ArayZ No.118 2021年10月発行SDGsのうねり-サステナビリティに進む世界
この記事の掲載号をPDFでダウンロード
掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。
カテゴリー: ビジネス・経済, ASEAN・中国・インド
公開日 2021.10.09
タイをはじめとするアジア各国で絶大な影響力を持つ財閥系コングロマリット。足元のコロナ禍、東南アジアを代表する企業の勢力図や経営方針はどのように変化しているのか、RCEPを見据えた域内での競争力向上をどのように実現させようとしているのかなど、本連載では解説していく。
今回は国営の資源最大手PTTを取り上げる。
目次
業種:オイル及び製造業
設立:1978年
オーナー:タイ財務省 (51.1%)
従業員数:4,616名 (PTT) 、24,680名 (関連会社)
時価総額:2兆6,630億バーツ
総売上:1兆6,157億バーツ
PTT Public Company Limited、略してPTTは1978年、タイ国内の石油および石油関連事業運営を目的に、タイ石油公社(Petroleum Authority of Thailand)としてタイ工業省直轄で設立された。以降、民営化の追い風に乗り、2001年、政府が51%以上を保有することを前提としてタイ石油公社から株式会社へと変更。同年内に登記資本金200億THBでタイ証券取引所に上場した。現在、タイの財務省が51.1%を保有しており、最大株主となっている。
20年末時点では、23の子会社及び合弁5社、系列会社6社など30社以上にてグループは構成されており、21年5月末時点のグループ時価総額は2兆6,630億バーツ(約850億USD)と、タイ上場企業の時価総額全体の15%を占めている。また、Fortune Global 500にランクインしている唯一のタイ企業でもある。
中核事業である石油・ガス事業は自社で手掛けつつも周辺事業はグループ会社が担い、広範な事業分野をカバーしている。川上の探査・採掘などの事業はグループ子会社であるPTT EPやPTT LNGなどが中心となって行い、川下であるリテール、最終商品生産、新規事業などはPTT ORやThai Oil、PTTGC、IRPCなどの子会社が担っている。
昨年5月、組織改編により同社に30年間務めてきたAuttapol Rerkpiboon氏が、10代目となる代表取締役兼会長として任命された。原油価格の下落、新型コロナウイルス蔓延による経済低迷による危機対応への取り組みについて、本人のリーダーシップや決断力が評価されての任命とされている。
今年に入って同社はグループビジョン“Powering Life with Future Energy and Beyond”を発表した。その骨子は既存事業を強化しながらも、エネルギー分野で未来型エネルギー(Future Energy)事業の開拓と、新規領域(Beyond Energy)への参入を宣言したものである。
結果として足元の中核事業である石油・ガス事業からの依存度を下げていくことも狙いとして含まれている。この実現のため、21年から30年までの投資の80%は既存事業に、10%は未来型エネルギー事業に、残りの10%は新規領域の開発に配分することも明らかにしている。
中核事業については、川上の資源開発部門で積極的に海外投資を行い、特にLNGにおいては地域ハブになることを目標とする。
直近でもオマーンやアルジェリアの油田開発プロジェクトに投資するなど海外プロジェクトに積極的に取り組んでいる。なお、川下の小売事業でもガソリンスタンド付設カフェから始まったCafé Amazonをベトナムで展開するなど、海外でのプレゼンス拡大に注力する。
未来型エネルギー事業に関する取り組みでは、再生可能エネルギー事業の海外展開、電気自動車のバリューチェーン構築、水素エネルギーの開発などが挙げられる。
事業推進については他社とのパートナーシップを積極活用する。その一例として今年5月に台湾の大手電子メーカー鴻海科技集団(Foxconn)と電気自動車及び部品生産プラットフォーム構築に対する覚書を交わした。
また、新規領域への参入については、ライフサイエンス分野への参入を図っている。その中心にある会社が、昨年12月にライフサイエンス事業会社として設立されたInnobic (Asia) Co., Ltd.である。
グループはこの子会社を中心に製薬・医療機器・機能性食品などの展開を進めていく方針。同社にとって新規分野となるため外部との協業は必須であり、台湾の製薬大手Lotus Pharmaceutical社に出資(株式6・66%、約5000万米ドル)、ASEAN市場への攻略を目標として掲げている。
また今年4月にはPTTのグループ子会社で石油化学事業を手掛けているIRPCとグループ内で合弁会社を設立、不織布マスクや医療用消耗品を生産・販売する。
5月には、ジャックフルーツからたんぱく質を抽出するベンチャー企業NR Instant Produce PCL.に3億バーツの投資を発表し、22年の年末には稼働を開始する予定である。
このように、既存事業ではアセアンのハブを目指すとともに、伝統的なエネルギー事業に留まらずグローバルトレンドへの積極的な対応や、今まで手掛けていなかった新規領域に対しても内外のパートナーと挑戦し続けていくことで、今後もタイ最大企業としての立ち位置を盤石にしていくものと考えられる。
ArayZ No.118 2021年10月発行SDGsのうねり-サステナビリティに進む世界
掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。
MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
Managing Director
池上 一希 氏
日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に入社、2018年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等に取り組む。
MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
ASEAN域内拠点を各地からサポート
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、 民間企業向けの各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援など幅広い事業を展開しています。
Tel:092-247-2436
E-mail:[email protected](池上)
No. 63 Athenee Tower, 23rd Floor, Room 5, Wireless Road, Lumpini, Pathumwan, Bangkok 10330 Thailand
法制度改正と理系人材の育成で産業構造改革を ~タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)のウィワット氏インタビュー~
対談・インタビュー ー 2024.11.11
海洋プラごみはバンコクの運河から ~ タイはごみの分別回収をできるのか ~
ビジネス・経済 ー 2024.11.11
中国系太陽光パネル会社の次の一手、タイのデジタル経済19%増
ニュース ー 2024.11.11
タイの明日を変える!イノベーター大特集
特集 ー 2024.11.11
タイ製造業が挑む!省エネからはじまる脱炭素化への道
対談・インタビューSponsered ー 2024.11.11
ミャンマー人の海外労働者の給与送金に関する通知
会計・法務 ー 2024.11.11
SHARE