ArayZ No.77 2018年5月発行知的財産 最新情報(後編)
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カテゴリー: 会計・法務
公開日 2018.05.21
△ナラーワン氏、石川氏
目次
主に「審査期間の大幅短縮」を目的とした特許法改正案について、2017年5月に第1回パブリックコメント、2018年1月に第2回パブリックコメントに付された。タイ知財局によると2018年末までの改正法案成立を予定しているとのこと。直近で公開された改正法案の内容によれば、特に日系企業から要望のあった「出願公開時期の法定化」、「審査請求の出願日基準化」、「新規性の世界公知基準の明確化」、「自発分割の導入」、「登録後の誤記訂正」、「ライセンス登録制度の緩和」、「ライセンス登録閲覧の制限」といった改正内容が盛り込まれている。
一方で、「職務発明制度による報酬の算定基準」が不明瞭であることや、「タイで第一国出願をする場合に外国語で特許出願をすることができない」、「部分意匠制度が導入されていない」、また、「登録後の軽微な誤記訂正を認める条項が新設されたものの、誤訳訂正までは認められない」、といった課題は依然として残されている。
主に「再犯の厳罰化」、「非伝統的商標(音商標)」、「出願多区分制の導入」、「標章の国際登録に関するマドプロ※条約加盟の対応」を目的とした改正商標法が2016年7月に施行されている。その後、2017年9月より音商標の出願受付が開始され、また同年11月よりマドプロ国際出願の受付が開始されている。
※マドプロ:商標の国際登録制度について規定する国際条約の略称であって、正式には「マドリッドプロトコル(マドリッド協定議定書)」という。同制度を利用することで、日本で提出する一つの出願手続きのみで複数国に一括して出願手続を行うことが可能になる。所定の条件はあるものの、複数国で商標の権利化を図りたい場合には手続面やコスト面で大きなメリットがある。なお、2018年4月20日時点の加盟国は101ヵ国であり、タイが99番目、インドネシアが100番目に加盟した。
インターネットショッピングの普及が進む中で、より具体的で実効的な模倣品対策プログラムの採用が望まれていたところ、インターネット上の模倣品販売業者への対策として、まず2015年8月に著作権法が改正され、続いて2017年5月にコンピュータ犯罪法が改正された。
同犯罪法では、オンライン上の知財権侵害に対処するための新たな執行措置を含む解決手段が導入されている。具体的には、デジタル経済社会省の役人が、知財オーナーから提出された証拠を基に裁判所に申立てを行い、同裁判所から裁判所命令を受けることで、役人に対し知的財産権を侵害するコンテンツへのアクセスをブロックする権限、またオンラインコンピュータシステムから侵害しているコンテンツを削除する権限が与えられることとなった(同犯罪法第20条)。これを受けて、タイ知財局のウェブサイトには、2017年9月より、模倣品が掲載されたインターネットサイトの削除申請などに係る新たな規則、具体的な手続が掲載された。
今後の予定として、タイ知財局では現在、著作権法の改正案を準備しており、同改正案にはオンライン犯罪に対する保護を強化する目的として、ノーティスアンドテイクダウン※制度が盛り込まれる予定とのことである。
※ノーティスアンドテイクダウン:ショッピングサイトなどのインターネットサービスプロバイダが、権利侵害を主張する者からの通知に基づき、権利侵害情報であるか否かの実体的判断を行うことなく当該情報の削除などの措置を行うことで、当該削除に係る責任を負わないこととするもの。
同知財部では、アセアン10カ国、特にメコン地域(タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス及びミャンマー)を対象国として、日系企業などの知的財産に関する業務をサポートすべく、主に次の知財業務を行っている。
各種調査を行っている。例えば昨年度は、「タイにおける権利執行状況に関する調査」、「アセアン主要国の税関における知財関連法規・運用実態の調査」などを行いHPにアップしている。
また、主に東南アジアのメディアで報道された知財ニュースを収集し、「東南アジア知財ニュース」としてメルマガ配信をしている。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/ip.html
「特許や商標の権利を取得するためにはどうすれば良いか」、「模倣品が出回って困っている」などの相談のほか、「最近の知的財産の法改正状況や統計情報について知りたい」といった質問も受け付けている。タイの法律事務所へ行く前の事前相談としての活用も可能。
SEAIPJは、東南アジア地域における横断的な日系企業の知財活動を支援する場として、2012年3月に発足。ジェトロが同ネットワークの事務局を務めており、東南アジアに進出する日系企業の支援を行っている。
東南アジア各国当局との意見交換や要望書の提出、メンバー間による知財分野での協働、知財関連情報の共有を進めているほか、東南アジアに関する法改正状況や判例など、より専門的な知財ニュースのメール配信を行っている。お申し込みは知財部または、上記URLまで(無料)。
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THAIBIZ編集部
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