連載: タイ企業経営者インタビュー
公開日 2024.12.24
タイランドプリビレッジ・カード(TPC)は、外国人向けの長期滞在ビザプロバイダーとしての役割を担っており、タイを東南アジア諸国連合(ASEAN)地域における長期滞在のハブとして位置づけるために活動している。
2,500人以上の日本人会員を持つ同社にとって、日本は重要な顧客の一つであり、タイと日本のパートナー企業とともに日本人顧客をターゲットとした積極的なマーケティング活動を展開している。タイの長期滞在促進は両国の関係をより強化するとともに、日本人がタイの「微笑みの国」としての魅力をより深く体験し、親しむことにもつながる。
同社のマナテート・アンナワット社長に、事業概要やサービス内容、中国人を含む外国人のタイ滞在動向などについて話を聞いた。
(インタビューは10月10日、聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTHAIBIZ編集部)
目次
マナテート社長:タイランドプリビレッジ・カード(TPC)は2003年に、観光の促進を目的にタイ国政府観光庁(TAT)傘下の機関として設立され、高所得の外国人に、5~20年以上の滞在を可能とする「タイ・エリート・ビザ(PEビザ)」を発給している。このビザは、観光ビザ(プリビレッジ・エントリー・ビザ:PE)に分類され、外国人のタイ滞在およびタイでの事業展開を促すことを目的としている。われわれは、タイをASEAN地域における長期滞在のハブとして位置づけることを目指している。高い購買力を持つ外国人の滞在が、タイ経済の成長と発展を促進する重要な原動力となっているからだ。当社が展開する事業は主に次の3つだ。
1) 会員カードの種類に応じて、5~20年のタイ滞在を可能とするビザサービスの提供
①2024年12月15日以降に利用可能となった最新の「BRONZE」メンバーシップ:
会費は65万バーツ、有効期間は5年。基本特典として、出入国時のVIP待遇「シグネチャー・エアポート・サービス」や、90日レポートのサポート「エリート・パーソナル・リエゾン(EPL)」などがある。
②「GOLD」メンバーシップ:会費は90万バーツ、有効期間は5年。年間あたり20ポイントを取得でき、取得したポイントは特典に交換できる。
③「PLATINUM」メンバーシップ:会費は150万バーツ、有効期間は10年。年間あたり35ポイントを取得できる。
④「DIAMOND」メンバーシップ:会費は250万バーツ、有効期間は15年。年間あたり55ポイントを取得できる。
⑤「RESERVE」メンバーシップ:会費は500万バーツ、有効期間は20年。年間あたり120ポイントを取得でき、宿泊、旅行、投資サポート、健康などの特典に交換できる。招待制で、年間100名限定。
2)会員向け特典の提供
①シグネチャー・エアポート・サービス:エリートパーソナルアシスタントによる入国時と出国時のVIP待遇およびエスコート、入国審査とパスポートコントロールの迅速な処理、専用ラウンジの利用。
②エリート・パーソナル・リエゾン(EPL)サービス:バンコク、チェンマイ、パタヤ、プーケットにおける90日レポートの入国管理局サービスや政府機関への連絡支援など、タイ滞在中の利便性を図るためのサポート。
③メンバーコンタクト:英語は24時間対応、日本語は午前6時から午後9時まで対応。
3)以下5つの追加特典の提供
①ホテルと宿泊施設での特典「ステイ」
②航空券および空港リムジンサービス「トラベル」
③ゴルフ、スパ、コンサートチケットの特典「レジャー」
④健康診断サービス「ウェルビーイング」
⑤400社近くのパートナーネットワークを駆使した、財務および投資管理支援サービス「ウェルス」
マナテート社長:われわれの顧客層は、主に4つに分けられる。一つ目は、固定収入を持つ外国人投資家やビジネスパーソンだ。ビジネスを目的にタイでの長期滞在を希望するこの層は、全体の40%を占めている。二つ目は、定年退職後、タイでの滞在を希望するシニア層だ。全体の14%を占めている。三つ目は、タイで長期的に働く会社員や駐在員で、全体の13~14%を占めている。四つ目は、デジタルノマド(リモートワーカー)で、この層は5%未満だ。
