ArayZ No.76 2018年4月発行知的財産 最新情報(前編)
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カテゴリー: 会計・法務
公開日 2018.04.19
タイの知財侵害訴訟においても同様に、商標権・著作権に関する事件が多いことが分かる。また、一般に知財権利者にとって費用及び時間上の効率を考慮すると、刑事訴訟による対応が有効な手法であると考えられており、上記統計データからも明らかと言える。裁判所からの聞き取り調査によれば、外国企業同士の裁判は比較的少なく、原告が外国企業、被告がタイ企業の裁判が大半を占めているという。また、民事訴訟では一般に長期化する傾向があるものの(主な理由として件数の増大、両当事者の出廷調整に時間を要することが挙げられる)、被告が早い段階で罪を認める場合や出廷に応じない場合には比較的短期で判決に至る。同様の場合、刑事訴訟では即日に判決に至るケースもあるようである。
そのほか、税関による商標権、著作権侵害品に対する押収件数についても統計データを入手しているので参考にしていただきたい。
タイにおける税関の取り締まり対象物は商標権・著作権侵害品にとどまり、特許権・意匠権侵害品に対しては取り締まり対象となっていない。また、タイへの輸入品に対する差し止めに重きが置かれており、実務上、タイからの輸出品の差止制度がないこともあって、中国からタイへ流入された後、再びタイから他国へ模倣品が輸出されるケースもある。
権利者の自衛対策として、税関差止申し立ての手続きを行った後も、税関職員に対して真贋判定情報やホワイトリスト(正規代理人の情報等)を提供するなどが必要。
なお、税関差止申立ての手続きは、商標権による保護マークについて、タイ知財局・侵害抑制部へ税関差止め申立の申請を行うことで、タイ税関が同知財局を通じて申立情報を入手し、税関差止め商標登録データベース(Thaiipr.com)へ登録するとともに、タイ代理人(権利者)に対しログインID・パスワードを発行することとなる。現場の税関職員は「Thaiipr.com」の情報を確認して貨物検査・連絡している。権利者の「代理人の情報、連絡先」に変更があればアップデートするように。
Thaiipr.comの詳細はこちら。
http://www.thaiipr.com
タイの知的財産の状況を理解したところで、次にタイ政府による知財の保護・活用に向けた取り組みをご紹介する。
21世紀初頭の現在において、世界の国々が経済を推進させるべく経済モデルの創出と発展に努めており、タイもその一つである。タイ政府は、プラユット首相と国家平和秩序委員会(NCPO)の管理下で、「タイランド4・0(Thailand4.0)」の政策ビジョンを示し、イノベーション主導の経済成長モデルへ変えようとしている。この「タイランド4・0」の政策ビジョンの中で、知財の保護・活用を促進すべく、20年間にわたる「タイIP(Intellectual Property)ロードマップ」が示されている。
「タイランド4・0」についてはご存知の方も多いだろう。タイは、絶えず経済モデルを変化、改善させており、現在に至るまでタイランド1・0、2・0、そして3・0のフェーズを通過してきた。タイランド1・0は農業の発展を中心とした時代で、2・0では安価な労働コストを使用する軽工業へシフトした。3・0では外国投資を誘致し輸出を促進するべく、国内生産に重点を置くようになった。3・0の当初こそ約7~8%の成長率を達成していたものの、その後悪戦苦闘し、所得不平等と不均衡な発展を生んだため、経済モデルの改善を続け、4・0に至る。
現在タイ政府は、人々の仕事を効率化させて人生を豊かにすることを目指し、産業主導から革新的な製品開発へ、生産ベースからサービスベースの経済モデルなどに移行したいと考えている。
次に「タイIPロードマップ」の概要について。タイIPロードマップは、2016年から2036年にかけて、ステップ①~ステップ⑤の5段階を徐々にステップアップする計画で、6つのテーマを掲げている。現在、ステップ②の段階に入っており、タイ政府は主に「権利化期間の短縮」と「知財侵害品の完全な根絶」に尽力している。
ArayZ No.76 2018年4月発行知的財産 最新情報(前編)
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THAIBIZ編集部
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