カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.06.28
先週も大麻の家庭栽培自由化絡みの報道とインフレや食品価格に関するニュースが多かった。6月25日付のバンコク・ポストは7面の政治コラム欄の「カンナビスをめぐる激突」というタイトルの記事で、大麻解禁をめぐる二人の注目政治家の駆け引きを解説している。同記事はまず「政界の二人の輝けるスターが先週衝突した。一人が舞台を駆け上がる、あるいはもう一人が相手を蹴落とす可能性を人々は噂している」と書き出している。
二人のうちの一人はアヌティン副首相兼保健相で、カンナビスを麻薬リストから除外したことが同氏をスターダムに押し上げたと表現。自ら党首を務める政権与党のタイ誇り党が、不可能と思われた大麻の栽培自由化という選挙公約を実現したことで、党首としての自信を深めているとし、次回の総選挙での勝利にもつながると考えているという。
一方で、大麻自由化に対し、医療関係者から過剰摂取の危険性、特に若者の使用に対して数多くの警告が出されている。さらに、バンコク都のチャチャート知事が大麻を過剰摂取した4人が都管轄の病院に搬送され、このうち51歳の男性が心不全で死亡したことを明らかにしたことで、大麻解禁実現によるタイ誇り党の高揚感は沈みつつあるとしている。
このチャチャート都知事の発表後、アヌティン副首相は、この発表には「隠された動機がある」とした上で、政治問題化すべきでないと反論。カンナビスの麻薬リストからの除外は医療が主目的であり、不健全な使用には警告していると主張している。タイ貢献党のインラック政権時代に運輸相を務めたチャチャート氏の発表は、大麻解禁によるタイ誇り党の躍進に歯止めをかけようという意図があるかもしれないという関係筋の見方を伝えている。
チャチャート氏は都知事選での地滑り的勝利以後、新聞、テレビなどに頻繁に登場するようになっている。22日付のバンコク・ポストは経済面で、タイ工業連盟(FTI)と、環境に優しい工場の促進、水の浄化、バンコクでの緑地拡大で合意したと報じている。またバンコクの主に低所得者層が居住するクロントーイ地区で住民の所得向上を狙いに「スマート農業・工業」に関するプロジェクトを推進していくという。バンコクに住む人間としては、これらが単なる将来の選挙に向けた人気取り政策だけではないことに期待したい。
オンラインメディアのザ・スタンダード・ウェルスは24日、料理宅配サービス「LINE MAN」を運営する「LINE MANウォンナイ」の調査結果として、ガパオライスなどの「一皿料理」の平均価格が過去1年間で3.66バーツ(6.7%)上昇し、商務省発表のインフレ率の7.1%に近付いていると伝えている。同調査はLINE MANウォンナイが宅配するタイの全77県の70万以上のレストランの価格を調査した結果で、2021年の平均価格は新型コロナウイルス流行の影響で小幅低下していたものの、2022年5月の平均価格は57.87バーツと2021年5月の54.21バーツから上昇したという。また、地方県の一皿料理の価格はバンコクよりも平均で7バーツ安いが、価格の上昇率はバンコクより高いとしている。
20日付のバンコク・ポストの別刷り「アジア・フォーカス」1面では、ラオスの財政危機の状況を解説している。ラオスは外貨準備の大幅減少、インフレ高進などスリランカをデフォルトに陥らせたのと同じ状況になっていると指摘。ラオスでは石油価格の上昇と通貨キップの急落に伴い全国で燃料不足が生じ、国民は困窮している。先週、ラオスの信用格付けを「Caa3」に引き下げた米格付け大手ムーディーズの幹部の「ラオスはデフォルトの危機に直面している」とのコメントを紹介している。
TJRI編集部
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