「トランプ関税、タイに“最悪”の36%課税」「最大3カ月の政権空白、経済活動にブレーキ」

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「トランプ関税、タイに“最悪”の36%課税」「最大3カ月の政権空白、経済活動にブレーキ」

公開日 2025.07.15

7月8日付の公共放送局タイPBSによると米国は来月1日からタイに最大36%の輸入関税を課す方針を発表した。この税率は4月に示されていた最高税率がそのまま適用されたもので、ベトナム(20%)やマレーシア(25%)と比べて最も高く、タイの輸出企業に大きな打撃となりかねない。

これに対し、タイ政府はすでに、①農産品の一部市場開放、②エネルギー調達(米国産液化天然ガス(LNG)やエタンの輸入拡大など)、③米国製航空機(ボーイング機など)の購入、④非関税障壁の見直しや通関手続きの簡素化ーといった再提案を米国側に提示している。

また、同紙は「タイは交渉に臨むも、市場開放の代償に要注意」という見出しで、タイ開発研究所(TDRI)のナナリット・ピソンヤブット上級研究員による分析も併せて掲載している。同研究員は、「国内生産者に影響が出ないよう留意すべき」としたうえで、「影響が避けられない場合には、産業の成長や競争力の強化につながるような、緩和策を伴う取引条件を検討するべき」との考えを示している。


7月2日付バンコク・ポストによると、ペートンタン首相がカンボジアのフン・セン上院議長との通話音声の流出を受けて職務停止となった件について、憲法裁判所が最終的な判断を下すまでに1〜3カ月を要するとみられている。政局の不透明さが長引けば、経済活動への影響は避けられない。

同紙は、タイ証券取引所(SET)指数が年初から23%も下落するなど、世界最悪の市場であると批判。そのうえで、経済界への影響について業界関係者の見解を紹介している。

なかでも、CIMBタイ銀行チーフエコノミストのアモンテープ・チャウラー氏は「首相の職務停止による政治の不透明性は、国内外の投資家マインドに悪影響を及ぼしている」と指摘。特に、政府支出に依存する建設業界は慎重姿勢が際立っており、公共予算に関連するプロジェクトについては、民間企業は当面様子見の構えを取ると見ているという。

一方で、米国の関税措置については、現状ではタイ政府代表団の交渉に大きな支障はないとの見方も出ている。


7月6日付ネーションによると、タイは10年以内に「超高齢社会」に突入するとされており、急速に拡大する高齢者人口を背景に、3兆5,000億バーツ規模の「シルバーエコノミー」が次の経済成長の柱として注目されているという。

タイ開発研究所(TDRI)が国家経済社会開発委員会(NESDC)の委託でまとめた報告書によると、2023年における高齢者の消費支出は2兆1,800億バーツにのぼり、2033年には3兆5,000億バーツに達する見込みだ。高齢者の就労収入も2024年の6,400億バーツから2033年には8,800億バーツまで増加するとされ、高齢者の37%(約660万人)が働き続けると予想されている。

報告書では、高齢者向けの製品・サービスとして特に成長が見込まれる次の4分野が挙げられている:①住宅(高齢者向け住宅、ケアセンター、住環境リフォーム)、②食品(栄養補助食品や噛みやすい食品、生活習慣病対応食など)、③健康(医療・介護サービスや関連機器、終末期ケアなど)、④娯楽(交流活動や移動支援、知識共有の場など)。

また、高齢者自身が地域製品の開発や介護職、趣味を活かしたオンライン活動、インフルエンサーなどとして活躍できる機会も指摘されている。


阪和興業は7月9日、同社のタイ現地法人阪和タイランドが、地場の廃タイヤ熱分解リサイクル事業者パイロエナジーに一部出資したと発表した。

<左> パイロエナジー OURAPEEPON 代表、<右> 阪和タイランド 上野社長

世界的に使用済みタイヤや規格外品が大量に発生する中、不法投棄や埋め立てに起因する環境問題が深刻化している。阪和興業グループでは既に、廃タイヤを破砕して製造するタイヤチップを低環境負荷エネルギーとして日本の産業向けに供給しているが、海外では熱分解を活用したリサイクル方法が主流である。熱分解により生成される分解油やカーボン残さは燃料用途だけでなく、タイヤの原料としても再利用可能だという。

今回の出資を通じて同社は、熱分解関連製品の付加価値向上とともに、タイヤメーカーとの連携によるグローバルサプライチェーンの構築を目指す。また将来的には、分解油やカーボン残さを合成ゴムやカーボンブラックの原料として化学・ゴム・タイヤメーカーなどに供給することで、タイヤ産業における循環型経済の実現に貢献したい考えだ。

阪和興業グループが目指すタイヤのサーキュラーエコノミー 出所:阪和タイランド

7月4日付のタイ紙ターンセタキによると、タイ味の素はキングモンクット工科大学トンブリ校(KMUTT)と連携し、タイで食・バイオ・ヘルスケア分野のスタートアップを発掘するオープンイノベーションを開催した。

同社はアミノ酸研究を基盤とした「アミノサイエンス」を活用し、健康、栄養、持続可能性における成長を推進している。本イベントでは、高齢化や栄養不足、環境負荷といった課題に対し、アジアや中東を含む6カ国から選ばれた10社のスタートアップが、食品イノベーションと健康におけるバイオテックのテーマで技術発表を行った。

参加企業には、イスラエルから細胞培養肉のアレフ・ファームズ、日本から藻類由来素材のアルガルバイオ、タイからは腸内フローラのスタートアップModgutなどが含まれる。

また、タイ投資委員会(BOI)やタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)、ジェトロ・バンコク事務所などの支援を受け、研究者や行政との連携も推進されている。タイ味の素はこの取り組みを「タイ発で世界へ展開するソリューション創出の第一歩」と位置づけ、ASEAN地域での活用を起点にグローバル市場への展開も視野に入れている。

THAIBIZ編集部

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