に関する日本の技術とノウハウが詰まったプロジェクトとして、注目を集めている。
東京急行電鉄株式会社
国際事業部 プロジェクト企画部
事業推進課課長中村 恒次氏
サハ東急コーポレーションがシラチャで開発を進める日本人向け賃貸住宅『ハーモニック レジデンス シラチャ(以下、ハーモニック レジデンス)』は、8月14日からショールームをオープンするのと同時に予約受付を開始。これに先立ち、本プロジェクトの説明会兼ショールームの内覧会が催された。
東急電鉄の中村恒次氏は、今プロジェクトについて「ハーモニック レジデンスはJ-PARKから車で約5分、日本人学校シラチャ校のほぼ目の前に位置し、高速道路の7号線にもほど近く、シラチャ中心地の渋滞を回避して通勤できる好立地です。電気や水道、プレイグラウンドなどの周辺インフラについても当社グループであるチョウカンチャン・トウキュウ・コンストラクションが請け負っています。
現在、同校には約400名の生徒が通学しているにも関わらず周辺にはファミリー向け物件が不足しており、タイ東部工業地帯に赴任している駐在員ファミリーは父親が単身赴任せざるを得ないのが現状です。当社は日本の田園調布・洗足に始まり約90年にわたり街づくり事業を行ってきました。これまで蓄積してきた歩車分離のノウハウなどをハーモニック レジデンスでも生かしており、目の前にあるオイスカ幼稚園までは専用の通用門を設けるなど、子供が家から学校まで安全に通える環境を作りました。全180戸中、第一期の69戸は今年12月には入居開始予定で、賃料は2LDKで59,400バーツ~(VAT・サービス別)と、お客様からはこの仕様、高品質であるのにリーズナブルな賃料水準とのお声をいただいています」と紹介。
東急電鉄が行う街づくりの根幹にあるのはコミュニティの形成であり、それに付随するかたちとして鉄道業がある。シラチャエリアにはまだまだ開発の余地があり、『東急多摩田園都市』が半世紀以上の歳月をかけて地域開発されているように、今後どのような発展を遂げるかに期待したい。
ハーモニック レジデンス シラチャ
SAHA TOKYU CORPORATION CO., LTD.
999 Moo 11 NongKharm, Sriracha, Chonburi 20230
TEL:038-338-380 / 098-565-6271(日本語窓口 後藤)
http://harmoniq.sahatokyu.co.th
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