公開日 2016.06.22
「工場の自動化」という概念は、日本において1960年代〜70年代の高度経済成長期に誕生したとされ、製造工程の一部で機械化・自動化が可能になった背景には、この時代の技術革新が影響している。
この頃から日本市場の消費形態は多様化し、大量生産・大量消費に適した量産型の生産から、より新しい製品や個性を求める消費者ニーズに対応する多品種少量生産へと移行すると同時に、ひとつの製品に対するライフサイクルが短期化した。従来の量産型生産システムでは生産効率やコスト、生産管理などが対処できなくなり、この状況に対応できる、多品種少量生産に適合したフレキシブルな生産システムが求められるようになった。例えば、日本の自動車業界では、完成車メーカーなどが自らシステム構築を主導。機械メーカーは完成車メーカーからの高度な技術要求に応える形で、産業用ロボットや制御機器など、それぞれの得意分野に特化したより高次元な製品開発に注力しながら、FA化は進められていった。
FA機器の製品開発は、マイクロエレクトロニクス(ME)の技術革新に支えられたところが大きい。70年代以降、集積回路(IC)を中心とした半導体技術は急速に進歩し、その技術はコンピュータばかりでなく、あらゆる分野の製品に活用された。エレクトロニクス化が進んだことで品質向上、軽薄短小化、低価格化が実現。生産面ではコンピュータ制御による機械加工ができるNC工作機械が登場し、さらには人間の作業を一部代替えできるような、多様な処理を可能にする産業用ロボットも実用化されていった。
実は「工場の自動化」と訳されるFAに、明確な定義はないと言われている。例えば、コンピューターメーカーでは工場全体の省力化システムのことを指し、メカトロニクス製品メーカーは自動化システムの一部などが定義される。 広域で捉えれば、工程におけるオートメーション生産システム内の〝物の流れ〞、つまり、材料の搬入から出荷に至るまでの生産活動自動化を図るものであり、その工程中にある加工、製造、組立、運搬、検査、測定、保管などにおいて、先述のNC工作機械のほか、産業用ロボット、自動検査・調整装置、自動搬送装置、自動倉庫などといったあらゆるFA機器がさまざまな場面で活躍している。
タイのFA事情について、KEYENCE (THAILAND) CO., LTD. の亀井隆志Managing Director は、「昨今、タイで製造される製品の品質への要求が非常に高まっており、その品質は日本製と同じレベルを求められています。そのためには当然ながら日本と同等の製造技術が必要ですが、日本に比べて熟練工が少ないタイではヒトに頼らない高度な自動化が求められます。品質を保証し、高度な自動化を実現するために、より高精度な検査、測定、観察を実現できる機器や現場のさまざまな課題を解決できる製品へのニーズが高まっています」と話す。
KEYENCE( THAILAND) CO., LTD.
亀井隆志 Managing Director
ロボットの定義について、経済産業省の「ロボット政策研究会報告書」(2006年)の中では、センサ、駆動系、知能・制御系の3つの技術要素(ロボットテクノロジー)を有する機械システム」とされている。ロボットには自立歩行するヒューマノイド(人型ロボット)から、家庭用のお掃除ロボットまで、さまざまなものがあるが、その中でもっとも多く利用されているのが産業用ロボットだ。
産業用ロボットの特徴は汎用性が高いことにあり、1台でさまざまな工程に対応できるため、他品種のものを量産する製造現場で利用されている。もとより自動化に積極的だった自動車、電気電子業界で多く導入されており(図表)、今後ますますFA化が進めば、産業用ロボットはより幅広い業界で活用されることが予想される。
参考:FAロボット.com (www.keyence.co.jp/gazo/special/visionsystem/fa-robot/)
【出典:2013年 国際ロボット連盟(IFR:International Federation of Robotics )】
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THAIBIZ編集部
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