カテゴリー: 特集
公開日 2017.03.29
プラユット・チャンオチャ首相
タイは産業高度化を推進し高所得国へ成長するため、①次世代自動車、②スマート電子機器、③高付加価値の観光・メディカルツーリズム、④効率的な農業・バイオテクノロジー、⑤将来のための食料―の既存産業分野5つと、❶自動機械・産業用ロボット、❷航空宇宙、❸バイオ燃料・バイオ科学、❹デジタル産業、❺医療・健康産業―の新規産業分野5つを合わせた10の産業分野に注力していく(図表6)。
既存産業分野の5つは短期・中期的に進展させ、経済成長の持続性を維持。新規産業は長期的に育成していき、経済の飛躍的な成長を目指す計画だ。
プラユット首相は、「タイランド4.0」の実現には、経済・環境・天然資源のバランスによる持続的な経済発展、地域格差の是正、インフラ整備、タイ近隣国との連結、人材育成と、さまざまな課題があることを踏まえ、産業高度化を推進するタイ政府の中核事業「東部経済回廊(EEC)」が経済発展の中心地になることを強調した。
この構想は、東部経済回廊(EEC)エリアにあたるチェチュンサオ県、チョンブリー県、ラヨーン県の東部3県において、高度技術を使用する対象産業やインフラとロジスティクス整備事業、観光地開発事業、研究開発事業と技術分野をサポートするサービス業を重点的に促進していくほか、3県を前出の10産業分野の育成を推進していくエリア基盤にするというもの。現在、法案審議中で変更される可能性があるが、この3県は投資促進地区と定められ、法人所得税を免除された基本恩典グループ(グループA)に対し、さらに5年間法人所得税が50%減税になる権利が付与されるが、2017年中に投資申請書を提出しなければならない。
また、同地域はタイの工業化が始まった場所でもあることから、自動車、エレクトロニクス、繊維、製油所、ガスプラント、プラスチック、化学製品など、さまざまな産業が展開されている。ここで作られたものだけでなく、タイ国内で作られたものは、レムチャバン深海港やマプタプット深海港、経済回廊、国際空港などを通じて世界に輸出されている。同地域では既存のインフラを活用しつつ、今後5年間で1.5兆バーツを投じてウタパオ空港の拡張・整備、レムチャバン深海港の拡張、高速鉄道の敷設といった多種多様なプロジェクトが進められていく予定だ。将来的には航空、物流、貿易、製造、観光、イノベーション、グローバルビジネスのハブとして、ワールドクラスの経済圏となることを目指しており、今後も関連政策の動向に注目したい。
ヒランヤー・スチナイBOI長官
BOIの基本恩典は「投資奨励方」に沿った、7ヵ年戦略(2015~21年)対象産業への投資奨励である。主なものとして、8年以下の法人所得税免除や機械・原材料および研究開発(R&D)に使用する物に対する関税の免除、土地所有権、外国人熟練者の導入などがある。
現在、実施されている奨励策は、エリアベースのものでは特別経済開発区(SEZ、10県)、南部国境地域(4県4郡)、低所得県(20県)、工業団地・工業地帯、科学技術開発区(例:サイエンスパーク、フードイノポリスなど)。メリットベースのものでは研究開発(R&D)、教育・研究機関や技術・人材開発基金の支援、知的財産ライセンス、高度技術研修 、ローカルサプライヤーの開発、製品・容器のデザインといった分野が推進されている。
このほか、タイ国内のSMEs(中小企業)で可能性を有する事業に対して恩典の追加および条件を緩和する中小企業対策。農業(食料、食料以外の加工)や地域観光(観光インフラ・観光資源開発)などの国内強化対策。省エネルギー、代替エネルギー利用、環境負荷低減のための機器の交換、オートメーション化など、効率向上のための機器の交換および効率改善のためのR&D、エンジニアリング・デザインへの投資といった 、生産効率改善対策も図られている。
今回さらに、投資奨励法改訂版(BOI+)と特定産業競争力強化法(BOI++)の、2つの法律が施行されたことが発表された。BOI+とは、タイが高い可能性を有する基幹技術に対する投資の奨励(Technology-based)であり、委員会が定める高度な技術や技術革新を利用する事業、研究開発事業に対して9〜13年の法人所得税が免除される。
BOI++とは、「タイランド4.0」政策に基づく投資の奨励(Strategic Investment)であり、国の課題に対応でき、従来の手段では誘致できないインパクトの大きい新たな投資に対し、交渉により最長15年以内の法人所得税が免税される。
また研究開発、イノベーションの促進、専門人材の育成に対する投資支援のほか、100億バーツの基金が設立される。詳細については、今後発表されていく予定だ。また、東部経済回廊(EEC)については、特別法を策定中である。施行されれば、地域別の恩典の選択肢がさらに増えることになるだろう。
ジェトロ・バンコク事務所の長谷場 純一郎氏
【取材協力・監修】
ジェトロ・バンコク事務所
16th Fl. of Nantawan Bldg.,
161 Rajadamri Road, Bangkok 10330
02-253-6441
www.jetro.go.jp/jetro/overseas/th_bangkok/
当記事は2017年2月時での内容となります。詳細はタイ投資委員会(BOI)のウェブサイト(www.boi.go.th)をご参照いただくか、BOI問い合わせ窓口(Tel:02-553-8111/E-mail: [email protected])までお問い合わせください。
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