カテゴリー: ニュース
公開日 2025.03.04
2月26日付のバンコク・ポストによると、タイ中央銀行は政策金利を0.25%引き下げ、2.0%にすると発表。さらなる金融緩和により、タイ政府は経済をより活性化させ、バーツ安によって輸出を促進する狙いだ。タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は、経済に対する「より明確な下振れリスクに対処するため」とその理由を述べた。なお、ロイターによる調査によると、エコノミスト26人のうち10人が今回の利下げを予想していた。
このニュースを受けて、この日のタイ証券取引所(SET)の株価指数は午後半ば時点で前日比1.6%上昇した。バーツは1ドルあたり33.70バーツ前後でほとんど変わらなかった。タイ中央銀行は昨年10月にも0.25%利下げしており、12月の前回会合でも金利を据え置いている。
タイ経済は現在、国内需要や観光業が支えており成長すると見込まれているが、産業部門が構造的な問題や海外製品との競争の圧力を受けていること、さらに主要国の貿易政策によるリスクが高まっていることなど課題が多く、予想よりも鈍化する見込みだという。
今回の利下げについては、インフレ率が目標の1〜3%の範囲内に収まるようにするため、内閣が利下げを要請したことと、借入コストを削減し、債務者の返済能力を改善するには金利の引き下げが必要という国際通貨基金(IMF)の提案を受けたものと見られる。
タイの総合インフレ率は長期間にわたり低水準で推移しており、昨年の平均インフレ率は0.4%と過去4年間で最低となった。1月のインフレ率は1.3%だが、商務省は今年のインフレ率は平均0.8%と予測している。
タイ中央銀行は、この要因は供給側にあると考えており、原油価格の下落や中国製品との価格競争が厳しく、企業が価格を上げにくいことなどが問題になっているという。また、世界の原油価格の変動や国内のエネルギー補助金の影響により、インフレ率は下振れのリスクがある。金融環境もまだまだ厳しく、企業向けの融資状況は安定の兆しがあるが、中小企業向けの融資が引き続き減少している状況であるとの見解を示した。
タイでは家計債務が国内総生産(GDP)の約89%に達しており、これはアジアでも最も高い水準で、多くの人が借金を抱えている状態である。そのため、消費者向けの融資(クレジットローンなど)は減少傾向。なお、エコノミストたちは、家計債務の適正水準はGDP比70%程度だと考えている。
MPCは、今回の金利引き下げは、金融の安定を損なうことなく消費者の家計や企業の借金返済負担を減らすのに役立つと判断したという。
2月24日付のバンコク・ポストでは、自動車産業の現状についてまとめている。日産自動車が海外の3工場を閉鎖する予定であるという報道を受け、タイ投資委員会(BOI)は先日、タイ日産自動車が投資を継続すると発表した。これらの動きはタイの自動車産業が逆風に転換していることを物語っているという。
タイの自動車生産台数は2023年に世界10位、アジアでは5位にランクインしていたが、今年も自動車業界の低迷が続けば、その地位を維持できなくなるだろうとタイ工業連盟(FTI)は指摘。タイの自動車生産台数は2023年以降減少を続けており、昨年は前年比19.9%減の146万台。
その背景には2022年に起きたロシアとウクライナの戦争による世界的な半導体不足と、2023年から続く国内のローン厳格化による販売台数の低迷などが挙げられる。国内販売数の落ち込みにより、東南アジアの自動車市場でタイは昨年第一四半期にマレーシアに抜かれ、インドネシア、マレーシアに続く第3位となった。
BMWグループ・タイランドのレネ・ゲルハルト社長兼最高経営責任者(CEO)は、販売台数ではマレーシアに追い抜かれたが、タイは内燃機関(ICE)車に強く、電気自動車(EV)は今後も成長が見込まれるため、中国も引き続き投資しているとコメントしている。
複数の業界関係者は、冒頭で挙げた日産の例のように、物品税などの投資優遇措置(2026〜2032年は6〜9%へ減税)は国内販売台数を促進し、メーカーにとって生産を促す材料になると示唆している。
FTIは特にピックアップトラックの販売台数が減少していることを鑑み、同セグメントの消費者向けローン増のための50億バーツ基金設立を首相に提案している。この施策により、ピックアップトラック利用の多い小規模事業者や中小企業がローンを利用しやすくなるとみられている。
一方、2月26日付のバンコク・ポストでは、タイの今年の自動車メーカーの販売見通しが暗いにもかかわらず、大衆車ブランドが提供するアフターサービスに対するドライバーの満足度は向上していると伝えている。
調査会社ディファレンシャル・タイランドの最新の調査によると、ドライバーのサービス顧客体験指数(サービスCXI)の平均は、合計1,000ポイント中8ポイント上昇し、893ポイントとなった。サービスの透明性、顧客エンゲージメント、価格競争力への注目が高まっていることを反映しているという。
同調査の回答者はタイ全土の自動車サービスセンターを訪れた2,516人が対象。2021年10月から2023年11月の間に自動車を購入し、2023年12月から2024年12月の間にサービスを受けた人に対して行った。
ランキングは1位トヨタ、2位米フォード、3位長城汽車(GWM)の順。トヨタは昨年比+6ポイントで引き続き最高位に。フォードは+11ポイント、日産は+23ポイントで4位になり、コミュニケーションとコストの透明性の向上が評価されたと予想されている。3位のGWM(895ポイント)は、サービスアクセス性の向上と競争力のある価格設定に定評があり、トップクラスのブランドとしての地位を固めた。
同社のシロス社長は、日本ブランドはサービスの質や透明性、人材育成、強固な信頼性、長期的なロイヤリティでリードしている一方で、中国ブランドは手頃な価格とデジタルサービスの採用で差別化を図っていると評価。
調査結果によると、顧客満足度は積極的なアクセスとデジタルコミュニケーションがロイヤリティを高めているという。リマインダー、アップデート、フォローアップなどのサービス性が高いブランドは顧客維持率が高く、次回のサービスについて積極的なコミュニケーションを受けた顧客の71%が同じディーラーに戻ってくる可能性が高いことが明らかになった。
同社長は、「昨今タイの自動車産業は低迷しているが、まだ成長の可能性があり、国際競争力もあると信じている」と強調し、「マツダのタイにおける50億バーツの追加投資計画のように、既存および新規の自動車メーカーには常にチャンスがある」と語った。マツダは最近、タイを国内販売および輸出用の電気小型スポーツ用多目的車(SUV)の製造拠点とする計画を発表している。
THAIBIZ編集部
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