ユアサ商事とSJC、「ビジネス×社会課題解決」セミナーを開催

ユアサ商事とSJC、「ビジネス×社会課題解決」セミナーを開催

公開日 2025.02.13

ユアサ商事株式会社(以下、「ユアサ商事」)は2月5~7日の三日間にわたり、バンコクのBITECにて、工作機や産業機械、省エネ環境機器、建設機械などのメーカーが出展する展示会「ユアサグランドフェア 2025」を開催した。同イベントは「日本の文化とタイの文化を“つなぐ”」をテーマとし、タイの社会課題解決につながるソリューションを集結させた特設テーマゾーンも設けていた。

展示会初日の2月5日にはBITEC内のセミナールームにて、ユアサ商事とサシン日本センター(SJC)がビジネスセミナー「ビジネスでつなぐ日泰の架け橋:社会課題解決に向けて」を開催。産業界のリーダーたちが登壇し、企業に求められる社会的価値や、ビジネスによるタイの社会課題解決方法などについて議論した。

「Thailand Grand Fair 2025」特設テーマゾーン
「Thailand Grand Fair 2025」特設テーマゾーン

社会的価値と経済的価値は二項対立ではない

ユアサ商事の田村博之社長はオープニングスピーチにて、「当社は1666年に京都で炭屋として創業し、来年で360周年を迎える。現在はものづくり、すまいづくり、まちづくり、環境づくりの4分野において事業を展開している」と会社概要を紹介。「1974年に設立したユアサ商事タイは、タイの食品を日本に輸出する事業から始まった。昨年完成した本社の新社屋には、省エネ設備など、タイにも提案したい最新の日本製品を数多く使用している」とアピールし、展示会のテーマ「日本の文化とタイの文化を“つなぐ”」の主旨について説明した。

続く基調講演では、サシン日本センター所長の藤岡資正教授が登壇し、「ビジネスや経済においては、未来を予測しようとするのではなく、不変的なフィロソフィー(価値の基軸)を持つことが大切だ」と訴求した。日本企業の平均寿命は23.1才(2023年)と若く、100年以上継続する会社は全体の0.3%と言われる中、長生きの秘訣は「二項対立的思考を超える経営思考」だという。

具体的には「企業に求められる『社会的価値』と『経済的価値』を二項対立として捉えるのではなく、両方が重なる部分の価値をステークホルダーと共に創出していくことが重要だ」と説明。タイでのビジネスにおいても、「まずローカルのニーズや課題を把握した上でソリューションを提供することが重要」とした上で、急速な都市化や廃棄物問題、貧富の格差、交通渋滞などといったタイの社会課題を挙げて「イノベーションとは、既に持っている技術やネットワークを組み合わせることで社会に新しい価値を創出することだ」と強調した。

サシン日本センター所長藤岡資正教授による基調講演の様子(写真提供:サシン日本センター)
サシン日本センター所長藤岡資正教授による基調講演の様子(写真提供:サシン日本センター)

社会的事業のために使える公的サポートも

プレゼンテーションのセッションでは、まずチュラロンコンビジネススクールのヌッタポン准教授が登壇し、「Creating Shared Value(CSV:共通価値の創造)」について解説。「全ステークホルダーを巻き込んで共に考えることが重要だ」と訴求した。CSVの成功事例として麻薬農家からコーヒー豆農家へと変換を遂げた「Phahee coffee village」等のストーリーを紹介し、サプライチェーンの透明性を高めることが各ステークホルダーの納得感に繋がると説明した。

次にNIA(国家イノベーション機関)のピッチャリー専門官が「NIAは、課題の特定から補助金の提供、そしてスケールアップまで、段階的に社会的イノベーション事業をサポートしている」と訴求し、実際にサポートした事業の事例を複数紹介した。

続いて登壇したJICAタイ事務所の木下真人氏は、社会課題解決に取り組む日本企業をサポートする「中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)」の概要や同事業を活用した日本企業の取り組み事例を紹介し、「皆さんが既にお持ちの製品やサービスに少し工夫を施すだけで、タイの社会課題解決に役立てられる可能性がある」と呼びかけた。

社会課題解決に取り組むユアサ商事グループ

最後のプレゼンテーションではユアサ商事の高橋央氏が登壇し、ユアサ商事グループの社会課題解決に向けた取り組み事例を紹介した。同グループはCO2排出量削減の取り組みとして、太陽光発電をはじめとする省エネ設備の導入に注力しており、これまでノウハウを蓄積してきたという。高橋氏によれば、タイでは、チョンブリ―やサムットプラカーンにて太陽光発電設備の導入実績がある。

さらに同社は、労働力不足という課題に対して、AIを活用した省人化ソリューションの提供も行っている。プレゼンテーションでは、同社と業務提携を締結したconnectome.design株式会社の佐藤代表取締役社長がAI外観検査装置「F[ai]ND OUT(ファインドアウト)」などを紹介。「既存のラインに組み合わせるだけで、工場における品質チェックをAIで高度化できる」と、同製品の強みをアピールした。

AI外観検査装置「F[ai]ND OUT(ファインドアウト)」
AI外観検査装置「F[ai]ND OUT(ファインドアウト)」

高橋氏は「ユアサ商事グループは、その他にも冠水検知システムの開発や止水版の販売等を通じて水害対策の取り組みも行っている。タイのニーズとわれわれのネットワークを融合させて、今後も社会課題の解決に貢献していきたい」と意気込みを語り、プレゼンテーションを締め括った。

なお、翌日の2月6日には同じ会場で、ユアサ商事の取引先である中小企業経営者に向けたセミナーが開催され、日本から約200人の参加があったという。

THAIBIZ編集部

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