カテゴリー: ニュース
公開日 2023.11.21
タイのセター首相は米サンフランシスコで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため11月13~19日の日程で訪米し、バイデン米大統領、岸田文雄首相など各国首脳と精力的に外交を繰り広げる一方、米国の大手企業幹部にタイへの投資を呼び掛けた。ここではバンコク・ポスト紙で連日報じられたセター首相のトップセールスの様子を紹介する。
セター首相は14日に米電気自動車(EV)大手テスラの工場を視察し、今月中に米国で発売予定の同社初のピックアップトラック「サイバートラック」に試乗。さらにテスラ幹部との会合で、同社がタイへの投資に関心を持っていることを確認し、同社が来年第1四半期中にも投資をするかどうか決断するとの考えを明らかにしたという。
また同首相は14日、ヒューレット・パッカード(HP)の幹部とも会合を持ち、タイへの地域事務所と工場の開設を誘致するとともに、「ランドブリッジ」構想への共同投資も呼びかけた。さらに、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、グーグル、マイクロソフトという米IT大手3社の幹部とも面会し、3社は総額で3000億バーツをタイ国内に投資する意向を表明したという。このうちAWSは当初、3カ所にデータセンターを開設する計画で、マイクロソフトとタイ政府は、タイのデジタル技術での競争力向上と政府の電子サービスの効率化に関して覚書(MOU)に調印した。
セター首相は11月10日、タイ貢献党の総選挙時の目玉政策だった1万バーツの配布計画について、総額5000億バーツの借り入れを財源とするデジタル通貨1万バーツの配布を来年5月に実施すると発表した。当初は16歳以上の全国民を対象とする方針だったが、月収が7万バーツ未満、銀行貯金が50万バーツ未満の16歳以上の国民に変更された。この結果、受給資格のある国民の数は当初の約5600万人から約5000万人に減少する。
16日付バンコク・ポスト(ビジネス2面)はこの計画について詳しく解説している。同記事はまず、この計画の財源としてタイ政府が5000億バーツを借り入れるとの方針が「2018年国家財政金融規律法」に違反するとの学界やエコノミストからの批判が増えているものの、セター首相はこの計画を撤回した場合にはタイ貢献党が選挙公約を実行できなかったとして支持を失う可能性があると懸念しているという。
そして、そもそもこのデジタル通貨計画が緊急に必要な理由について、セター首相は「4年の任期中に国内総生産(GDP)伸び率を年平均5%にするとの目標を設定しており、タイを中所得国から高所得国に移行させるためのジャンプスタートにしたい」という動機があるとする。そしてデジタル通貨の利用方法については、新型コロナウイルス流行に伴うプラユット前政権の景気刺激策で使われた携帯アプリ「Pao Tang」を活用する方針だ。利用開始は2024年5月の予定で、1回目の利用から6カ月間、利用可能になるという。
購入可能対象商品は、食品・飲料などの消費財で、サービス、オンライン販売、アルコール類、たばこ製品、カンナビス製品、金や宝飾品、ギフトカード、借金返済、教育、燃料、公共料金支払いなどには使えない。また利用可能エリアは自宅から4キロ圏内で、ほぼすべての小売店舗で利用できるという。
17日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)によると、ジュンラパン財務副大臣は、デジタル通貨配布計画が当初より実施が2~3カ月遅れることで、景気刺激効果がなくなる可能性があるとの認識を示した。タイ政府は当初、2024年2月スタートを想定したが、同年5月に延期された。さらに、財源として5000億バーツの借り入れを行うための法案を議会に承認してもらう必要があるが、財務省は、法制委員会(Council of State)に提案する法案をまだ策定していないという。同財務副大臣は、法制委員会が承認しなかった場合に政府が計画を撤回するかどうかはコメントしなかった。
18日付バンコク・ポスト(2面)によると、タイのチョンナン保健相は大麻(カンナビス・ヘンプ)法の原案に第1版の策定を完了したが、カンナビスが「麻薬」に再指定されることはないことを明らかにした。新法は、カンナビスを娯楽目的で使用することを認めるような抜け穴や、一般市民の懸念に対処するものだという。その中核はカンナビスを依然、「管理されたハーブ」として定義づけ、カンナビスの医療目的の利用は支持する一方、テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が0.2%超の抽出物は引き続き麻薬扱いになるという。
TJRI編集部
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