タイを知る。タイ人を知る。タイ人部下の育て方を知る。日経ビジネススクール

タイを知る。タイ人を知る。タイ人部下の育て方を知る。日経ビジネススクール

公開日 2017.07.31

日系企業が抱える課題を解決に導くコンテンツ開発を行う「日経ビジネススクール(NBS)アジア」。2017年は、現地化の鍵となるタイ人マネージャーおよび次期マネージャーといった、企業の中核を担う「ローカル人材育成」に焦点を当てている。タイを、タイ人を、そしてタイ人部下の育て方を知ることで、タイを基点としたメコンビジネスの行く先が見えてくる―。

キーワードは3つの〝現〟

日本経済新聞社はタイトップの教育機関などと提携し、タイ・メコン地域をはじめ広くASEANビジネスの要諦を解説するとともに、タイにおける日系企業の現地化推進のための人材育成・研修機会の拡充を目的に、首都バンコクで「日経ビジネススクール(NBS)アジア」を2015年11月よりスタート。3年目を迎える2017年度は、より現場に即した研修機会を開発、講座ラインナップをさらに充実させた。

5月末から6月にかけて開催された講座の第一弾、「タイ・メコンマネジメント&人材育成フォーラム」では、在タイ日系企業マネジメント層向けにタイ・メコン地域で事業を成長させるための知識や考え方を、各分野のプロフェッショナルたちが「タイを知る」、「タイ人を知る」、「タイ人部下の育て方を知る」という3つの視点から伝授。日本とは似て非なるタイでのビジネス。その根底に流れるタイの現状、タイ人の意識や文化背景を知り向き合うことによって、現地における事業展開、組織づくりについて再考する機会となった。

また、今年度新たに始動するのが「NBSビジネスミッション」だ。タイを窓口としたメコン市場を知るため、「現場に行って、現物を見て、現実を知る」の3現主義に基づき、タイ市場の最前線に立つローカル企業や政府公的機関を訪問。ローカル市場で成功、活躍する企業の経営者や事業責任者との面談をセッティングしているほか、業界に通じたゲスト陣による解説も盛り込んでいる。統計から読み取るマクロな数字も大事だが、現場のリアルが必ずしもその数字通りとは限らない。ミッションによってはタイ人消費者の本音を聞きだす企画もあり、よりリアルなタイの状況、ニーズ、活用できる資源を知ることのできる、体験型の視察プログラムとなっている。

日経ビジネススクールアジア2017の第一弾、「タイ・メコン マネジメント&人材育成フォーラム」の1回目は「タイを知る」をテーマに、アジアの最高峰・タイの名門チュラロンコン大学サシン経営管理大学院で長年にわたり教鞭を取る藤岡資正同大学院日本センター所長・名古屋商科大学ビジネススクール教授と、アジア有数のリーダーシップ研究者であるシリユッパ同大学院准教授が、メコン地域を基点とした地域事業戦略の可能性と、そこで求められるリーダーシップの在り方について講義を行った。

タイが直面する状況を見極め、戦略を構築する

多くの新興国がそうであるように、タイも急速な経済成長を遂げた一方で、複雑な政治的、社会的な問題を抱えています。「中所得国の罠」は以前から注視されてきた課題ですが、産業の高度化に求められる「高度人材の不足」、「技術・イノベーションケイパビリティーの向上」などに適切に対応しながら、拡大する所得格差などタイが従来から直面している課題を解決していかなくてはなりません。企業が構築すべき事業戦略や組織変革と人材育成についても、こうした新たな文脈に合わせて適応していかなくてはならない部分を見極め、実践に落とし込んでいく必要があります。

今後とるべき地域事業戦略と組織戦略、高度人材育成の在り方について考えた時、日系企業は「リーダー育成の大幅な遅れ」という課題を抱えています。殊に新興国においては、これまで優秀な人材として定義されてきた責任感や忠誠心、協調性などに加えて、チームを率いて事業をまとめるリーダーシップ、決断力、CFO・CTOなど特定機能の統括をできる人材などを備えた人材が求められています。

今の時代を一言で表現するならば、「変化」の時代です。私たち(企業)が何を目指しているのかという基軸がないと、変化の時代には流されてしまいかねません。絶対的な価値感を持つこと、そしてそれをどれだけ発信できるか。考えてから動くのではなく、考えるために動く時代であり、文脈に合わせて正しい問いを立てているか、検証すべきでしょう。

売上と企業価値が上がることだけが企業の成長ではありません。利潤と道徳の調和を図れるか、道徳的イマジネーションが日本企業には求められています。組織として何ができるのか、本質を考え、事業展開していくことが重要です(藤岡氏)。

2030年に向けた次世代リーダーに求められる資質

事業環境の不明確さが増す中で求められるのは、「Resilience」なリーダーです。Resilienceには、しなやかさを持った強さ、つまり失敗したとしてもそこから学び戻ってくる強さという意味があります。

アジアのリーダーには「人材開発」、「チームビルディング」、「戦略的な考え方」、「企業のビジョン」、「問題解決力の要素」が欠けているという調査結果が出ています。タイ人は、仕事を人生の一部として捉えており、重要視するのはチームの関係性です。心をつかめれば、タイ人はリーダーに付いてきます。尊重の念を持ち、正しい質問をすることで考えてもらうという、コーチングが効果的でしょう。
2030年に向けてタイが直面すると予測される、労働力とクオリティの低下、労働賃金の上昇、スキル人材不足という課題に対し、「戦略的な考え方」、「成功への努力」、「組織内コミュニケーション力」、「人材育成能力」、「コーチング」、「変革管理」、「創造性とイノベーション」などの要素を持ったリーダーが必要だと言えます(シリユッパ氏)。

シリユッパ・ルンレーンスック 氏
チュラロンコン大学サシン経営管理大学院准教授

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THAIBIZ編集部

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