カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.06.16
昨今、話題を集めているバンコク〜チェンマイ間700kmを結ぶ高速鉄道プロジェクト。タイ政府は日本政府と日本の新幹線技術を導入することが盛り込まれた 覚書を締結している。また、路線上には世界遺産のあるアユタヤやスコータイなどがあることから、新たな観光資源としても期待されている。
もうひとつ注目を集めているのが、ミャンマー、タイ、カンボジアを横に繋ぎカンチャナブリ・バンコク・チェチュンサオ・アランヤプラテートとレムチャバン を通る計画の南部経済回廊における鉄道整備だ。これについては2015年2月9日、日本政府(太田国土交通大臣)およびタイ政府(プラジン運輸大臣)との 間で調印された鉄道分野における協力に関する覚書の中の〝近隣国との鉄道接続性向上の観点から、この鉄道整備に係る調査研究について協力する〞という部分 で盛り込まれている。
「この鉄道整備のポイントは、南部経済回廊を通ることです。この路線はバンコクの東側でカンボジア方面と分岐し、レムチャバンまで伸びる計画となっています。この鉄道が完成すれば、旅客の面ではあまり期待できませんが、物流面において一気に追い風となるでしょう。カンチャナブリを西に抜けると、開発に期待が集まるミャンマーのダウェーへ、反対に東のアランヤプラテートを抜けると、タイ+1として日系企業が進出し始めているカンボジアのポイペトへと繋がっていきます。また、調印された覚書には〝タイにおける鉄道貨物輸送の効率改善に向けた協力〞〝在来線(メーターゲージ)の改良、または、標
準軌新線の整備によるタイ全土の鉄道整備に関する将来の協力可能性の追求〞なども含まれています。現状、在来線は運行・運営の管理が行き届いておらず、遅延の発生、貨物運送におけるトラックとのリンクが機能していない、路線が老朽化しているなどさまざまな課題があります。総合的な改善が求められており、JICAとしても早急に支援できないか検討しているところです」(池田氏)。
道路、鉄道などの交通インフラが整備されていけば、ますますAECとしても繋がったアセアン域内の動脈がスムーズに流れていくことになるだろう。
日本は1954年以来、政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)として、開発途上国に資金的・技術的な協力を実施しており、JICA(国際協力機構)はODAのうち、国際機関への資金の拠出を除く二国間援助を一元的に担っている。世界最大規模の二国間援助機関であるJICAは、約100ヵ所にのぼる海外拠点を窓口として、世界150以上の国と地域で事業を展開している。
「タイに対するODAは1954年に技術協力としてタイから研修員を受け入れたことで始まりました。1968年に円借款、1970年には無償資金協力が開始されました。一般プロジェクト無償資金協力は1993年で卒業となりましたが、2011年の大洪水災害の際には、バンコクとアユタヤを結ぶ3つの道路全てが遮断されるという事態が起き、そのうちの1本である9号線に対し、防災・災害復興無償資金協力での改修工事が行われました。標高の低い位置にある区間の道路をかさ上げし、今後、先のような大洪水が発生しても20cm程度の冠水で収まるようになっています」(池田氏)。
【技術協力】
開発途上国の人材育成、制度構築のために、専門家の派遣、必要な機材の供与、途上国人材の日本での研修なども行うもの。幅広い課題に対応する協力内容をオーダーメイドに組み立てる。
【有償資金協力(円借款)】
一定以上の所得水準を達成している開発途上国を対象に、長期返済・低金利という緩やかな条件で開発資金(円貸)を貸し付けるもの。多くの資金を要する大規模なインフラなどにあてられる。
【無償資金協力】
所得水準が低い開発途上国を対象に、返済義務を課さずに開発資金を供与するもの。学校、病院、井戸、道路などの基礎インフラの整備や医薬品、機材などの調達にあてられる。
JICAタイ事務所
31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey Bangko k 10110
02-261-5250
www.jica.go.jp/thailand
THAIBIZ編集部
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