会員構成では、中国人が最も多く、次いで日本人、アメリカ人の順となっている。そして、勉学やビジネス目的でタイを訪れるロシア人やミャンマー人の会員数も伸びている。現在、3.7万人以上の会員がおり、そのうち日本人は2,500人以上だ。会員総数は2022年時点の約2万人から2倍近くまで増加し、国に500億バーツ以上の経済効果をもたらした。
マナテート社長:日本人のお客様には、ゴルフやスパ、空港サービスなどのサービスが人気だ。以前、日本人会員の多くは50~60歳代が50%以上を占め、定年退職後にタイに移住する方が多かった。しかし、最近では30~49歳の日本人会員が40%近くまで増加している。フリーランスなどといった柔軟な働き方の普及、海外ローテーション、タイの物価の安さなどが要因だ。最近の会員の年齢層が若年化しているため、われわれは健康診断などの福利厚生サービスに力を入れている。
日本人向けには、さまざまな方法でマーケティングを行っている。例えば、BTSの駅広告や、日本の雑誌広告などを通じて、認知度向上に努めている。また、東京、大阪、仙台などで、TATおよび代理店とともにPRイベントやタイのフェスティバルを開催したり、タイと日本の文化交流会に参加したり、オフラインのマーケティングにも注力している。
マナテート社長:近年、中国人の入国がかなり増えている。ほとんどはタイに何度も出入りしている人たちだ。30~49歳の年齢層が中国人顧客の50%を占めている。家族でタイに長期滞在し、子どもをタイの学校やインターナショナルスクールに通わせているケースも多い。この層はタイ社会に適合しやすく、潜在能力が高い。
マナテート社長:現在の日本の総販売サービス代理店(GSSA)は、株式会社大丸トレーディングおよび株式会社エイチ・アイ・エス(HIS)タイ現地法人の2社だ。政府機関として、引き続き代理店を増やしたいと思っている。ビジネスを共に展開できる企業があれば、非常に喜ばしいことだ。
マナテート社長:ここで働くことは、自分にとって非常に重要だ。ライフスタイルにも合っており、自己実現を果たせる場だと感じている。前職では海外出張が多く、小売業界と不動産業界で、ハイクラス顧客との仕事を経験してきたため、この顧客層をよく理解している。現在では、日本にも頻繁に出張しており、パートナーとの会話を通じて、日本人の行動傾向やライフスタイル、文化などを学んでいる。これまでの経験をうまく活かすことで、事業の継続的な改善が実現できていると思う。
マナテート社長:タイは、駐在や現地でのビジネスを希望する外国人にとっては魅力と利点を備えた国で、ASEAN地域におけるビジネスハブでもあるほか、高度なヘルス&ウェルネス産業や手頃な生活費、充実したインフラといった強みもある。タイに滞在することは、ASEAN諸国へのビジネス展開のチャンスになるとともに、魅力的なタイの文化と豊かな生活を直接体験できる機会にもなる。新たなビジネスチャンスも生まれ、タイと日本の協力・提携の強化にも繋がっていくだろう。
THAIBIZ編集部
在庫管理の新時代!全体最適でタイ製造業の競争力を強化
対談・インタビューSponsered ー 2024.12.26
タイをASEAN地域における長期滞在のハブに ~タイランドプリビレッジ・カード(TPC)のマナテート社長インタビュー~
対談・インタビュー ー 2024.12.24
シンハーの製品開発センターを視察 〜TJRIミッションレポート〜
協創・進出 ー 2024.12.23
【日タイ経済共創ビジョン特別対談】産業構造の変革期、深化する日タイの経済成長戦略
協創・進出 ー 2024.12.11
ASEANのEV市場、タイとインドネシアが牽引〜日本企業の活路は?
自動車・製造業 ー 2024.12.11
編集部が選んだ!2024年THAIBIZオンラインのニュース記事
ニュース ー 2024.12.11
SHARE