脱「コピー天国」に向けて 知的財産 最新情報(前編)

ArayZ No.76 2018年4月発行

ArayZ No.76 2018年4月発行知的財産 最新情報(前編)

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脱「コピー天国」に向けて 知的財産 最新情報(前編)

公開日 2018.04.19

※レッドゾーン:タイ政府によって多数の模倣品・海賊版が公然と販売されていると指定されたエリア2016年9月時点で、MBK MallやJJ Marketなど計24カ所が指定されている。その他のエリアはこちら(タイ語)。
http://www.ppb.moi.go.th/midev06/ upload/20160927.pdf

テーマ1、知的財産の創造

研究開発の促進を主目的とするもので、誘致環境の整備やイベント整備など、様々なコミュニケーションチャネルの活用を模索している。タイ知的財産局は、一般国民に対し知的財産への意識を向上させて知的財産の創造を支援するべく、ウェブサイトやFacebookページなどのSNSを利用した知財に関する広報活動をしている。

テーマ2、知的財産の保護

知的財産権の保護は、上述した通り、特許・商標審査官による膨大な審査待ち案件(バックログ)に関する問題を解決することである。

アセアン諸国の中でタイの権利化期間が一番長いと言われており、タイ知財局としては本審査・登録プロセスを加速するべく、法改正や規則・ガイドラインの策定、他国の知的財産庁で既に審査された審査結果を有効活用するなどして審査期間の対策を講じている。

また、出願や審査プロセスのオンラインサポートを充実させており、出願人は、アカウント登録することで、特許・商標・著作権などのオンライン出願(e-Filing)ができるほか、一元管理できるようになる。

テーマ3、知的財産の権利行使

タイ政府は国内で模倣品・海賊版が氾濫している状況を打開すべく、プラユット首相の指揮の下で、バンコク内で模倣品・海賊版が横行するバンコク市内の8のターゲットエリアを選定し、当該エリアで模倣品・海賊版を撲滅する計画を実行した。その結果、SapanLek、Wireless Roadの2つのターゲットポイントは既には模倣品・海賊版の撲滅に成功した。現在、その他のターゲットについても取り組んでいるところである。

またタイ政府は、MBKMall、JJ Market、Karon Beach、Patong Beach、Rong Kluea Marketなどの模倣品・海賊版が氾濫している主要エリアに対して、模倣品・海賊版に関する問い合わせ窓口となるIP Enforcement Center(IPEC)※を設置している。

※IP Enforcement Center:知的財産局、経済警察、特別捜査局等の執行当局職員が常駐し、当該職員が不定期に巡回するほか、第三者からの情報提供を受けて「模倣品・海賊版を販売する店舗」に対し知的財産権侵害に対する執行措置を講ずるもの。

△MBKでの侵害品の検査、出典: DIPホームページ

テーマ4、知的財産の商業化

目新しいタイ政府の取り組みとして「IP IDE Center (Intellectual Property Innovation Driven Enterprise Center)」と「IP Mart」がある。

・IP IDE Center
オンサイトのアドバイザリーサービスとして4種類のサービスを提供しているほか、IP学習ツールを備えている。
(1)情報サービスと技術動向の分析(Techno Lab)
(2)ベンチャー企業を革新主導型企業に導くためのアドバイス(Idea Lab)
(3)知的財産の管理に関するガイダンス(Value Lab)
(4)企業への国際的な知財産保護のための誘致(Inter Lab)
詳細はこちら。
http://ipidecenter.com/?lang=en

・IP Mart
今年1月に開設され、知的財産に関する取引を扱っているオンラインプラットフォームであり、具体的には、ビジネスマッチングをサポートできるようにバーチャルスペースを提供している。

本ウェブサイトによって公開されている製品は、知的財産権によって保護されたものであって、タイ知的財産局によって認証されたものである。買い手と売り手は、本システムを通じてリアルタイムで交渉することができる。3月末時点で、トップ画面はタイ語または英語表示可能となっているが、具体的な製品情報はタイ語のみである。

テーマ5、地理的表示(GI)

(GI:Geographical Indication)
地理的表示について具体的には、ナコンパトム県のソムオーナコンチャイシー(ポメロ)など計87品目(全てタイからの登録)が既に登録されている(3月末時点)。今後、地理的表示製品の登録を拡大すること、すなわちタイの各県で少なくとも1つ以上のGI製品を登録するよう促すことで、タイ全土にわたって高品質なタイ製品の知財保護を促進しようと取り組んでいる。

テーマ6、遺伝資源(GR)伝統的知識(TK)、伝統的な文化表現(TCE)

GR:Genetic Resources、遺伝情報を含む生物学的物質の一部であり、再現または再作成されるもの。

TK:Traditional Knowledge、原住民の社会または地域社会における世代から世代へ伝わるもので、「文化的」な知識と実践をもつもの
TCE:Traditional Cultural Expressions、民俗の表現とも呼ばれる。音楽をはじめ、舞踊、歌、芸術、デザインなどに対する保護。

近年、特許権などの工業所有権よりも馴染みやすい知的財産として、テーマ5、6を保護しようとする動きがあり、タイ政府内で具体的な保護制度について議論中だ。

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THAIBIZ編集部

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