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連載: タイ企業経営者インタビュー
公開日 2023.10.03
タイで大型ショッピングモールを開発、運営する不動産大手サイアムピワットは創業後、タイで初の5つ星ホテルと初の国際規格の商業施設を開発した。2018年に開業した大型複合施設「アイコンサイアム」には日本の高島屋も出店している。新型コロナウイルス流行期には、タイ国内の多くのショッピングモールが休業を余儀なくされるなど小売業は大きな打撃を受けた。チャダティップ・チュトラクル最高経営責任者(CEO)は同社の事業概要や、コロナ危機の克服方法や業績の推移、サイアム高島屋での事業戦略などを熱く語った。
(インタビューは8月9日、聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTJRI編集部)
目次
チャダティップ氏:サイアムピワットは、1959年に私の父で陸軍大将だったチャルムチャイ・チャルワットが「サイアム・インターコンチネンタルホテル」を設立して創業した。チャルムチャイはタイ政府観光庁(TAT)の初代総裁でもあった。当時もタイは観光ハブを目指していたが、5つ星ホテルなど観光業のインフラはまだなかった。このため、われわれは観光をサポートする不動産会社として事業を始めた。そしてサイアム・インターコンチネンタルホテルはタイ初の5つ星の国際ホテルとして1966年にオープンした。さらに、1973年にはタイ初の国際規格の商業施設として「サイアム・センター」を開設した。
われわれは従来ないようなユニークな施設の開発を目標に、「Collaboration to Win(勝つためのコラボレーション)」という戦略で事業を展開している。これは、国内外の企業と連携し、共にアイデアを出し合い、新しいものを生み出していくというものだ。さらに、タイの観光業が持続的に成長できるよう国のイメージを高め、世界中の人々にタイに来てもらうという目的もある。商業施設を数多く建設するのではなく、世界有数の商業施設を開発することを目指している。
サイアムピワットはさまざまな不動産を開発しているが、特に小売業に力を入れている。合計49の子会社があり、多くの商業施設を運営している。例えば、サイアム・パラゴン、サイアム・センター、サイアム・ディスカバリー、パートナーとの合弁事業であるアイコンサイアム、サイアム・プレミアム・アウトレット・バンコクなどだ。顧客はタイ人が中心だが、約25%は外国人で主なターゲット顧客は中高所得者層だ。
チャダティップ氏:われわれは土地建物を所有者しているだけではなく、テナント(借主)のパートナーだ。危機を乗り越えるため、テナントをサポートしている。方針は「Revenue share」で、店舗の売り上げに応じて賃貸料が変わる。テナントの店舗の売り上げが減少すれば、われわれも賃料を引き下げる。このため、われわれも各店舗の売上高を伸ばす支援をする特別チームを作っている。新型コロナウイルス流行は深刻な危機であり、人々の生活や意識を大きく変えた。われわれは 「Reimaging」という戦略を立て、次のような3つのチームに分けた。
1) 「ONESIAM Warrior」チームでは経営層(Top management)の代わりに、日々課題に直面している中間管理職(Middle management)に問題解決の決定権を与えた。
2) 経営層チームは会社の管理に集中する。例えば、約3000人の従業員の管理やデジタル化、仕事の効率化を目的とした組織の再編成などだ。
3) プランニングチームは企画を担当し、コロナ収束後に会社をどのような方向に進めていくかという戦略を検討している。
2022年の売上高は、店舗での本格営業を後半の6カ月しかできなかったにもかかわらず、2019年と同水準まで回復した。特に高級ブランドのテナントの売上高が非常に伸び、危機にもかかわらず成長を続けることができた。われわれのテナントをサポートできたことがとても嬉しかった。
チャダティップ氏:アイコンサイアムとサイアム高島屋は2018年に営業を開始した。コンセプトは最高の商品と店舗を選んで、出店してもらうことだった。また、本格的な日本の百貨店に出店してもらいたかったため、高島屋と何度も意見交換をした。高島屋はタイのマーケットとタイ人を理解することを望んでいた。一方、当社は高島屋の事業運営方法を勉強したかったことから、「サイアム高島屋」という合弁会社を設立し、事業提携することになった。サイアム高島屋の開業予定の約3年前から計画を立て準備をしていた。日本ブランドのタイ出店では高島屋が誘致した5軒の日本食レストランは成功した。
しかし、営業を開始してから14カ月後に新型コロナウイルス流行に直面した。われわれは高島屋や日本の店舗と十分に話し合って、商品や営業計画を大幅に変更した。サイアム高島屋はさまざまな問題にうまく適応できた。現在は売上高も順調に伸びており、毎月、記録を更新している。さらに、来年も商品の見直しに加え、全フロアで高級ブランドが新規出店する予定だ。
チャダティップ氏:タイの百貨店は非常に強いので、日本の百貨店がタイで事業展開する際は課題も多い。また、日本人は商品の品質にこだわっているが、タイではプロモーションや会員管理が非常に重要だ。高島屋は日本の百貨店をタイ人に気に入ってもらえるようにしたいと考えていたが、こうした日本的な方法ではタイでの成功は難しい。タイのことを学びつつ、改善していくことが重要だ。われわれはサイアム高島屋のマーケティングを手伝った。
昨年は、日本から和菓子職人を招き、和菓子作りのイベントを行ったところ、多くの顧客が参加してくれた。こうした試みが売り上げを伸ばすための重要なポイントだ。サイアム高島屋にはすでに常連客が増えてきており、タイでの持続的な成長は可能だろう。今後も、われわれとサイアム高島屋が協力してタイ人が好きな商品を探し、さまざまな日本のブランドや店舗が新規出店できるようにしたい。
チャダティップ氏:タイ人にとって日本は好きな国であり、昔から良いイメージで見ている。また、日本製品は品質が良く、常にタイ人の心の中にあり、日本企業にはまだ多くのチャンスがあると考えている。しかし、日本で成功した方法がタイで成功するとは限らない。さまざまなビジネス戦略を理解して展開すれば、タイで必ず成功できるだろう。タイは賃料や、その他の費用などもかなり安く、日本企業にはぜひタイに来ていただきたい。われわれのすべての商業施設は、日本のあらゆる種類の出店や合弁事業、協力などを歓迎している。すぐに店舗を開設するのではなく、最初にポップアップストアで試すこともできる。例えば、3カ月間タイの市場を試し、われわれもマーケティングを支援する。これはタイの市場を学ぶための良い方法だ。
TJRI編集部
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