ArayZ No.76 2018年4月発行知的財産 最新情報(前編)
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カテゴリー: 会計・法務
公開日 2018.04.19
「知的財産制度」は、人間の知的創造活動によって創作されたアイディア、ネーミングなどを創作した人だけが独占的に実施できる権利を与えることで、そのアイディア、ネーミングなどを財産として保護するという制度である。例えば、新製品を開発した場合にその新製品に用いられた新しい技術(発明)は「知的財産」の一つとなる。この技術について特許権を取得すれば、自社だけがその技術を利用することができ、他人はその技術を利用することができなくなる。
「知的財産」の代表的なものとして、「発明」以外に「デザイン」や「ブランド」などの様々な種類がある。技術的なアイディアである発明・考案を保護するのは「特許権」・「実用新案権」、商品の名称などのブランドを保護するのは「商標権」、またデザインを保護するのは「意匠権」となる。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つを産業財産権ともいい、これら産業財産権は出願を行い、登録されることで初めて権利が発生するが、「著作権」は著作物が誕生した瞬間に発生する。
【特許】:特許制度は、新しい技術に関するアイディアつまり発明を保護するための制度で、各国の特許庁に出願し、審査において方式要件及び実体要件(発明が新しいものか、など)を満たしていると判断されれば特許権が発生する。権利期間は概ね出願日から20年としている国(日本・タイ含む)が多い。
【実用新案(小特許)】:実用新案制度は、発明というほどではない改良などの考案を保護するための制度で、各国の特許庁に実用新案登録出願し、所定の要件を満たしていると判断されれば実用新案権が発生する。日本と同様に実体要件の審査を行わずに登録する国も多い。また、権利期間は特許権に比べて短い国が多い。
【意匠】:意匠制度は、デザインを保護するための制度で、各国の特許庁に出願し、所定の要件を満たしていると判断されれば、意匠権が発生する。意匠権の権利期間は各国によるところ、タイでは現在10年としている。
【商標】:商標制度は、自社の商品・サービスを示すためのマーク、つまり商標を保護するための制度で、各国の特許庁などに出願し、所定の方式・実体要件を満たしていると判断されれば、商標権が発生する。権利期間は更新を続けることで半永久的に同じ商標権を使用できる。
【著作権】:著作権制度は、思想や感情を創作的に表現した文芸、学術、美術、音楽といった著作物などを保護するための制度で、著作物が創作されたときから自動的に著作権が発生し、原則として著作者の死後50年間権利が保護される。
ここで、我々の身の回りにあるスマートフォンを例に挙げながら、どのような知的財産が、どのような知的財産権で保護されているのかについて説明しよう。16ページの図をご覧いただきたい。
これら権利は保護対象が異なっており、特許権であれば、リチウムイオン電池や液晶ディスプレイパネルに関する発明が保護対象となり、商標であれば、例えば「JETRO」といったブランドが保護対象になり、意匠であれば、スマートフォンのスタイリッシュな形状などのデザインが保護対象となる。
このように、スマートフォンは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権といった各知的財産権によって保護されており、1つの商品であっても多数の権利により保護されていることが多い。例えば1つのスマートフォンには数千とも言われる特許権が含まれている。
タイで事業展開するにあたり、自社の会社名や商品名、自社製品の核となる技術や斬新なデザインなどについて、知的財産権を予め取得しておくことをお勧めする。もちろん、権利の取得には費用も時間もかかるため、その国での費用対効果を精査して権利を取得しないという判断もあるだろう。しかし、第三者に自社の会社名や商品名を冒認出願※されてしまうなど知財について争いが生じた場合には、はるかに多くの費用・時間がかり、最悪の場合には知財が原因で事業がストップしてしまうこともある。
そこで、まずは「知的財産の保護」に焦点を当てて、タイにおける最近の「特許・意匠・商標の出願状況」、「出願から実際に権利化されるまでの期間」について説明する。
※冒認出願:特許権や商標権、意匠権などに対し、出願する権利のない者が出し、権利を取得してしまうこと。特許権の場合、発明者でない者が、その発明について特許を受ける権利を承継していないにもかかわらず出願し、権利を取得することを指す。出願を審査する審査官には、出願人が本当に権利を取得すべき者であるかどうかを判断をすることが困難であるため、冒認出願により権利化されてしまう恐れがある。
△ WIPOの統計データ、タイ知的財産局のANNUAL REPORTに基づいて作成
17ページ棒グラフの「Resident」はタイ人による出願を意味し、「Non-Resident」とはタイ人以外の外国人による出願を意味する。特許、意匠、商標出願ともに全体の出願件数が徐々に伸びていることが分かる。また、円グラフによれば日本からタイへの出願件数が多いことも分かる。注目すべき点は、意匠出願はタイ人からの出願件数が多く、かつ出願件数が伸びている点である。タイはアセアン知財行動計画2016-2025のイニシアティブ「クリエイティブ ASEAN」において推進国(Country Champion)を務めているように、デザイン振興が総じて高いこと、タイ政府主導のもとでデザイン開発に力を注いでいる点からも窺える。
このように、タイでは特許、意匠、商標出願件数が順調に伸びている。実際に権利化されるためには審査官による審査が必要だが、残念なことに特に特許権に関して審査待ち(バックログ)の件数が非常に多くなっている。2016年5月時点では、審査待ち案件が38000件程度にのぼるとタイ知財局より報告がなされた。そこで、「出願から実際に権利化されるまでの平均期間」についての統計データがこちら。
ArayZ No.76 2018年4月発行知的財産 最新情報(前編)
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THAIBIZ編集部
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